表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/60

血族

――数日後。

陽の光すら届かぬ、地下深く。

そこには、静謐せいひつと熱気が混在する巨大な洞窟が広がっていた。


一匹の偵察蜂が、羽音を荒らげて駆け込んでくる。


「女王陛下!! ヴェスタス様がご帰還されました!!」


最奥に鎮座する絶対的な存在が、低く、重々しい声を響かせた。


「遅かったな……。通せ」


「ハッ!」


重厚な石の扉が、地響きを立ててゆっくりと開かれる。

現れたのは、黒いフードを深く被った男――彼こそが、ヴェスタス。


「女王陛下。……アルジュラが、命を落としました」


「……何?」


一瞬、空気が凍りつく。


「誰にやられた。あの場所は、貴様の領土であろう」


「……ミツバチです」


「――ふざけるなッ!!!」


咆哮とともに、女王の手から放たれた杖が石畳を叩き割る。


「ミツバチ如き……羽虫の群れに、我らが遅れを取ったというのか!?」


「お怒りはごもっともです。……ですが、一つお伝えせねばならぬ報告がございます」


「申せ」


ヴェスタスは表情を変えず、淡々と、だが決定的な一言を放った。


「その群れの中に、一匹だけ……『スズメバチ』が混ざっておりました」


「なっ……ふ、ふざけるな……っ! ふざけるなッ!!!!」


女王の顔から余裕が消え、剥き出しの動揺が怒りへと変換される。


「間違いありません。あれは、間違いなく……」


「黙れ!!! 認めぬ……! そのようなこと、わらわは絶対に認めぬぞ……ッ! 連れ戻せ……たとえ四肢をいででも、殺してでも連れ戻せ!!」


「……」


「何を黙っておるのだ、ヴェスタス!!!」


沈黙を貫く男に対し、女王は狂気すら孕んだ眼光を向け、椅子を蹴らんばかりに立ち上がった。


「取るに足らぬ羽虫と放置しておいたが……今度ばかりは容赦できぬ。ミツバチどもは根絶やしにせよ。そして、そのスズメバチを妾の前に引きずり出せ!!!」


女王の絶叫が、広大な洞窟を震わせる。


「どのような姿に成り果てていようと構わん!! 我が血族を、必ずや奪い返せ!!」


「……御意。承知いたしました」


「兵を集めろ。……戦だ」


「ハッ!!」


暗がりのなか、ヴェスタスの口元がわずかに歪んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ