孵化
少し空いてしまったので一気に上げました!
静寂。
すべてが、止まっていた。
その中で――
「ヴェス……ピナ……様……お見事、です……」
掠れた声。
「イレア!?」
ヴェスピナが振り向く。
そこにいたのは――
食材。
その嘴に、イレアを咥え。
どこか誇らしげに、立っていた。
グエ!
「食材……!怪我は!?」
ネクトリアが、慌てて駆け寄る。
その目に映ったのは――
先ほどまでの衰弱が、嘘のような姿。
「治ってやがる……いや、そんなわけ……」
ヴェスピナが、目を細める。
理解が、追いつかない。
ただの魔獣ではない。
そうとしか思えない回復力。
グェ!!
食材が、翼をピシッとネクトリアへ向ける。
「え……?」
ネクトリアは、戸惑う。
「何を……したんだ?」
ヴェスピナの問い。
だが、答えは出ない。
「いや……それどころじゃねぇな」
吐き捨てるように言う。
「とにかく、帰るぞ」
その時だった。
ボコッ――
鈍い音。
まるで。
泥が弾けるような。
「……なんだ?」
ヴェスピナが、眉をひそめる。
ボコッ。
ボコッ。
不気味な音が、続く。
視線の先――
アルジュラの死体。
その腹部が。
膨れ上がっていた。
「……おい」
嫌な予感。
そして――
ブチィッ!!
裂けた。
腹部が、内側から。
次の瞬間――
無数の影が、飛び出した。
蜘蛛。
蜘蛛。
蜘蛛。
小さな個体が、溢れ出る。
「――――ッ!!」
言葉を、失う。
「マジかよ……」
ヴェスピナの声が、掠れる。
終わっていなかった。
まだ――終わっていない。
連戦。
死闘。
限界の身体。
その上で――
さらに、これ。
「退くぞ!!ネクトリア!イレア!!」
叫ぶ。
即座に判断する。
だが――
遅い。
ザザザザッ――
音を立てて。
子蜘蛛たちが、広がる。
出口を――塞ぐ。
完全に。
「チッ……」
舌打ち。
最悪だ。
グルル……
食材が、低く唸る。
イレアを守るように。
その場に、立つ。
背中合わせ。
ヴェスピナ。
ネクトリア。
食材。
そして、その中心に――イレア。
囲まれる。
無数の影に。
逃げ場は、ない。
完全な――包囲。
絶体絶命。
その瞬間。
一斉に。
蜘蛛たちが――跳んだ。
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