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ミミックボランティア 留年妖魔と偽りの土地神少女  作者: ムタムッタ
chapter 2 碧海サル殻合戦

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2-3(3)サルの狙い②


 榊支部長の指示を受け、正午前。

 支部を追い出されるように碧海市内へまた戻ることになってしまった。確かに誰かが捨てたであろう家庭ゴミらしきものが道端に落ちていた。


「今朝といいなんだよもぅ………」


 文句を言いつつもゴミを拾い上げていく。


「お………おお?」


 意図的に並べられたかのように、生ゴミからただの可燃ゴミ、金属類の破片が道端に散乱していた。


「あ、対策支部の人? 朝からこんなにばら撒かれててねぇ、とりあえず拾ってもらえる?」


 歩道に面した店から様子を見にきたであろう女性から声をかけられる。

 ………ま、どうせやらないと強制返戻が起きるからやるが……自分達でやる発想はないのか。


「このところあの妖魔騒ぎで大変でしょうけど、頑張ってね」


 ………一応感謝はされているらしい。

 気を取り直してゴミを辿っていくと、店と店の間にある狭い路地へ誘われる。そこにはバナナの皮とタバコの吸い殻が散らかされており、その先……黒スーツに身を包んだサングラスの男たちがスケボーやキックボードに乗ったまま袋からゴミをちまちまと捨てていた。


「あ、おいお前ら何やってんだ!」


 『sape』所属の男たちはこちらを一瞥すると、特に驚く様子もなくゴミを放置したまま走り去っていった。


「なぁんでこんなとこに………って、あいつら………」


 いかにサルという妖魔にしても、バナナの皮はあからさまじゃないか? 安直すぎるような………それにタバコも猿山が吸ってたよな………


「簡単な話ですよ! 市内の清掃は主にあなたが仕切っていますからねぇ! 一人で来るのを待ってたんですよ、はい!」


 背後──来た道を振り返ると眼鏡のブリッジを片手で支えながら猿山────否、特定妖魔であるサルが不敵に笑みを浮かべていた。例の如く、語尾の『はい』が鬱陶しい。


「これ、もしかしなくてもアンタの嫌がらせ?」

「おやおや、ご自分の置かれた状況をお分かりでない?」


 話聞けよ………


「今までのは単なる戦力分析! 土地神とあの専用の殻装キャラペイサーを扱う少女………そして量産型の殻装は面倒ですがあなたは! 生身のあなたは! 大した脅威ではない! ……それに、最近は不調のようですしねぇ、はい!」


 サルがパンパンと手を叩くと、周囲の影からキヒヒヒと下品に笑う分身サルが数体現れる。


 白い殻装を身に纏って。


 なんでこいつらが殻装あれを持ってるんだ。

『こちらパトロール! サルが出てきたが何かやばい、この前と全然ちが────』

 思考に割り込むように巡回していた職員からの通信。


「そしてあの妙な得物も持っていないあなたなど一般人と変わらない!」


 眼鏡をかけたサルが実体かどうかわからない以上、下手に黒蜥蜴もとの姿に戻ることができない。


「めんどくせぇな………!」


 眼前の眼鏡を掛けたサルにトングを投げつけ飛び蹴りを仕掛ける────が、


「言ったでしょう! 大した脅威ではないんですよ、はい!」


 突き出した右足を掴まれ、地面に叩きつけられる。重く鈍い衝撃が背中から全身に伝わり一瞬意識が飛ぶ。


「が………ハッ………!」

「ま、あなた程度でもこんなところで始末すると色々面倒ですからね、はい」


 起き上がるよりも早く、周りにいたサルに囲まれ袋叩きにされる。市内でイタズラをしていた個体とは殻装の効果もあって明らかにパワーが違う。暴力に骨が軋む。

 成すすべなくボロボロになった身体を、サルに吊るされる。


 こんな窮地になっても、土地神の力は何も応えない。


「戦力の偽装なんて基本中の基本ですよ! 我々の手を煩わせた事をゆっくり後悔させてあげましょう、はい!」


 ヒャヒャヒャと高笑いを上げながら、眼鏡のサルは俺の顔面を両手の爪で切り裂いた。


「ぐっ………あぁっ!」


 視界を奪われ、生温い、鉄くさい液体が頬を伝う。


「温情ですよぉ! これから起きることなんて見ない方がマシですからねぇ、ハイ!」


 高笑いするサルをとらえることはできないが、瞼越しにヒト型のシルエットで明滅する光が浮かぶ。


「………ん………?」


 裂傷をこらえながら左右に顔を振ると、俺を掴んでいるサルも光っている。……だから何だというのだが。


「さぁさぁ、行きますよ! 土地神達が出払っている内に!」


 身体を何かで縛られ、どこかへ運ばれ始める。

 視界は暗いまま、しかし両脇にサルがいるのは『なんとなく』光で分かる。だからと言ってなにかできるわけではないんだが……


 …………ちょっと擬態このままだとやばいかも。


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