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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
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第百三十話 『一発のために』

 フェルフラム・ボンバ。三十一歳。

 聖鳳軍で二軍の地位についている、白髪をたっぷりと生やした大男である。

 

 入隊試験に合格したのは二十四の時。

 四回目の挑戦だった。


 彼には、突出した才能は無かった。


 ヒナノの魔法やティローナの体術のような強力な武器はない。

 マーノのような頭脳もない。

 ガロトのような器用さもない。


 ただ、彼はたった一つの馬鹿げた武器のみで戦ってきた。


 それは――――『根性』。


 生まれ持って来た唯一の取柄は、身体の頑丈さ。

 どれだけ殴られても簡単には沈まない。

 どれだけ攻撃を受けても、ひたすらに食らいついていく。


 ――――彼はそうやってガムシャラに戦い続けた。

 

 そんなある日。


 彼は、自分の中に眠っていた『ある力』について気づくこととなる。


 この時もフェルフラムは、敵との戦いを繰り広げていた。

 その戦いの最中、追い詰められた彼は、握りしめた拳の異変に感づく。


 その拳を繰り出し、その戦いに勝利した。

 

 勝利の報酬。

 それは、進化した彼の力。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「――――ぐわああああ!!」


 再び、痛みの叫びが響き渡る。

 四体の魔物と対峙するフェルフラムだが、リンチ状態から抜け出せない。


 だが、彼はまだ倒れない。


 「こいつ……!! 弱いくせにタフさだけはありやがる……!! よし、お前ら!! 一斉に叩きこむぞ!! さすがのこいつも耐えられまい!!」


 魔物たちは力を溜め、この一撃×四発で確実に仕留めようと動き出す。

 負傷を抱えたフェルフラムに奴らから逃げる時間はない。


 「終わりだ!!!」


 「ぐわあああああ!!!」


 改造&オーブでパワーアップした魔物たちの一斉攻撃が襲い掛かる。

 フェルフラムは、今日一番の痛みの声を挙げながら前向きに倒れた。


 「――――やばいぞ……!! フェルフラムのおっさんが……!!」


 「助けにいきましょう……!! リュノンさん……!!」


 魔物と対峙することができていないリュノンとソル。

 倒れるフェルフラムの姿を見て動き出そうとする。


 だが、


 「待って!! ソル、リュノン!!」


 二体の魔物と戦闘中のヒナノが呼び止める。


 「今のあなたたちが戦うのは危険だわ!!」


 「……でも……!! 俺たちだって戦わないと……!!」


 「うん、分かってる。でも、もう少し待って……!! フェルフラムはまだ……負けてないから……!!」


 ヒナノの言葉を受け、動きを止めるリュノンとソル。

 二人が駆け付けても、時間を稼ぐのに手一杯になってしまうだろう。


 だったら、フェルフラムのあれが出るまで二人は温存しておいた方がいい。

 ヒナノはそう判断した。


 「……貴様……!! まだ……!!」


 三度立ち上がった男に恐れを抱く魔物たち。

 既にダメージのキャパシティを超えているはずだ。 


 だがまだ、この男の顔は死んでいない。


 「…………溜まったな……」


 一言の呟きとともに、フェルフラムが動き出す。

 右手を握りしめ、拳を放つ構えを取った。


 魔物たちがオーブを取り込んでから、フェルフラムは一撃も返せずにいる。

 スピードが上がってしまい、動きを捕らえることができない。

 それどころか、ただ殴られるだけのサンドバッグになっていた。


 しかし、

 それはここまでの話。

 今、彼の手には、逆転の一手が生まれていた。


 「返してやるぞ……!! 俺の痛みを!!!」


 フェルフラムは魔物たちが動きだす前に拳を放つ。

 ただし、直接は当たらない。

 瀕死のフェルフラムの動きでは、強化された魔物には触れられない。


 だが、その力は『風圧だけ』で敵の胸に牙を剥いた。


 「……な……!! こ……こんな……馬鹿な………ことが………」


 その風圧を受けた四体の魔物。

 奴らは一人残らず、その肉体を溶かしていった。


 「………………よし」


 息を切らしながら、倒すべき敵の最期を確認したフェルフラム。

 笑顔を見せることはないが、その目には光が宿っている。


 「……やったわね……!! フェルフラム……!!」


 その様子を遠くから見ていたヒナノが感想を零す。

 無事、とはいかないがさらに四体、フェルフラムがやってくれた。


 「す、すげえ……!! フェルフラムさん、まだあんな力を残してたのか!!」


 ソルとともに観戦していたリュノンが声を挙げる。

 「このままだとまずい」と思っていた男の逆転勝利には驚きだ。


 だが、リュノンが言ったようにフェルフラムは力を残していたわけではない。


 彼が持つ力によって、今、生まれたものだ。

 

 その力の源は蓄積された痛みである。


 彼は自身が受けたダメージを拳一点に集中させることができる。

 ここまで魔物たちに散々ボコボコにされていたため、かなりエネルギーが溜まっていたようだ。


 しかし、これは一日に一発までしか放てない。

 それに加えて、ダメージを受ける前提の極めてリスキーな力だ。


 やはり彼には、突出した才能はない。

 あるのは、ひたすら耐えて一撃返す力のみ。


 だが、それがフェルフラムの強さだ。


 「…………少し…………休憩だ…………」


 満身創痍になりながらも、四体の魔物を倒したフェルフラム。

 最低限の仕事はやり終えたと、その場に横になった。


 今、この場にいる魔物は、残り五人。

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