翌朝
翌朝。
「ごちそうさまでした!」
朝食を済ませたネクトリアは、
満足そうに手を合わせた。
その向かいでは――
イレアが静かに茶を飲んでいる。
昨夜。
ネクトリアがベッドに括り付けられ、
宿の主人が巨大なタライの直撃を受け、
イレアは何をしていたのか。
密猟者。
盗まれた荷車。
港に積み込まれていた、
ウミガメや珊瑚。
昨夜の出来事を――
イレアは淡々と説明した。
「――以上が、昨夜の経緯です」
「そんなことがあったんだ……」
「はい」
「全然知らなかった……」
「お休みでしたので」
「縛られてたからね!?」
「はい」
「そこは否定してよ!」
そんな話をしながら――
二人は荷物をまとめ、
部屋を後にした。
階段を降りる。
「お世話になりました!」
「…………」
宿の主人がいた。
頭には――
大きな包帯。
「…………」
ネクトリアが止まる。
イレアも止まる。
主人が二人を見る。
「…………」
「…………」
「…………」
そして――
「二度と部屋に罠なんか仕掛けるんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」
思い切り怒られた。
「申し訳ありません」
「ほんとにごめんなさぁぁぁい!!」
なぜかネクトリアまで一緒に頭を下げた。
宿の外。
「グェ」
食材が待っていた。
その足元には――
キラキラ……。
昨夜、
イレアが残していった魔力の欠片。
「グェ」
ツン。
キラッ。
「グェ!」
ツンツン。
キラキラッ。
「わぁー!!」
いつの間にか――
町の子供達が集まっていた。
「光った!」
「もう一回!」
「鳥さん、もう一回やって!」
「グェ!!」
ツン。
キラッ。
「「「わぁぁぁぁ!!!」」」
食材は――
大変楽しそうだった。
「…………」
ネクトリアがその光景を見る。
「人気者になってるね」
「そのようですね」
「グェ!!」
「…………」
こうして――
二人と一匹は、
船着場へ向かった。
港は――
昨日とは打って変わって騒がしかった。
「そっちを確認しろ!」
「船倉も全部だ!」
「押収品は勝手に動かすな!」
海兵達が、
慌ただしく行き交っている。
昨夜の密猟事件。
その後――
イレアは気絶させた密猟者達を、
海兵の詰所へ引き渡していた。
「すごい騒ぎだね……」
「当然でしょう」
二人がその横を通り過ぎようとした――
その時。
「あっ!!」
一人の海兵が、
イレアを指差した。
「昨夜の!」
「…………」
イレアが足を止める。
海兵が駆け寄ってきた。
「改めて――ご協力、感謝します!」
ビシッ!!
敬礼。
「おかげで密猟者を一網打尽にできました!」
「押収された生き物についても、現在保護を進めています!」
「それは何よりです。ウミガメは無事ですか?」
「はっ!少し目に痛みを覚えているようでしたが、元気にしております!」
「そうですか。良かったです。」
「…………」
ざわ……。
周囲の視線が――
一斉にイレアへ集まった。
「……あの子が?」
「昨夜の密猟者を捕まえたって……」
「嘘だろ?」
「あんな細身の女の子が……?」
「信じられない……」
ざわざわ……。
「隣の子もまだ小さいんじゃないか?」
「旅人か?」
「二人だけで?」
そして。
「…………」
誰かが食材を見る。
「なんで七面鳥連れてるんだ?」
「グェ!?」
食材が――
初めて少しだけ不満そうな声を出した。
「…………」
ネクトリアは、
周囲を見回した。
完全に――
注目の的だった。
「…………イレア」
「はい」
「すごく見られてるよ」
「そのようですね」
「…………」
イレアはネクトリアへ向き直った。
そして――
「ネクトリア様」
「なに?」
「目立つ行動は、お控えください」
「…………」
ネクトリアが固まった。
周囲を見る。
海兵。
町の人々。
子供達。
密猟事件の英雄を見るような目で、
イレアへ集まる視線。
そして――
「昨夜の方だ!」
「密猟者を一人で!?」
「すげぇ……!」
「お姉ちゃん強いの!?」
「グェ!!」
「…………」
ネクトリアは――
イレアを指差した。
「あんただよ!!!」
港町オギトンに――
第三王女の声が響き渡った。




