魔王に説明させる! ②
♢18♢
生首の刑に処された魔王に勇者にヤロウたちは反省させられている。
彼らは互いにどちらも悪くなかったと和解し、もう二度とあの元・魔王に不用意な発言をしないと誓い合った。
その彼らは魔王力について話している。
反省の時間は終わらないし、未だにガチバトルは行われているからだ。
大人げない元・魔王は勝ちを譲らないし、負けず嫌いな魔王の娘は諦めない。
ようするにサクヤが諦めない限り終わらない。ちなみに、地上では周りに被害が多大に出るので空中戦へと移行している。
「勇者力と魔王力は同じなのか?」
「違う。魔王力は勇者力と違う。勇者力は複数に分け与えるが魔王力は1人にしか継がせられない。魔王が大勢いるのは人間が増えるたびに現れるからだ。それも先代で打ち止めみたいだかな。先代以降、人間が増えようが魔王は現れない。必要無くなったのか、終わりなのかは定かじゃないけどな」
「勇者は増えるが魔王は増えないと?」
「──かもな。魔王が消えなきゃ確証はないが、テメェらは魔王を倒すんだろ? そうなり魔王が追加されなきゃ、仮説は確かなものになる」
「……それで、俺たちは魔王は倒せるのか?」
「知らねーよ。だが、先代はやると言ったらやる。本当にどうにかして魔王を倒させるはずだ。そして教えるのも上手い。逃げ出さなきゃ何とかなるんじゃないのか? ……多分逃げ出せないだろうがな」
黙って話しを聞いているしかない他のヤロウたちも納得するしかない。
アレから逃げるのは無理だと。アレが本当の魔王じゃん。と。
「……ところで、さっきから全員視線がいやらしいんだけど」
ヤロウたちは地面に埋まっている。
その視界にはどうしたって目に入ってしまう。チラチラ見える生足が。
「──待て。これ以上はシャレにならない! オレだけじゃなく勇者も被害を被るんだぞ? よく考えて発言してくれ」
「そうだ。もう、無理だから! あのガチバトルの矛先がこっちに向いたら瞬殺されるから!」
見られたくないならウロウロしてるなよ。とは思っても口にできない。
それが地雷であると理解できているから。
「なら、話の続き。魔王力はわかったから勇者力が必要な理由って何? どうして勇者が必要なの?」
「勇者力はトドメに必要なだけだ。魔王は地力だけでは倒せない。魔王を倒すっていうのは魔王力を無くすってことだ。無くなった魔王力は戻らないんだ。弱らせて魔王力を削ぎ落とせば魔王はおしまいだ」
「魔王同士が争えないっていうのは? 理由があるの?」
「誰もが無意識に知ってる中央のルールと同じようなもんだ。魔王なら誰もが知ってる。同類と戦うなってのが魔王力の根底にある。勇者力も同じだろう」
「魔王って、あなたたちみたいなのばかりじゃないわよね。他の界にも聞こえてくるくらいのヤバいヤツだっているわよね。それでも魔王同士で争えないの?」
きちんと役割を果たそうとする魔王も存在する。同じ考えの勇者たちがいるように。
「その通りだ。消えてくれた方がいいヤツはいる。だが魔王ってのは変わってきてんだ。人間は減らない。なら、その与えられた界をコントロールした方がいいんじゃないか? ってな。オレのなりたかった魔王とは違ってきたが、娘まで出来ちまったら変わるしかない」
「だからと言って任侠の人にはならないと思うんじゃが……」
彼女が戻ってきたということは、ついに魔王の娘は諦めたらしい。
「──勝てないー! 頑張っても、策を用意しても、勝てないー! パパになら勝てそうなのに、マオちゃんには勝てる気がしない」
「サクヤ、そんなことはないぞ。今日は儂も本気じゃったし」
「……どのくらい?」
「……10%くらいかな」
「全然、ダメじゃん! アレで1割なの?! あと何回変身を隠してるの、どういう作りなの、何もかもどうなってるのーー! ……はぁ、はぁ」
息を切らせ悔しさをあらわにする。この娘にしては稀なこと。
普段は絶対に表に出さない感情を止められない。
「──みんな、いつまでも埋まってないで私を慰めなさいよ! 使えないわねー!」
そう言って簡単に生首を引き抜いていく。サクヤと違って元・魔王は穏やかだ。
ガチバトルはいい運動に、ストレス発散になったらしい。
「全員、砂落としてきて。もう帰るわよ! あー、帰ったらやけ食いしてやる!」
怒れるお嬢も手に負えないので、魔王にその部下たちは反論せずに言われた通りに行動する。
「どうしてマオちゃんに勝ちたいの? 見てた限り、もう十分だと思ったんだけど……」
「アン、私はね越えなくちゃいけないのよ。夢のために──」
「……夢?」
魔王の娘。その夢とは? わずかでも興味があったのは確かだろう。
ただ、すぐに聞かなければよかったと後悔する。
「──私はね、魔王になりたいの!」
背後にバーンとか、ドーンとか、のエフェクトがかかりそうな感じでサクヤは言う。
「…………」
「唯一無二の魔王になるの! そのためにはマオちゃんに勝たないといけないのよ。あと、パパに言っちゃダメよ? もし口にしたら──して、──するから」
「サクヤ、具体的にどうするんじゃ? 唯一無二とは?」
お聞かせできない発言を無視して、軽く引いてるアンを無視して、マオちゃんは疑問を尋ねる。
「決まってるじゃない。私以外の魔王を全部消して、全ての界において唯一の魔王に、誰もが崇め祭る無二の魔王になるのよ。そうなれば全ては私の物。私の思うがままに、思うように世界を運営するのよ。何不自由なくチヤホヤされて過ごすの」
この娘がラスボスだーー! そう思ったのは言うまでもない。




