男気
一方その頃――。
ネクトフラムでは、膨大な建築工事が行われていた。
「おー!! でっけ~なー!!」
ヴェスピナが、完成した建物を見上げながら叫ぶ。
「グエ!!」
隣では『食材』がバタバタと羽を動かし、喜んでいた。
「これでみんな一緒に暮らせるんだね!」
そこに完成していたのは――巨大な鶏小屋。
設計者、ヴェスピナ。
「おめーらご苦労だったな!! 完璧じゃねーか!!」
ヴェスピナは自慢げに胸を張る。
それは、食材一家のための新居であった。
食材たちが嬉しそうに中へ入っていく。
入口はやや狭いが――中は、かなり広い。
続いて、他の七面鳥たちもぞろぞろと入っていく。
「お姉ちゃん、これ……」
ネクトリアが控えめに声をかけた。
「ん?」
「すごく広いね……」
「だろ!」
ニカッと笑うヴェスピナ。
「こんだけ広けりゃ、何でもできるだろ!」
「けど、入り口が……」
妹の懸念を、彼女は全く気にしていない。
完全に、気にしていない。
その時だった。
「あの……ヴェスピナ様……」
一人の働き蜂が、おずおずと声をかける。
「なんだよ、まだ居たのかよ。もう休んでいいぜ?」
「いえ、その……こちらを……」
差し出されたのは――一枚の請求書。
「……」
「……」
沈黙。
ヴェスピナが、ゆっくりと食材の方を向いた。
その目は、かつてないほど真剣だ。
「食材……」
重々しく語りかける。
「お前はこれから、この群れの柱になるんだ」
「グエ?」
「分かるな?」
「グエ?」
「よーし! 物分かりがいいな!!」
即断。
冷や汗をかきながらも、満面の笑みを浮かべる。
「こいつが払うってよ」
「と、鳥が……ですか?」
「なんだ?コイツの男気に文句でもあんのかよ!」
「いえ……そういう問題では……」
「食材! あとは頼んだぜ!」
押し付けられる請求書。
食材は意味も分からず、それを嘴で咥えると――。
ブンブンと振り回し始めた。
「あぁ……」
働き蜂が絶望に染まる。
(無茶苦茶だ……)
その瞬間――。
パチンッ!!
乾いた音が、工事現場に鳴り響いた。




