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23/25

これでお終い。と日常。

♢23♢


 植えた野菜が収穫できるまでになった。

 それも作った中で最も時間の必要なダイコンに芋類が。


 一面青々としていた畑も残すのはこれだけだ。野菜も次々は作れず、すでに収穫したところは草だらけになっている。

 畑を作って、野菜を植えて半年が過ぎた。つまり勇者たちに出会ってから半年以上が経過した。


 最初はどうなることかと思い、絶対無理じゃね? と思っていたが……。

 こんな日が、勇者たちを送り出す日が来るとはあまり想像できなかった。


「これでお別れだ。もう、二度と会うこともあるまい。ここで別れたがお前たちとの最後だろうな。教えられることは教えた。出来ることはみんなやった。あとはお前たちの冒険だ」


 勇者たちは誰も口を開かない。

 元より儂に会話する気はない。最後に自分の言いたいことを言うだけだ。


「なに、レベル上げも必要なければ金を稼ぎ装備を買う必要もない。界に入ったらただ魔王を目指すだけでいいんだ。楽勝だろ? ……だから勝てよ。そしてお菓子の国を作らせろ」


 残された時は少ない。勇者たちも戦いにいくが、儂も戦いにいかなくてはいけない。それも最大の強敵とな。


「体に気をつけて元気にやるんだぞ。喧嘩するなとは言っても無駄だろうから、チームワークを大切にしろ。ゴミ勇者とそれに付き合う殊勝な仲間たち。初めて会った時とは比べるべくもないくらいに立派になった! ……そろそろだな。ではな」


 ここは出会いの、そして始まりの場所。元・魔王が住まう不毛の地の入り口付近。


 出会ったこの場所からそれぞれの戦いが始まる。

 初めに元魔王の姿が消える。次に小一時間ほどして勇者たち4人の姿も消える。


 勇者たちは黄金の魔王を倒しに。元・魔王は欺き誤魔化すための戦いをしに……本当はクソヤロウをぬっころしに、それぞれ旅立った。


 ──終わり。


 ♢


「──勝手に締めんな! どうして儂の許可なくお開きにしようとしてんだ? BBQの材料も用意したのは儂。野菜なんて作ったんだぞ。魔王、お前はただ騒ぎに来ただけじゃん。なに仕切ってんだ!」


「いつもの調子でつい……」


「ついじゃない! ホネもなんか言ってやれ。この仕切りたがりの魔王くんに」


「まぁまぁ、カボチャのパイも焼けてきましたし、デザートを食べて落ち着きましょう」


 ホネは魔王の味方をしやがった。だが、美味しそうな匂いがする。


「美味しそうでしょー、私たちが作ったのよ。ありがたく食べなさい!」


「ちゃんと人数分あるから」


 2人だけでパイ作りに成功したらしいアンとサクヤは、かなりの大人数であるBBQ参加者たちにカボチャパイを切り分けていく。


 この2人はずいぶんと仲良くなった。軽く嫉妬するくらいにな……。


「上手く焼けたみたいじゃな。アンは料理上手くなったね。サクヤの面倒も見れるくらいだし」


「──ちょっと、どーいう意味! 私が料理できないみたいじゃん。パパたちは自分で切って食べてよ。ちょっと……──邪魔ーー!」


 魔王とその部下たちに囲まれてサクヤは見えなくなった。ギャーギャー騒いでいるが、何言ってんのかはわからん。


「これなら嫁に出しても恥ずかしくないな。どう、嫁にくる?」


「出すのか来るのかどっちよ……」


「決まってんじゃん。嫁にくる──」


 大事な話の途中でヤロウたちがアンとの間に割り込んでくる。大事な、大事な、話の途中でな。


「俺たちの分は?」「「分は?」」


「うわっ、あんたたち下。下」


 勇者とスケさんカクさんに押しのけられ、後ろに転がされる。


「……テメェら。カボチャ欲しさに命を捨てるのか? 覚悟はできてんだろうなぁ」


「「えっ、マオちゃん。いつから……どうして倒れているの?」」


「それは小さくて見えなかったという意味だな。よほどぬっころされたいと見える。少し腹ごなししてからパイを食べることにするよ」


 ギャーギャー騒いでいたサクヤの方も囲みが割れる。


「マオちゃん。さっきの発言は撤回して。私、料理くらいできるから!」


「嘘つけ。卵すらまともに割れないやつが料理できるわけないじゃろ」


「あれは……ちょっと失敗しただけだし!」


「知ってるか。できないやつはみんなそういうんだよ?」


「……できるつってんじゃん」


 よほど認めなくないらしいサクヤはマジモードに、つまりは逆ギレする。


「ヤロウたちは、何をこのどさくさに逃げようとしてんだ。話は終わったが、まだ腹ごなししてないから。逃げんな!」


「もう怒った。その腹ごなしで終わりにしてやるから」


「くるならきてみろ。勇者たちのついでにぬっころしてやるわ!」


「「──誰か助けて!」」


 誰も助けにはこない。みんなガチバトルに巻き込まれたくはないから。


「今日も平和ね」


「「全然、平和と違う!」」


 こうして日常は過ぎていく。


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