これでお終い。とおまけ。
♢25♢
今日までいろんなことがあったな。思い出してみれば、どれもいい思い出。これがあれば耐えられる……と思う。
ウーウーウー
そんな音のサイレンが鳴り、警備にぐるりと囲まれる。いつぞやの二の舞にならないための措置だろう。
「お前らに用はない。クソヤロウを呼んでこい」
どうせ呼ばなくても来るけどね。
けたたましいサイレン音に、完全防備の警備員。職業屋の中は物々しい雰囲気。
クソヤロウには関係ないみたいだけど……。
「マオ、今日はどうしたんだい☆ ボクに会いに来てくれたのかな?」
「そんなところだ。いつもの店に付き合え」
「──えっ、本当に?」
クソヤロウことゴッドが疑うのも無理はない。そんなことは今まで一度も無かったのだから。
「いかんのか? ……なら帰るけど……」
「いく、行くよ! ──ちょっと五月蝿いから警報切って。それに解散、解散。ボクは出掛けてくるから、デートにね」
殺したい。けど、我慢。水の泡にするわけにはいかん。
「なら早くしろよ。1秒だって早く」
「そんなに積極的に……。それでオシャレして来てくれたんだね!」
新調したこの服も、勝手にいいように解釈してくれたようだ。チョロい。
あとは暴れないように自分を抑えていればいいだけだ……──なんて難しい!
♢
「──いつもご贔屓にしていただいてありがとうございます! ご注意はお決まりでしょうか?」
「ボクはコーヒーで。彼女には……」
ゴッドが勝手に注文を決めようとする。いつもは何も言わないんだが今日は違う。
「お茶。熱いやつ」
「……お茶はちょっと」
「ないなら買ってこい。ついでにお茶うけもな」
洒落た飲み物を飲む気分ではないし、時間がかかるのは好都合だ。
「マオ、無理を言っちゃダメだよ」
「なら違う店に行く。そしてここには二度とこない! 女、その意味は分かるな? こいつも二度とこなくなる」
「──すぐご用意させていただきます!」
「よろしく」
これで長居はできる。場は確保した。あとはサクヤに任せていいな。
「本当に今日はどうしたんだい?」
「ただ、ぬっころすだけでは駄目だと悟ったんだ。一回ちゃんと話をしてみようと思った」
もちろん嘘だ。本当は今すぐにでも襲いかかりたい。だが、それでは足止めにならんから我慢。
「そうか! なら話をしようじゃないか!」
「そうだな。勝手に喋ってくれ、永遠と」
「もちろん。いくらでも話すことはある」
予想通りにことは進む。1時間くらいは喋らせよう。
♢
界の移動は神に感知される。
死んだはずの人間が界を移動すればすぐに気づかれる。ロリコンでクソヤロウでも、あれは神なんだから。
不毛な大地を含む魔王くんが治める界は例外だ。ここはクソヤロウ対策をしてあるから。侵入も防げると良かったんだが、それは無理だった。
「ひじょーーに嫌なんじゃが、ゴッドは儂が足止めする。儂に注意を集め、サクヤが魔法で誤魔化す。魔王くんはその間に勇者たちを移動。ホネは邪魔が入らないようにしろ」
「危ない橋だな。失敗したら企みが筒抜けになる」
「インテリはいいから度胸見せろよ」
「パパはヘタレよね。私悲しい……」
「なんなんだ。事実を言ってるだけなんだけど?!」
作戦会議。といってもやることはゴッドを拘束とまではいかなくても、意識を儂に集中させればいいだけだから。
「しかし、言うわ安いですが誤魔化せますかな? あの神を」
「できるかなじゃない。やるんだよ!」
「おっしゃる通りで」
ホネは何故だかニヤニヤしている。骨のくせに。
「神を誤魔化せたら私は神超えよね」
「あんなの超えなくてよくない? 関わりを持つことすら避けた方がいいよ。そこの魔王くんみたいになっちゃうよ?」
「えっ……それは嫌かも」
「なんか娘に嫌だと言われたんだけど?」
魔王くんにはかなりショックだったみたいだね。パパと同じにはなりたくないというのは。
まあ大丈夫。その娘の夢は魔王になることだからな。
♢
「あー、そうだねー」
ゴッドのつまらない話に相槌をうつのもしんどくなってきた。それにしてもベラベラ喋りやがって。
サクヤの姿はまだ見えない。それが完了の合図になっている。
思ったより時間がかかってるな。あの天才をもってして難しかったか?
だが、ここまで来てやめることはできん……最悪暴れよう。心配するな。最悪だから。
「……ねぇ。気になっていたんだけど、あの耳はどうしたんだい? ウサギの耳は」
目ざといな。どうして今気付きやがったのかはわからんが、気付かれたのが問題だ。
「壊れた。それにおニューの服には合わなそうだしな」
「そうかい? キミに似合ってたんだけど」
「ロリコン発言はやめろ。ぬっころしたくなるから」
バニーちゃんの耳は壊れた。正確に言うと片耳が斬られた。ゴミ勇者によって。
「まさか壊れるとは思ってもみなかった。一撃だって当たらない。当てられない。そう思ってたんじゃがな」
「……何の話だい?」
疑問を浮かべるゴッドの後ろを女の子がVサインを出して通り過ぎる。
──サクヤは上手くやってくれた。これでコイツは意識を集中しなくては感知できない。
「なぁ、ゴッド。この1時間話してみて分かったことがある」
「なんだい? ボクが必要だって気づいたのかな☆」
「ちげぇよ。やっぱりお前とは合わない! ロリコンと分かり合える日は来ないと悟った。だから、──死ねーー!」
──我慢の時間はおしまいだ!
今頃は魔王が勇者たちを移動させているだろう。どのくらい時間が必要かはわからんが、あいつらはやってくれる。
その日を楽しみに待つとしよう。
──終わり──
♢おまけ♢
今日はお出掛けー。
ただ酒に、ただ飯だー。お菓子もあるよー。
気分良く不毛な大地の入り口付近に向かっています。
1人の日常が再び始まり、とはいえサクヤは毎週来るし、魔王も来るしホネもお菓子を持ってくる。つまり魔王親子以外はお土産を持ってくる。
「……んっ?」
誰もいないはずの不毛な大地に気配がする。それも人のだ。
「誰だ。出てこい」
音沙汰なしな勇者たちではない。あいつらはここまで弱くはないし2人でもない。
「お、お前が魔王だな! つ、ついに見つけたぞ。お前を倒して……」
「──待て! 魔王と違う。それにそれ以上言うな。これから中央に行くから黙ってついてこい。そして大人しく帰れ」
このパターンはこないだやったよ?
「か、勝手なことを言うな! 僕は魔王を倒すんだ!」
「坊ちゃん頑張って!」
──メイドさんだ! メイドさんがいる……。
儂と背丈の変わらない少年勇者とメイドさん! が現れた。
バニーちゃんと同じくらいの破壊力。しかし関わりたくない。だが……。
「……なんでここにきた? どうやってきた? 言ってみ。坊ちゃん」
「親切なお兄さんが送ってくれたんだ」
またか。またなのか。あのクソヤロウは! こないだ殺しきれば良かった!
「儂、忙しいから。それに魔王じゃないし。元・魔王だから。お前ら騙されてるぞ。じゃあね!」
逃げよう。ゴッドに関わらずに生きていきたい。
「待て、ちびっ子!」
……ギリギリアウト。ちびっ子にちびっ子と言われるのは無理。
「儂はショタにも容姿しないぞ。興味ないしヤロウはヤロウだから」
また、こないだのようなことが起こる。天変地異が起こり魔王が止めに入る。
元・魔王の勇者との出会いと戦いは続いていく。次はこの勇者たちを使って何をするのか……。
出会いの数だけ物語りはある。




