誤作動
ガチャ。
窓が静かに開いた。
「…………」
イレアが、
何事もなかったかのように部屋へ戻ってくる。
窓を閉める。
振り返る。
「…………」
ベッドの上。
ネクトリアが――
涙目でこちらを見つめていた。
「…………」
「…………」
「お目覚めでしたか」
「イレアぁ……」
「はい」
「なんでわたし縛られてるのぉ……?」
「手紙の通りです」
「…………」
ネクトリアの視線が、
ゆっくりと枕元へ向く。
そこには――
イレアが残した手紙。
「読めないよ」
「…………」
イレアは手紙を見る。
ネクトリアを見る。
両腕を見る。
再び手紙を見る。
「…………なるほど」
ようやく気づいた。
「お見せいたします」
イレアは手紙を手に取り――
ネクトリアの顔の前へ。
「…………」
じーっ。
「うん、読めた」
「何よりです」
「ほどいて」
「はい」
その時だった。
バタバタバタ――!!
廊下から、
慌ただしい足音が聞こえてくる。
「お客様!?」
「大丈夫ですか!?」
「今、ものすごい声が――!!」
宿の主人だった。
「…………あ」
イレアが扉を見る。
「どうしました?」
「罠があります」
「えっ」
ガチャッ!!
扉が開く。
瞬間――
ゴォォォォォンン!!!
「ぐぇっ!!!」
巨大なタライが――
宿の主人の頭へ直撃した。
ガランガランガラン……。
「…………」
主人が倒れた。
「…………」
ネクトリアが見る。
倒れた主人。
タライ。
イレア。
もう一度――
倒れた主人。
「…………イレア」
「はい」
「あれぐらいなら別に当たっても大丈夫だったんだけど……」
「存じております」
「じゃあなんで縛ったの!?」
「誤作動されますと、音が迷惑ですから」
「…………」
「…………」
「じゃあ仕掛けないでよ!!!」
「ごもっともです」
「あとほどいてぇぇぇ!!!」
新月の静かな夜に――
再びネクトリアの声が響き渡った。
「…………」
イレアは、
僅かに眉を寄せた。
「ネクトリア様」
「なに!?」
「お静かに」
「誰のせいなのぉぉぉぉぉ!!!」




