これでお終い。と日常。
♢23♢
植えた野菜が収穫できるまでになった。
それも作った中で最も時間の必要なダイコンに芋類が。
一面青々としていた畑も残すのはこれだけだ。野菜も次々は作れず、すでに収穫したところは草だらけになっている。
畑を作って、野菜を植えて半年が過ぎた。つまり勇者たちに出会ってから半年以上が経過した。
最初はどうなることかと思い、絶対無理じゃね? と思っていたが……。
こんな日が、勇者たちを送り出す日が来るとはあまり想像できなかった。
「これでお別れだ。もう、二度と会うこともあるまい。ここで別れたがお前たちとの最後だろうな。教えられることは教えた。出来ることはみんなやった。あとはお前たちの冒険だ」
勇者たちは誰も口を開かない。
元より儂に会話する気はない。最後に自分の言いたいことを言うだけだ。
「なに、レベル上げも必要なければ金を稼ぎ装備を買う必要もない。界に入ったらただ魔王を目指すだけでいいんだ。楽勝だろ? ……だから勝てよ。そしてお菓子の国を作らせろ」
残された時は少ない。勇者たちも戦いにいくが、儂も戦いにいかなくてはいけない。それも最大の強敵とな。
「体に気をつけて元気にやるんだぞ。喧嘩するなとは言っても無駄だろうから、チームワークを大切にしろ。ゴミ勇者とそれに付き合う殊勝な仲間たち。初めて会った時とは比べるべくもないくらいに立派になった! ……そろそろだな。ではな」
ここは出会いの、そして始まりの場所。元・魔王が住まう不毛の地の入り口付近。
出会ったこの場所からそれぞれの戦いが始まる。
初めに元魔王の姿が消える。次に小一時間ほどして勇者たち4人の姿も消える。
勇者たちは黄金の魔王を倒しに。元・魔王は欺き誤魔化すための戦いをしに……本当はクソヤロウをぬっころしに、それぞれ旅立った。
──終わり。
♢
「──勝手に締めんな! どうして儂の許可なくお開きにしようとしてんだ? BBQの材料も用意したのは儂。野菜なんて作ったんだぞ。魔王、お前はただ騒ぎに来ただけじゃん。なに仕切ってんだ!」
「いつもの調子でつい……」
「ついじゃない! ホネもなんか言ってやれ。この仕切りたがりの魔王くんに」
「まぁまぁ、カボチャのパイも焼けてきましたし、デザートを食べて落ち着きましょう」
ホネは魔王の味方をしやがった。だが、美味しそうな匂いがする。
「美味しそうでしょー、私たちが作ったのよ。ありがたく食べなさい!」
「ちゃんと人数分あるから」
2人だけでパイ作りに成功したらしいアンとサクヤは、かなりの大人数であるBBQ参加者たちにカボチャパイを切り分けていく。
この2人はずいぶんと仲良くなった。軽く嫉妬するくらいにな……。
「上手く焼けたみたいじゃな。アンは料理上手くなったね。サクヤの面倒も見れるくらいだし」
「──ちょっと、どーいう意味! 私が料理できないみたいじゃん。パパたちは自分で切って食べてよ。ちょっと……──邪魔ーー!」
魔王とその部下たちに囲まれてサクヤは見えなくなった。ギャーギャー騒いでいるが、何言ってんのかはわからん。
「これなら嫁に出しても恥ずかしくないな。どう、嫁にくる?」
「出すのか来るのかどっちよ……」
「決まってんじゃん。嫁にくる──」
大事な話の途中でヤロウたちがアンとの間に割り込んでくる。大事な、大事な、話の途中でな。
「俺たちの分は?」「「分は?」」
「うわっ、あんたたち下。下」
勇者とスケさんカクさんに押しのけられ、後ろに転がされる。
「……テメェら。カボチャ欲しさに命を捨てるのか? 覚悟はできてんだろうなぁ」
「「えっ、マオちゃん。いつから……どうして倒れているの?」」
「それは小さくて見えなかったという意味だな。よほどぬっころされたいと見える。少し腹ごなししてからパイを食べることにするよ」
ギャーギャー騒いでいたサクヤの方も囲みが割れる。
「マオちゃん。さっきの発言は撤回して。私、料理くらいできるから!」
「嘘つけ。卵すらまともに割れないやつが料理できるわけないじゃろ」
「あれは……ちょっと失敗しただけだし!」
「知ってるか。できないやつはみんなそういうんだよ?」
「……できるつってんじゃん」
よほど認めなくないらしいサクヤはマジモードに、つまりは逆ギレする。
「ヤロウたちは、何をこのどさくさに逃げようとしてんだ。話は終わったが、まだ腹ごなししてないから。逃げんな!」
「もう怒った。その腹ごなしで終わりにしてやるから」
「くるならきてみろ。勇者たちのついでにぬっころしてやるわ!」
「「──誰か助けて!」」
誰も助けにはこない。みんなガチバトルに巻き込まれたくはないから。
「今日も平和ね」
「「全然、平和と違う!」」
こうして日常は過ぎていく。




