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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第五章
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第百二十四話 『反応様々』

 ――――そして、魔凰軍の中央本部のある一室では、

 五将悪の一人であり、魔王の子でもある男が椅子に座っていた。


 この男の名は、『ロジェ』。


 「……やっぱり……まだ慣れないなあ……」


 ロジェがポツリと呟いた。

 いつもであれば、隣の部屋にはデゼスポという男がいた。


 暇なときは向こうへ行って、デゼスポと話すことが多かった。

 今や向こうの部屋は物置となっている。

 

 そこには、誰もいない。


 結局ロジェは、レウラと同じように新しい副官を取らなかった。

 いや、『今は』といった方が正しい。

 しばらくは副官は付けないつもりでいるが、この状況に慣れたらまた付けようとは思っている。


 でも、自分の特殊な出自を考えると、副官選びは苦労しそうだ。

 デゼスポは長い付き合いということもあり、割りとフランクに接してくれていた。

 堅苦しいのはごめんだ。

 自然体でお話してくれるような奴がいい。


 ――――そんな奴、いなくね?


 ロジェは、また一つ大きなため息を吐いた。


 「……失礼します、若……」


 「うわあ!!」


 突如ヌルっと部屋に侵入してきた男に、らしくない素っ頓狂な声を挙げるロジェ。

 

 この男は、『ファンドル』

 軍復興メンバーの一人で、ワープ能力を持っている運び屋だ。


 たった今もその能力でいきなり現れた。


 「ファンドル!! ノックくらいしてよ!!」


 「……ああ、すいません」


 ロジェはいつものようにファンドルにそう言い、ファンドルも普段通りに返す。

 

 しかし、ロジェは先日のある一件から、それを表に出すことはしないが、ファンドルにやや不信感を抱いていた。


 そのきっかけとなったのは、今から数日前のこと。

 ラフェルやソルに追い詰められていたところを、ファンドルに救出されたロジェは、マイヤールに治療された後、奥の隠し扉へと向かった。


 そこでロジェは、驚くべき事実を耳にした。


 そもそもロジェとデゼスポが翔英たちと戦うことになった理由。

 それは、鍛錬場の鍵が原因だった。


 「鍵を奪え」という命令を受けたロジェは、翔英たちの元へ向かうことになったわけだが、この『命令』についてロジェは、誤った認識をしていたのだ。

 

 ロジェは当初、父親の命令という話で任務にやってきた。

 ロジェといえども、父の命令には逆らえないからだ。


 ――――しかし、実はこの命令を出したのは父親ではなかった。

 

 『ファンドル』だったのだ。


 ファンドル曰く、「あの鍵の施設を我々が使えるようにした方がいい」と思ったから、嘘の命令を出したらしい。

 「私の名前ではなく、魔王様の名前の方が確実だった」

 「他の五将悪は当てにならないし、若ならば確実に達成できると思ったから」という言い分だ。


 ロジェはファンドルの行動にひどく疑問を抱き、彼を問いただした。

 当然だ。

 あの戦いで、デゼスポやジックルといった仲間たちを失う結果になってしまったのだから。


 ファンドルはロジェに深く頭を下げた。


 『本当に申し訳ありませんでした』

 と。


 ファンドルが誠心誠意謝るので、ロジェは言葉では彼を許した。


 しかし、「何故あんな命令を嘘をついてまで僕に出したのか」という疑問が解消されることはなかった。


 「――――で、何の用?」


 「ああ、はい。若にお伝えしたいことがありまして。コレールが死んだようです」


 「……え……!? ……スリーラが……!!?」


 ロジェに衝撃が駆け巡る。


 それもそのはず、スリーラにとってロジェは、唯一と言っていい魔物の友人だったから。

 互いの思想を理解することができる、魔物の中でもイレギュラーな存在だったから。

 コレール時代から今に至るまで、ロジェは彼女と付き合いがあったのだ。


 「……はい。ラスドラーゴさんからの伝言なので、間違いないかと。死因までは分かっていません。ただ、コレールとアボラの邪気が完全に消えたと」


 「……そうか。分かった。――――ありがとうファンドル。すまないけど、もう行ってくれないか? 少し、一人になりたいんだ」


 「……わかりました」


 能力で帰宅するファンドル。

 いや、帰宅ではなく他の支部へ伝言に向かって行く。


 そんな彼の後ろ姿を見送った後、ロジェは上を見ながら考え出す。


 「平和だけを目指していた心優しいスリーラが、なぜ死ななくてはならないのか」と。

 

 やはり魔物は、世界から疎まれる存在なのだろうか。 

 人間のように生きていくことは、叶わないのだろうか。


 スリーラとはついこの間直接会って話したばかりだ。

 まさか、突然会えなくなってしまうなんて。

 

 友人がまた一人逝ってしまったことを嘆きながら、ロジェはしばらくそのまま放心していた。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 ――――一方、魔凰軍、北拠点では、


 「――――ドラウク様!!」


 「……なんだジェシス」


 「……スリーラ様が死亡したようです。たった今、ファンドル様からご報告が」


 「……それがどうした? そんなことをいちいち伝えに来るなと、今度会ったらファンドルに伝えておけ。今俺は準備で忙しいんだ」


 「……はい……申し訳ありません」


 主のお叱りを受け、撤退する黒いポニーテールの女副官。

 再び一人になった部屋でドラウクは瞑想に入る。


 「……待ちわびた……実行の日はもうすぐだ……」


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ――――こちらは、南拠点。


 「ミーワールーナーさーまー。ミーワールーナーさーまー。ミーワールー」


 「――――うっっっさい!!! 聞こえてるわよメイティー!! 何!!?」


 「スリーラ様死んだってー。それだけー」


 「……へえ……スリーラがねえ。いい気味だわあ。あたし、あの女前から嫌いだったのよね。言ってることとやってることがぜんっぜん合ってなくてさ。……あああ!!! 思い出すだけでムカつくわあの女!!!」


 「じゃあー私行きますねー」


 金のドレスと赤髪が特徴的なこの魔物。

 辺りの家具を消し飛ばしながら、しばらく彼女の怒りは続いた。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ――――そして、東拠点。


 「――――やはりここか、レウラ」


 「な……!! ファンドル貴様ァ!! 勝手にわらわの私室に入るとは死にたいのか!!」


 「部下が誰もいないんだから、直接お前に会うしかないんだよ。まあそう怒るな。すぐにこんなところ出ていく。お前に伝えることが一つある。西拠点のスリーラが死んだ。それだけだ」


 「……!! コレールが!? ……ふんっ……コレール。とうとう会えなかったか……」


 「伝言はした。じゃあなレウラ」


 今後こそ自宅へと帰宅するファンドル。

 一人になったレウラは、自身の四本の腕を眺めながら呟いた。


 「…………待っていろ。人間ども」

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