強敵
一方、最前線。
ヴェスピナは敵陣を薙ぎ払いながら、眉をひそめていた。
「……チッ」
槍を振るう手が、わずかに鈍る。
(……なんだ……?)
胸の奥がざわつく。
目の前の敵。
その動き、間合い、羽音――妙に馴染む。
ステップのリズム。
槍の軌道。
攻撃の間合い。
どこか、自分の戦い方と重なる。
それが、不気味なほどに正確に。
「……気持ちわりぃな……」
吐き捨てる声に、わずかな動揺が混じる。
(……ウチの動き……こいつらに似て……る……?)
その時。
敵陣が、左右に割れた。
ざわり、と空気が揺れる。
現れたのは――黒いフードを被った巨体。
一歩。
踏み出すだけで、空気が沈む。
明らかに、格が違う。
そいつはヴェスピナを真っ直ぐ見据えた。
「……来いよ」
挑発。
次の瞬間。
――消えた。
「ッ!?」
反応した時には、すでに目の前。
巨大な爪が、振り下ろされる。
ギィン!!
咄嗟に盾で受ける。
(重ッ――!!)
腕が軋む。
骨にまで響く衝撃。
地面が砕け、足がわずかに沈む。
「チッ……!」
押し切られる――そう思った瞬間。
さらに、次の一撃。
速い。
いや、違う。
“繋がっている”。
一撃目と、間がない。
ヴェスピナは歯を食いしばる。
「ノクス――!!」
反撃の構え。
踏み込む――
その瞬間。
シュッ――!
視界から消えた。
(なっ――!?)
気配が、背後に。
遅い。
振り向くより早く――
バゴォ!!
右頬に、直撃。
衝撃が頭を揺らし、視界が弾ける。
体が、宙を舞う。
「ッ――――!!」
地面を転がり、無理やり体勢を立て直す。
口の中に、血の味。
(……なんだよ、こいつ……)
視線を上げる。
フードの奥。
見えないはずの目が、こちらを射抜いていた。
(――強ェ)
直感が告げる。
これは、ただの敵じゃない。
“格が違う”。
ヴェスピナの口元が、ゆっくりと吊り上がった。
「……いいじゃねぇか」
血を吐き捨てる。
槍を顕現し、握り直す。
「やっと“当たり”が来たなぁ……!!」




