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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第五章
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第百二十三話 『動き出す巨悪』

 ――――一方、魔凰軍の総本部では。

 届けられたある一つの情報により、激しい混乱が訪れていた。


 「……なんだと……!! 『コレール』が死んだ……!!?」


 魔王の間で動揺するラスドラーゴ。

 らしくないほどの慌てぶりを伝令係に見せている。


 「……はい……コレール様だけでなく、アボラ様ものようで……」


 「むう……何という事だ……」


 ラスドラーゴはついこの間から五本指が欠けることを危惧していた。

 「いのちを大事に」と、各地に伝令をしたばかりだ。

 まさかこんなに早く現実になってしまうとは。


 しかも、それが最も可能性の薄いと思っていた人物なんて。


 コレール、いや、スリーラ。

 彼女は軍の中でも、最も死から遠い女だった。


 そもそも戦うことがほとんどない。

 それに、ダメージを受けない力だって持っている。


 なんで死んだんだ。

 というか、どうやって死んだんだ。


 分からないことが多すぎる。

 奴をどうやって倒したんだ。

 そもそも、本当に『倒された』のか?

 あいつが狙われる理由がほとんどない。 


 『自殺』


 その可能性が最も高い。

 ラスドラーゴはそう思った。


 それより、スリーラが完全に空けた席をどうするか。

 今まで、その五人の席が入れ替わったことは一度もない。

 抜けたら補充していくスタイルなのかも特に決めていない。


 「……分かった。もうお前は行っていいぞ」


 「あ、は……はい……!!」


 伝令掛りを部屋から追い出し、一人で頭を抱えるラスドラーゴ。

 そして、アボラも一緒ということも思い出す。


 「ちょっと待てよ……自殺じゃないか……アボラもなのだから…………まさか心中……? いや、それはないな。……ということはやはり、コレールは倒されたのか……」


 しばらく頭を悩ませるラスドラーゴ。

 おそらく、聖鳳軍の誰かに目を着けられ、退治された可能性が高い。


 ……これ以上考えてもしょうがない。

 とにかく、コレールは死んだのだ。


 また他の連中にも共有させよう。


 「――――情けないなラスドラーゴ」


 そんな彼を『奥の隠し部屋』から呼ぶ声が聞こえた。

 ラスドラーゴはそちらに視線を送ると、声がした方に歩いていく。


 「部下が一人死んだくらいで、そんな動揺するとは。やはりお前には、軍のトップは荷が重かったか。一時的とはいえ」


 ラスドラーゴは扉を開け、その声の主の元へ。


 そこは、禍々しい圧が充満する地獄のような部屋だ。

 人間が入りでもしたら、瞬く間に命を落とす危険があるほどの。


 その部屋に立っている筋骨隆々な男の魔物。

 彼がラスドラーゴに声を掛けたようだ。


 「……ダクライズ。うるさいぞ」


 ラスドラーゴはその魔物の前に立ち、ちょっと反撃。

 ダクライズと呼ばれた魔物は不敵に笑っている。

 全身にごつごつした突起が付いており、滅茶苦茶不便そうな身体をしている。

 

 ――――しかし、こいつ、只者ではない。 


 「まあでも安心しろよ。俺たちの力が完全に戻れば、もうお前の部下が死ぬこともなくなる。それまで、精々頑張ってくれよ、指令殿」


 そう口にするダクライズ。

 彼の後ろには、さらに二体の魔物が止まっている。

 

 「……私たちが動けるようになるまでに、部下全滅しちゃうんじゃないの? あんた、誰かの上に立つとか向いてないものね。あんたの指示で動く魔物が気の毒だわあ」


 「お前もうるさいぞマビュート!!」


 その一体、ロングヘアーを携えた妖艶な美女の魔物が口を開いた。

 セクシーボイスで繰り出される煽り。

 ここが魔凰軍じゃなければ需要がありそうだ。 


 もう一体、細身の怪獣のような見た目をした男の魔物は、無言でラスドラーゴの方を見ている。


 そして、そのさらに奥には、巨大な一体の魔物が眠りについていた。

 前にいる三体とも他の魔物とは別格だが、こいつは、さらに一線を画す存在だ。


 「――――ラスドラーゴ様!! どこにおられるのですか!!?」


 部屋の外から伝令係の声が聞こえてきた。

 ラスドラーゴはダクライズたちの顔を一瞬見ると、この四体の魔物が封印を解こうとしている部屋を後にした。


 「――――どうしたんだ? 何があった!?」


 「……え……? ラスドラーゴ様、今どこから出てきたのですか……!?」


 「そんなことはどうでもいいだろう。私に何か話があるのだろ? 早く言え」


 「ああ、はい。そうですね」


 ちょっとやっちまったと思いながら、ラスドラーゴは無理やりごまかして話を進める。

 この部屋の存在、及び旧時代の魔物が復活しつつあること今の軍で知っているのは、ラスドラーゴ、ファンドル、マイヤール、ロジェの四人だけだ。


 「監視させていたあの男ですが……つい先ほど動き出しました……!! 目的地は、『聖鳳軍本部』だと思われます……!!」


 「なんだと……!! …………報告を感謝する。お前は持ち場へ戻れ。また、新たな動きがあれば、すぐに教えるのだ」


 「はい……!!」


 再び一人になったラスドラーゴ。

 五年前のあの事件のことを思い出しながら、深刻そうな顔を見せている。


 「……聖鳳軍本部だと。いったい何を考えているのだ……」


 「『ジャーザンス』は……」


 十年前、スリーラの人生を狂わせた狂気の男、ジャーザンス。

 とうとう彼が、この時代に置いても動き始めた。

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