61/70
疑惑
笑いながら、ヴェスピナは男を睨みつける。
ゆっくりと歩み寄る、黒いフードの男。
低く、確信に満ちた声。
「なぜだ」
一歩、踏み出す。
「スズメバチの王族たる貴様が」
――ドゴッ!!
頬に、強烈な一撃。
視界が弾ける。
「何故ミツバチなどと共闘している」
「ッ……!」
戦場が、静まる。
ヴェスピナの眉が、ぴくりと動いた。
「……何、言ってやがる……」
男は止まらない。
「貴様の羽音」
――バゴッ!!
腹部に叩き込まれる拳。
空気が抜ける。
「がっ……!」
「貴様の武装」
――ダァン!!
蹴りが直撃し、体が弾き飛ばされる。
地面を転がり、土煙が舞う。
「その戦い方」
男はゆっくりと距離を詰める。
「すべて――」
見下ろす。
「私達と同じだ」
ヴェスピナの指が、地面を掴む。
「……は?」
かすれた声。
立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
男はさらに一歩近づく。
「気づいていないのか」
「自分の血の正体に」
ドクン。
心臓が、強く跳ねる。
ドクン。
耳の奥で、嫌な音が鳴る。
「……は、ぁ?」
ヴェスピナの瞳が、わずかに揺れた。
男の視線は、すべてを見透かすように突き刺さる。
「その羽音」
「その魔力」
「その戦い方――」
逃げ場のない言葉。
胸の奥に突き刺さる。
(……なんだよ、それ……)
戦が始まってからずっと、見ないふりをしていた違和感。
それが――
形になり始める。




