表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
133/156

第百三十二話 『二人の遊び』

 「――――まじか…………」


 信じられない目の前の光景に、リュノンがポツリと呟いた。

 

 女性陣三人も唖然としている。

 今から行こうと思っていた道が塞がれただけならまだいい。

 問題は、塞いでいる魔物の数。


 さっきも見た。

 この人数。


 ループしているのかと思う。


 だが、自身の体力は戻っていない。


 敵だけが、返って来た。


 「……そんな……まだ、こんなにいたなんて……」


 ソルが怯える。

 ティローナとヒナノも歯を食いしばり、見えない扉に目を向けている。


 「…………ねえ!! さっき全戦力って言ってたよ!! 本当は何人いるの!!」


 上を見上げたティローナが元凶に呼びかける。

 確かにジャーザンスは、「全戦力が迎え撃つ」と言っていた。


 だが、


 「ちょっとティローナさん!! 別にそれは「そこだけ」の話じゃないよ!! 全戦力で迎え撃つというのはウソじゃない。元々さっきの奴らで止められるとは思ってないyo。当然、第二陣を用意している!! 待機組を含めて「全戦力」ね!!」


 「………………」


 「おっとっととっと!! 安心しておくんなさい。「こいつらで最後」だ。こいつらを倒せれば、僕の所まで上がって来れる。でもでもでもでも!!! い・ま・の君らで倒せるかなあ? 第二陣といっても、さっきの奴らと変わらない強さだよん!!」


 追加された二十体の魔物。

 全員、オーブ取り込み済み。


 対する聖鳳軍。

 言うまでもなく、戦力が大幅に減少している。


 ――――絶望的な数の差がそこにはある。


 「……ねえヒナノ。――――私ができるだけやってみる。どうせ、進むしかないんだから」


 ティローナが一歩前に出た。

 顔は震えている。

 心臓も鳴っている。


 出迎える集団相手にどこまでやれるか。


 「――――ティローナ、待って!!」


 だが、ティローナの歩みをヒナノが呼び止めた。


 「私もやるよ。あなた一人で行かせるなんて、それを見ているだけなんて、私にできるわけないでしょ」


 「……でも……ヒナノ……」


 ティローナは感じ取っていた。

 ヒナノの体力がほとんど尽き欠けていることを。


 魔法が使えないというこの場所で、あんなにバンバン魔法を繰り出していたヒナノ。

 ノーリスクなわけがない。

 これ以上はおそらく危険だ。


 「安心して。無理はしないわ。ただ、ティローナ一人で戦うよりも、私が一緒の方が絶対いい。――――あれをやるわよ。ティローナ」


 「……!! うん……確かにあれなら……!! やろう……!! よろしくねヒナノ」


 「ええ」


 ティローナとヒナノ。

 二人が一緒に一歩前に出た。


 「――――じゃあ行くわよ、ティローナ!!」


 「うん……!! いつでもいいよ!!」


 掛け声とともに、一人ティローナが走り出した。

 ヒナノは後方でスカスカの魔力を練っている。


 「(……くっ……!! ……結構ヤバいわね。もうほとんど……)」


 マナがない。

 戦えるほどの力はもうほぼない。


 ――――でも、


 ここで発動しなければならない。

 二人の個性を活かした連携を久しぶりに成功するために。


 「――――はあっ……!!」


 ヒナノが叫ぶ。

 何とか魔法を使用することができた。


 繰り出した魔法は、『具現魔法』。


 ティローナと二十体の魔物を囲うように、巨大な球体が出現した。

 円の中に、ティローナたちが閉じ込められているようだ。


 「――――それっ……!!」


 さらに、追加オプション発動。

 円の内側にいくつかの取っ手、壁側にはトランポリンのような箇所がついた。


 「……よし……なんとか成功ね……頼んだわよ。ティローナ」


 「うん……!! 任せてヒナノ!!!」


 ティローナが大ジャンプ。

 動きが読めずに固まっている魔物たちに突撃する。


 そして、攻撃をしてすぐさま近くの取っ手やバウンドエリアに移動。

 さらに、魔物に攻撃。

 エリアの中を縦横無尽に高速で動き回っていく。


 「――――す、すごい……!! ティローナさん、奴らに捕まらずに……!!」


 円の外側。

 隔離されている場所で観戦するリュノンたち。


 視線の先では、ティローナがまるで動物のように飛び回っている。


 「昔はしょっちゅうやってたの。久しぶりなんだけど、さすがはティローナね。前より動きが早くなってる」


 二人の技。

 ヒナノが敵を閉じ込め、せまくなったフィールドでティローナが暴れ回る。


 本来なら、さらに円の中でヒナノの攻撃魔法を反射させていくが、今はそんな元気がない。


 とはいえ、この戦法。

 実に効いている。


 このヒナノが作る空間。

 昔からずっとティローナとヒナノが「遊びながら」訓練していた場所だ。


 ティローナはこの中でボールのように飛び回って来た。


 ヒナノもその中に弱めの魔法をバウンドさせて、ゲームのように遊んでいた。

 時には、数十発の魔法を中で弾ませ、それをティローナは避けまくっていた。


 どこを踏めばどこに飛び移れるか、どこに行けばどこに反射するか、ティローナは熟知している。


 ヒナノの自由な発想、ティローナの人間離れした身体能力、そして『二人の遊び』が生み出した戦術。


 今、彼女の動きを捕らえることには、有象無象の魔物たちでは時間が足りない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ