巨槍
(……ウチが……スズメバチ……だと……?)
指先が、わずかに震える。
戦場に響く羽音が、妙に耳に馴染む。
それは、自分の一部を見せつけられたような感覚だった。
(……まさか……)
胸の奥が軋む。
ずっと感じていた違和感。
敵に覚える“馴染み”。
それらすべてが一本の線で繋がる。
(……ウチは……)
低い声が漏れる。
「……うるせぇ……」
否定するように、吐き捨てる。
だが――
ドクン。
ドクン。
心臓の鼓動に合わせ、魔力が膨れ上がる。
「黙れ……」
羽音が変わる。
空気を震わせる、異質な振動。
周囲のスズメバチ兵たちが息を呑んだ。
「な……」
「なんだ、この圧……」
誰も動けない。
ただ立っているだけで、膝が震える。
フードの男の表情にも、わずかな動揺が走る。
(この圧……やはり……)
「目を覚ませ……ヴェスピナ!!」
その瞬間。
ヴェスピナが、ゆっくり顔を上げる。
瞳の奥――抑えきれない感情の濁流。
理性を超えた衝動。
「……ウチが……」
声が低く歪む。
「ウチが……なんだってんだよ……!!」
――ドンッ!!
爆発的に魔力が噴き上がる。
大地が軋み、空気が悲鳴を上げる。
羽音は、もはや轟音。
戦場全体が震えた。
フードの男が、思わず一歩退く。
「――っ!?」
次の瞬間。
空間の上方に、影が生まれる。
常識外れの質量。
ミツバチのそれとは異なる、純粋な武装。
あまりにも巨大。
「……な……に……」
言い終える前に。
ヴェスピナの腕が、無造作に振り下ろされた。
「……邪魔なんだよ」
――ズドンッ!!!




