表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/60

枯渇

巨大蜘蛛と激闘する二人をよそに――


薄暗い通路。


ズル……ズル……


小さな少女が、巨大な七面鳥を引きずっていた。


「お……重い……」


息が上がる。


腕が震える。


それでも――離さない。


「食材……」


ようやく。


安全な場所まで運びきる。


ネクトリアは、その場に膝をついた。


「きっと大丈夫だからね」


優しく、語りかける。


「お母さんも、みんなも……きっと大丈夫」


一度、言葉が詰まる。


それでも――


顔を上げる。


「お姉ちゃん……じゃなくて」


小さく、首を振る。


「私たちが、きっと助けるから!」


グェ……


弱々しい返事。


ネクトリアは、微笑んだ。


少しだけ慣れた手つきで。


リンゴを、生み出す。


淡い光。


小さな奇跡。


「これ食べて!」


必死に差し出す。


「少しでも元気になるかもしれない!」


そっと、口元へ運ぶ。


「ここで待っててね」


ぎゅっと、拳を握る。


「必ず戻ってくるから!」


グェェ……


食材は、ゆっくりとリンゴを頬張った。


その瞬間――


柔らかな光が、全身を包む。


じんわりと。


命が、灯る。


少しずつ。


本当に、少しずつ。


その目に――光が戻っていく。


一方。


闘技場では――


激しい金属音が、鳴り響いていた。


イレアは、静かに魔力を練る。


無数の魔力球。


それが――刃へと変わる。


細く。


鋭く。


無数に。


次の瞬間。


それらが、解き放たれた。


嵐。


毒を纏ったナイフ。


数百。


数千。


アルジュラの関節へ――


絶え間なく、突き刺さる。


「相変わらず……なんつー数だ……」


ヴェスピナが、呟く。


驚愕。


それほどの量。


ヴェスピナの武装。


ノクス・ヴァリア。


巨大な、一撃の武器。


だが――


イレアは違う。


小さな刃。


軽い一撃。


魔力消費は、極小。


だからこそ――


数が、違う。


一撃の重みを捨て。


猛毒で、蝕む。


削る。


奪う。


血と毒が、混ざり合う。


アルジュラが、怯む。


「効いてるぞ!!」


ヴェスピナが叫ぶ。


動きが、鈍る。


確かに。


だが――


イレアの呼吸が、乱れていた。


荒い。


浅い。


止まらない放出。


削られていくのは――


魔力。


そして、命。


「どんだけ……タフなんだよ……!!」


ヴェスピナの声に、焦りが混じる。


終わらない。


削りきれない。


その時。


八つの目が――


向きを変えた。


ギロリ、と。


狙いは。


イレア。


「――ッ!!」


巨大な脚が、動く。


一直線。


「どこ見てんだよ!!」


ヴェスピナが、割り込む。


盾が、変形する。


無数の槍。


脚へ、突き立てる。


だが――


浅い。


硬すぎる。


止まらない。


アルジュラは――進む。


イレアへ。


イレアは、目を閉じた。


覚悟。


迷いは、ない。


「お二方……後は、お願いします……!」


その瞬間。


閃光。


白銀の光が――走った。


弾ける。


反射する。


傷口へ。


追撃。


無数の一撃。


「イレア!!逃げて!!」


ネクトリアの声。


だが――


遅い。


イレアは、膝をついていた。


全てを、出し切った。


指一本、動かない。


顔を上げることすら、できない。


そして――


影が、落ちる。


巨大な脚。


振り下ろされる。


その一瞬。


静寂。


そして――


ズゴォォォォン!!


爆音。


衝撃。


アルジュラの巨体が――


イレアごと。


闘技場の壁を、打ち抜いた。


「イレアーーー!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ