遊び場
戦闘後の闘技場。
グチャ……。
アルジュラの腹部が、裂ける。
その奥から――。
白い肢体が、ぬるりと姿を現した。
糸のように細い手足。
血に濡れながらも、その肌は異様なほどに白い。
ゆっくりと、立ち上がる。
「……はぁ」
小さく、吐息。
視線が巡る。
崩壊した闘技場。
砕けた巣。
そして――消えた獲物。
「せっかく、良い遊び場ができてたのになぁ」
残念そうに、呟く。
その背後。
黒いフードの男が、静かに立っていた。
「……チッ。派手にやられたな」
腕を組み、舌打ちする。
「ねぇ……」
男が視線を女に向けた。
「あのスズメバチ……キミと同じだろ?」
わずかな間。
「……そのようだな」
短く、返す。
白い女が、くすりと笑う。
「放っておいていいの?」
沈黙。
「……?」
白い女が首を傾げる。
だが――。
「まぁ、いいや」
あっさりと、興味を手放す。
「今はまだ――放っておこっか」
「……?」
男の眉が、わずかに動く。
白い女は、遠くを見ていた。
「彼女たちは、“育つ”よ」
静かに。
確信するように。
「より良い器に」
沈黙。
そして――。
ふっと、微笑む。
「その時に、頂けばいい」
男が肩をすくめる。
「相変わらず、趣味が悪いな」
「褒め言葉かな?」
くるりと、背を向ける。
「帰ろ……」
軽く手を振る。
「ここはもう、いらないや」
一歩、歩き出す。
ふと、足を止める。
「はぁ……せっかくのオモチャが……」
自分で口にした言葉に、くすり、と笑う。
「まぁ……また作ればいいか」
振り返らずに。
「そう……いくらでもね……」
静寂。
黒いフードの男が、空を見上げる。
(ヴェスピナか……)
ほんの一瞬。
視線が、揺れる。
(生きていれば――)
わずかに、息が止まる。
(お前ほどの歳か)
拳が、わずかに軋んだ。
(……まさか、な)




