第百三十一話 『手札の量』
ミネカ救出隊とジャーザンス一派の戦い。
ここまで十五体の魔物が聖鳳軍に敗れ、残る魔物は五体。
ティローナが三体、ヒナノが二体を相手取っている。
フェルフラムはダウン。
リュノン&ソルも足手まとい状態は変わらない。
「――――はあっ……!!!」
ティローナがさらに一体を仕留めた。
だが、ティローナに余裕はない。
少なくない攻撃を貰いながら、ようやく一匹という感じだ。
「(……後二人……でも、早めに終わらせないと……)」
ここを突破しても戦いが終わるわけではない。
上にいるであろう諸悪の根源を倒し、ミネカを助けなければ。
それに、ヒナノも気がかりだ。
「…………こいつら………」
そのヒナノがポツリ。
敵の作戦変更にイライラを募らせていた。
ヒナノは現在、残り少ない保管していたマナを節約しながら戦っている。
そして、敵を一撃で倒せる魔法を一体につき一発だけ撃っている。
だが、敵はそれに気づいたようで。
『距離を詰めてこなくなった』
常に迎撃態勢。
不用意に近づいては来ず、ヒナノが動くのを冷静に待っている。
敵の狙いは、ヒナノのマナ切れだ。
「――――フハハハハハ!! いいぞお!! その調子だ!!」
ジャーザンスの独り言。
相も変わらず上階から戦況を見つめるジャーザンスだが、ヒナノの顔色が変わっていっていることを見逃さない。
……おそらく、ヒナノはそろそろ限界だ。
……そうなれば、奴らのまともな戦力は、ティローナ・カルダートのみ。
そのティローナも、下で苦戦を強いられている。
――――時間の問題だな。
ジャーザンスは確信した。
「――――やあっ!!」
隙を突いたティローナの一撃。
さらに一体撃破。
残りは三体。
だが、
ティローナのライフポイントもジリジリと減り続けている。
上の魔物へ向けて、できるだけ残しておかなければならないのに。
「……いい加減、どいて!!」
気合いを入れ直したティローナが突撃。
それを見ていたヒナノも、少し『無理をする覚悟』を決めた。
「……しょうがないわ……」
近づいてこないのなら仕方がない。
あまり魔法を使いたくはないが、一気に仕留めるしかない。
――――ドンッ。
一瞬で間合いを詰めたヒナノが、敵に攻撃魔法をぶつけた。
あまりの速さに反応が遅れた魔物。
迎撃態勢だったにもかかわらず、迎え撃つことができない。
「ぎゃあ!!」という断末魔と共に、この世から髪の毛一つ残さず消え去った。
「……な……!! 何が起き……」
相方が瞬殺されたことに驚いている間に、もう一体の方も地獄へ。
ようやくこの二体も倒せた。
「……!! な……なんだあれ!! ヒナノさんの動きが全く見えなかった……!!」
「……あれは、姉さまの『肉体強化魔法』です。おそらく、姉さまは足に強化魔法を掛けて、一気に間合いを詰めたのだと思います……」
実況のリュノンと解説のソル。
今は傍観しかしかできない、二人が先の出来事を振り返る。
ソルの解説はもちろん正解。
数秒だけスピードを超強化したヒナノが瞬く間に敵を葬り去ったのだ。
しかし、ヒナノはこれを使いたくなかった。
肉体への負荷はもちろんだが、もう体内のマナがほとんどない。
こいつらがゴールではないのだ。
この枯渇した状態で、果たしてどこまで役に立てるか。
ジャーザンスの狙い通りに戦況は進んでいく。
数でヒナノを消耗させていく作戦は成功だ。
「……ヒナノがやったみたいだね………私も……!!」
敵のフルスイングの隙を突いたティローナの拳が顎に炸裂。
クリティカルヒットを貰った最後の魔物は、ついに地に崩れ落ちた。
ようやく、扉を守っていた二十の魔物が全滅した。
だが、
思ったより削られている。
五人中一人が倒れ、三人は武器を取り上げられている。
最高戦力のヒナノも戦うことすら難しい状態だ。
唯一まともに戦える状況にあるティローナも、万全とは言えない。
このフィールドでは、全力で戦えないことも痛い。
「ヒナノ!! どうする……? ここまで来たらもう行くしかないけど……」
「そうね……でも…………」
駆け寄って来たティローナの前で、ヒナノは考えに浸る。
ティローナが強いことはよく知っている。
上にいる魔物よりもティローナの方が上だと考えている。
だが、万が一ということもある。
しかしそう。
ティローナの言う通り、引くことは難しい。
「……リュノンは、フェルフラムの元にいながら、出口があるか探して欲しい。私とソルとティローナはこのまま上に進むわ」
「えっ……!? 俺も一緒に行きますよ!!」
「……フェルフラムを一人にするわけにはいかないわ。ソルじゃフェルフラムを運べない。でも、あなたに逃げろと言っているわけではないわ。もし出口があったら、救援を呼んできて欲しい。私たちの最優先は『ミネカ』よ」
「……分かりました。気をつけてください」
「……ありがとう、リュノン」
自分たちにもしものことがあったことを考え、リュノンに援軍要請をお願いするヒナノ。
そして、親友と妹と共に扉へと足を進めていった。
――――だが、
「えっ…………」
向こう側から扉が開き、先と変わらない数の魔物が登場した。




