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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第五章
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第百二十話 『本物の涙』

 「――――あっ……!! ケバローさん……!!」


 急ぎ、ゴアナ族の洞窟へと戻って来たレランカ。

 

 あの忌まわしき牢屋の隣の大部屋で、ケバロー・ホサルトンがうつ伏せに倒れているのを発見した。

 すぐに駆け寄るレランカ。

 ケバローが辛うじて生きていることを確認すると、少し胸を撫で下ろす。


 しかし、気を抜くことはできない。

  

 まだ近くに、自身の仇敵が潜んでいるかもしれない。


 ――――だが、


 「……あの野郎は……いねえみたいだな……てことは……」


 スリーラの姿はどこにも見えない。

 

 撤退したのか?

 ギリギリ生きているこのおっさんを放っておいて?

 ――――いや、それは考えにくい。

 スリーラはケバローに対して、激しい敵意を抱いていたはずだ。

 

 まだ確信はできない、が、ケバローがスリーラを倒したと考えてよさそうだ。


 そもそも、あのスリーラがどうやってケバローにここまでの重症を負わせたんだ?


 「……いや、今は……」


 『ケバローの治療』が最優先か。

 

 レランカも一応、回復魔法を使うことができる。

 さすがに全快とまではいかないが、応急処置くらいはできる。


 「…………重すぎだろ!!!!」


 しかし、レランカの力ではケバローを起こすことができない。

 仕方がないので、その場に寝かしたまま治療を済ませた。


 「…………よし……それにしても、この人がここまでになるって何があったんだよ。……まさかあの女……めちゃめちゃ強かったのか……!?」


 独り言を連発するレランカ。

 とりあえず、応急措置は無事に終わった。

  

 でも、ケバローはすぐには目を覚まさない。

 

 ここにいても仕方ないので、レランカは再びメデュンへと戻っていった。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


 町へと戻って来たレランカ。

 また小さな町をグルリと巡ってみるが、そこにもスリーラの姿はない。

 目に映るのは横になる町の人々だけだ。


 ひとまず一件落着ということで、今この町で唯一意識がある二人の少年の元へ。


 「…………お疲れさん……」


 隣合わせで寝ているジュンとユウビにそっと告げると、レランカはまた一人で歩き出す。 


 その後、レランカは超久しぶりにシャワーを無断で使うと、兄の家の布団を勝手に借りて眠りについた。


 ――――その次の日。 


 最初に意識を取り戻したのはケバローだった。

 重すぎて運び出せず、そのまま牢屋に寝かされていたケバローだったが、驚異的な生命力で意識を取り戻し、自力で町へと戻ってきた。


 「……ケバローさん……!! 大丈夫だったか!? あの女がどうなったのか知ってるか!? それにあんた、どうやってあんな重症を負ったんだ!?」


 ケバローを出迎えたレランカが、顔に疲労と書いてある彼を質問攻めにする。

 ケバローは辺りを見渡すと、


 「……その前に……これはどういう状況なのか教えてくれるかい? レランカ」


 と、質問を質問で返した。


 レランカは一瞬変顔で威嚇したが、すぐに素直に状況を説明した。


 「――――なるほど……『あの薬』の影響でこうなっているのか。なら、とりあえず心配はいらないか。彼女の力が消えたのも、やはりあの薬の効果だったようだね……」


 「おっ!! やっぱあいつの力は無くなってたんだな!! それで、あいつはどうなったんだ!?」


 「………死んだよ。おそらくね」


 ケバローは重く、そう呟いた。

 さっきまで殺し合いをしていた相手についてのセリフとは思えない。

 まるで、知り合いが亡くなったかのようなテンションだ。

 

 「……そうか……じゃあ、アンタが勝ったんだな、あの女に」


 「うん……でもね……」


 「ああ? どうしたんだよ、ケバローさん」


 レランカもケバローの様子がおかしいことを感じ取った。

 何か、やり切れないと言ったような表情を浮かべている。


 「……君たちがあの子の能力を解除して……僕が拳を叩きつけたとき。――――あの子は泣いていた。……それも、「死が怖い」とかそういった感情じゃなかった。……何か『後悔』とか『懺悔』みたいな、そういう涙だったよ、あれは」


 ケバローはあの一撃の間際、スリーラの感情を少し感じ取っていた。

 あの一撃の中で、スリーラの意識に変化が生じていたのも感じていた。

 

 「――――だから、あの子とは……スリーラとは、もう一度話したかったよ」


 「……なにいってんだ、ケバローさん。あいつは……あの野郎は……そんな感情を持ってるような奴じゃねえ。あんたも見ただろ? ショウエイと話してた時の、あの狂気に支配されたあいつの顔。『後悔』なんて、そんなもん持ってるような奴じゃねえよ」


 「……『あの時まで』はね。……でも、最後のあの子の涙は、『本物』だった」


 「……ちっ……分かった。じゃあ、それでいいよ。アタシはもう、何も言わねえ」


 口に出すことは無かったが、ケバローはスリーラの最期が自害だった可能性が高いとも思っていた。

 薄れゆく意識の中で、スリーラがわずかに動いているのが見えていたからだ。


 「あの悲しみの涙から導き出された答えが、自決だったのでは」と予想していた。


 その後、ケバローはジュンと再会。

 二人は涙ながらに抱き合った。

 

 その様子をレランカとユウビは笑顔で見守っていた。


 ――――翌日。

 翔英が目を覚ました。 

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