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違和感

激しい羽音と金属音が戦場に鳴り響く。


スズメバチの猛攻に、ミツバチ兵はなす術もなく押し込まれていた。



――その中で。



戦場の一角。


白銀の閃光が走る。



「はあっ!!」



次の瞬間、突進してきたスズメバチ兵たちがまとめて崩れ落ちた。



速い。


見えない。


斬られたことすら理解できないまま。



「……まだ来るの……?」



息を整えながら、ネクトリアが呟く。



十四歳。


だがその身に宿るのは、圧倒的な魔力と戦場を支配する速さ。



母より託された槍と共鳴し、幾度もの窮地を越えてきた少女は――すでに前線の要だった。



押し寄せる猛攻。


それでも一歩も退かない。



その時、兵たちの間にざわめきが走る。



違和感。



羽音の間合い。


突進のタイミング。


攻撃のリズム。



――噛み合っている。



敵の動きと、まるで。



「……?」



スズメバチ兵の一体が目を見開く。



「あの戦い方……」



理解が追いつく。



「あいつ……俺たちと――」



その瞬間、ネクトリアが踏み込んだ。



回転。


加速。



間合いを読む。



スズメバチ特有の戦法。


それを、小さな身体で完全に再現している。



アピスは小さく息を呑んだ。



(ネクトリア……あなた……)



胸に広がるのは誇り。


だが同時に、不安。



(それは……気付かれてはいけない……)



敵は気付き始めている。


この少女の“異質さ”に。



彼女を鍛え上げたのはヴェスピナ。


スズメバチ――敵、そのもの。



だからこそネクトリアの動きは、あまりにも“馴染みすぎていた”。



それは敵にとって恐怖だった。



自分たちの武が、自分たち以上の精度で再現されている。



ネクトリアの瞳が光を帯びる。


その手には、確かな意志。



だが――



戦場に渦巻く、まだ見ぬ危険。



白銀の閃光は戦場を切り裂きながら――


同時に、“違和感”を刻み込んでいく。

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