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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
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第百三十一話 『手札の量』

 ミネカ救出隊とジャーザンス一派の戦い。


 ここまで十五体の魔物が聖鳳軍に敗れ、残る魔物は五体。

 ティローナが三体、ヒナノが二体を相手取っている。


 フェルフラムはダウン。

 リュノン&ソルも足手まとい状態は変わらない。


 「――――はあっ……!!!」


 ティローナがさらに一体を仕留めた。

 

 だが、ティローナに余裕はない。

 少なくない攻撃を貰いながら、ようやく一匹という感じだ。


 「(……後二人……でも、早めに終わらせないと……)」


 ここを突破しても戦いが終わるわけではない。

 上にいるであろう諸悪の根源を倒し、ミネカを助けなければ。


 それに、ヒナノも気がかりだ。


 「…………こいつら………」


 そのヒナノがポツリ。


 敵の作戦変更にイライラを募らせていた。


 ヒナノは現在、残り少ない保管していたマナを節約しながら戦っている。

 そして、敵を一撃で倒せる魔法を一体につき一発だけ撃っている。


 だが、敵はそれに気づいたようで。


 『距離を詰めてこなくなった』


 常に迎撃態勢。


 不用意に近づいては来ず、ヒナノが動くのを冷静に待っている。


 敵の狙いは、ヒナノのマナ切れだ。


 「――――フハハハハハ!! いいぞお!! その調子だ!!」


 ジャーザンスの独り言。

 相も変わらず上階から戦況を見つめるジャーザンスだが、ヒナノの顔色が変わっていっていることを見逃さない。


 ……おそらく、ヒナノはそろそろ限界だ。

 ……そうなれば、奴らのまともな戦力は、ティローナ・カルダートのみ。


 そのティローナも、下で苦戦を強いられている。


 ――――時間の問題だな。


 ジャーザンスは確信した。


 「――――やあっ!!」


 隙を突いたティローナの一撃。

 さらに一体撃破。


 残りは三体。


 だが、


 ティローナのライフポイントもジリジリと減り続けている。

 上の魔物へ向けて、できるだけ残しておかなければならないのに。


 「……いい加減、どいて!!」


 気合いを入れ直したティローナが突撃。


 それを見ていたヒナノも、少し『無理をする覚悟』を決めた。


 「……しょうがないわ……」


 近づいてこないのなら仕方がない。


 あまり魔法を使いたくはないが、一気に仕留めるしかない。


 ――――ドンッ。


 一瞬で間合いを詰めたヒナノが、敵に攻撃魔法をぶつけた。


 あまりの速さに反応が遅れた魔物。

 迎撃態勢だったにもかかわらず、迎え撃つことができない。


 「ぎゃあ!!」という断末魔と共に、この世から髪の毛一つ残さず消え去った。


 「……な……!! 何が起き……」


 相方が瞬殺されたことに驚いている間に、もう一体の方も地獄へ。

 ようやくこの二体も倒せた。


 「……!! な……なんだあれ!! ヒナノさんの動きが全く見えなかった……!!」


 「……あれは、姉さまの『肉体強化魔法』です。おそらく、姉さまは足に強化魔法を掛けて、一気に間合いを詰めたのだと思います……」


 実況のリュノンと解説のソル。

 今は傍観しかしかできない、二人が先の出来事を振り返る。


 ソルの解説はもちろん正解。


 数秒だけスピードを超強化したヒナノが瞬く間に敵を葬り去ったのだ。


 しかし、ヒナノはこれを使いたくなかった。


 肉体への負荷はもちろんだが、もう体内のマナがほとんどない。

 こいつらがゴールではないのだ。


 この枯渇した状態で、果たしてどこまで役に立てるか。


 ジャーザンスの狙い通りに戦況は進んでいく。

 数でヒナノを消耗させていく作戦は成功だ。


 「……ヒナノがやったみたいだね………私も……!!」


 敵のフルスイングの隙を突いたティローナの拳が顎に炸裂。

 クリティカルヒットを貰った最後の魔物は、ついに地に崩れ落ちた。


 ようやく、扉を守っていた二十の魔物が全滅した。

 だが、


 思ったより削られている。

 五人中一人が倒れ、三人は武器を取り上げられている。

 

 最高戦力のヒナノも戦うことすら難しい状態だ。

 唯一まともに戦える状況にあるティローナも、万全とは言えない。

 このフィールドでは、全力で戦えないことも痛い。


 「ヒナノ!! どうする……? ここまで来たらもう行くしかないけど……」


 「そうね……でも…………」


 駆け寄って来たティローナの前で、ヒナノは考えに浸る。

 

 ティローナが強いことはよく知っている。

 上にいる魔物よりもティローナの方が上だと考えている。

 だが、万が一ということもある。


 しかしそう。

 ティローナの言う通り、引くことは難しい。

 

 「……リュノンは、フェルフラムの元にいながら、出口があるか探して欲しい。私とソルとティローナはこのまま上に進むわ」


 「えっ……!? 俺も一緒に行きますよ!!」


 「……フェルフラムを一人にするわけにはいかないわ。ソルじゃフェルフラムを運べない。でも、あなたに逃げろと言っているわけではないわ。もし出口があったら、救援を呼んできて欲しい。私たちの最優先は『ミネカ』よ」


 「……分かりました。気をつけてください」


 「……ありがとう、リュノン」


 自分たちにもしものことがあったことを考え、リュノンに援軍要請をお願いするヒナノ。

 そして、親友と妹と共に扉へと足を進めていった。


 ――――だが、


 「えっ…………」


 向こう側から扉が開き、先と変わらない数の魔物が登場した。

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