これでお終い。直接、勇者たちを鍛える。
♢24♢
いつからだったか、勇者たちが早朝マラソンでピンチに陥らなくなった。
だから、この不毛の地のモンスターとバトらせてみた。それも拍子抜けするくらいあっさりとやり遂げてみせる。
「すげぇ……今日から始める勇者はすげぇ。読んだだけなのに……」
「そうね。魔法も呪文を唱えるだけだし。長いのは以下省略でいけるし……」
うん。アクマートから買ってきた教本に、魔法使いちゃん装備はヤバいね。MPだけ気をつければ無敵だね。
「「楽して強くなってしまった!」」
決して楽して強くなっているわけではないが、本人たちがそう思っているならいいか。
♢
「ポチ、タマ、今日は全力でやってみて。勇者たちを本気でぬっころすつもりで」
モンスターたちでは勇者たちに無双されてしまうので、不毛の地のボスたちに全力を出すように言ってみた。
「ニャー?」
「いいよ、変身して。うっかりやっちまうくらいの力を出せ。それでも勝つようなら……」
「次はわたくしですかな」
「そうなるな。ホネ、お前も手を抜くなよ。現役ではないにしろお前を倒すようなら、直々に相手をしてやろうと思う。最終試験だな!」
日々修羅場を潜り、作った野菜を使ってBBQしたり、また日々修羅場を潜り、またまた修羅場を潜ったりした成果が出てきたようだ。
……最近は、ほぼ修羅場だね。ホネはかなり容赦ないし、サクヤは手加減とか出来ないタイプだから。ポチとタマだって手加減できるのにね。
「そういえば小耳に挟んだのですが、仕立屋に行かれたそうで」
「お前、耳ないのに?」
「気になったのですが何をなさりに?」
「えっ、無視して話進めんの……別にいいけどさ。勇者たちに服と装備を用意してやろうと思ってな」
数日前。また中央世界にいってきた。
ゴッドに出くわさないかハラハラしながら仕立屋までいくのはかなり精神的にきた。しばらくは中央には行きたくない。
秘密裏に入手したアンのいろいろなサイズが役に立った。どうやって入手したのかは企業秘密です。ヤロウたちはだいたいで。
「左様でしたか」
「──そうだ! 儂も服を作ることにしたんだが身長伸びてた! 自分ではまったく気がつかなかったわ」
「……見間違いかと思っていましたが、仕立屋が言うのなら間違いではなかったということですな」
「お前、気づいてなら言えよ!」
「もし違っていたら後が恐ろしかったので」
このホネは儂を本当にどう思っているのだろう……。
♢
「やるな……勇者ども。しかし、わたしなど所詮は中ボス。勝ったからといって何がどうなるわけでもない。くくくっ、後悔するんだな。この先に待っているのは破壊と恐怖を振りまく大魔王なのだから……ぐふっ……」
──バタリ
そう音を立てて中ボスこと、無数の腕といくつもの違う生き物の頭を持つガイコツが倒れる。今まで動いていた骨たちは地に落ち動かなくなる。
ついに勇者たちは中ボスを倒した。この先に待つのは破壊と恐怖の大魔王。
「──やめやめ! なんだそのナレーションは! ホネ、お前別にやられてないよね? それに破壊と恐怖の大魔王とかやめてくれる? これからお菓子の国に可愛く君臨する予定なんだから!」
「しかし、こういうのは雰囲気が大事だと、サクヤ嬢が」
余計な演出をしやがってー。そんなイメージじゃ、マオちゃんでやれなくなるから!
「「おつかれしたー」」
「勇者、お前らは軽い! ホネは大げさ過ぎるけどお前らは軽すぎる! 中ボスを倒したのは事実なんだからもうちょっとこう……あるだろ。いろいろ」
「破壊と恐怖の魔王を倒した勇者たちは、真のラスボスとの戦いに臨む。その真の唯一にして無二の魔王……」
「サクヤ! いらんことしやがってー。お前がラスボスなのは否定せんが、そのために儂を巻き込むのはやめてくれ」
「えー、いいじゃん。仇は討ってあげるから。次は私ね!」
サクヤの背後にバーンというエフェクトが見える。こいつ好きだね。そういうの。
「お前は洒落にならんからダメ。真のラスボスなんじゃろ? もし儂がやられたら、その時は頼むから」
「……それなら仕方ないわね。命拾いしたな勇者ども!」
手加減とかできないし、今日から始める魔法使いを熟読し、呪文書もほぼ暗記したサクヤを勇者たちにぶつけるわけにはいかん。間違いなく勇者たちは死ぬ。もう間違いなくね。
「助かった。あんなのと戦うとか無理だから……」
勇者の本音も分かる。本当にあの娘がラスボスだと思う。
スポンジのように吸収し成長していく魔王の娘。勇者たちも成長したがアレは桁違いだよねー。
♢
そして、いよいよ儂が直々に相手をする時がきた。まさかゴミ勇者にそんな日が来るなんて思わなかった……。
「──えいっ」
「ぐはっ」「ぐはっっ」
最初に、スケさんカクさんが視界から消える。
「──とう」
「言葉の感じと起こる惨状が全然違う! ギャーーーー」
そして勇者も視界から消える。
「……そんな、ただのデコピンで3人が……」
そう、勇者たちを視界から消したのはただのデコピン。指先一つで勇者たちは全滅した。
「さて、残るのはアン1人になってしまったな」
「あれっ、魔法が撃てない! このままじゃ……」
「MP管理は気おつけないとダメだよ? バカスカ強い魔法を使いすぎだ。 ……つまり魔法使いちゃんは無防備」
「──最近は大丈夫だったのに」
ご無沙汰だった。お母さん業務が忙しかったし、サクヤとホネもしょっちゅう来てたしな。
セクハラは油断した頃にやって来る!
「セクハラは犯罪よ。いい加減理解しなさいよ!」
「それが魔王相手に通じるかな? もし魔王に敗北したら……きっとすんごいことをされちゃう。儂の比でないくらいに。もしもを考えておきましょう」
「いや……くんな! こっちくんな──」
最後の抵抗である杖攻撃をガッチリ掴み取り、一歩ずつ距離を詰める。
「観念しろ。ヤロウたちが戻ってくるまで、もしくは飽きるまで続きます」
「きゃーーーーーーーーーーーー」
久しぶりにアンの絶叫が響き渡る。
しかし、直々に相手をするのは早かったな。サクヤ以下では相手にならん。
他の魔王というのはどのくらい強いのだろうか?
自分以上とは思わないが、基準が分からんな。




