スティングスウォーム
ネクトリアは、食材を必死に抱えた。
そのまま――
闘技場の外へ、駆け出す。
背後では。
轟音。
巨大な影が、迫る。
次の瞬間――
ドォン!!!
巨大蜘蛛アルジュラの脚が、叩きつけられた。
だが。
それを――
ヴェスピナが、正面から受け止めていた。
背後には。
ネクトリアと、食材。
石の床が、砕け散る。
「くっ……!」
歯を食いしばる。
その一瞬の隙を――
イレアは、見逃さない。
後方から、飛び込む。
ナイフが閃く。
刃には――魔力の毒。
脚へ。
腹部へ。
だが――
カンッ!!
弾かれた。
「硬い……!」
外骨格。
まるで、鎧。
分厚く。
重い。
ヴェスピナが、叫ぶ。
「関節を狙え!!」
イレアは――迷わない。
即座に、理解する。
蜘蛛の脚。
その“節”。
そこへ――
ナイフを、叩き込む。
だが。
浅い。
巨体すぎる。
毒の回りも、遅い。
「足は八つある!!」
ヴェスピナが、さらに叫ぶ。
迫る脚を、盾で受け止めながら。
「関節を全部狙え!!!」
重い一撃。
踏み込まれるたびに、地面が軋む。
その中で――
イレアが、止まった。
ほんの、一瞬。
そして。
静かに――後方へ下がる。
両手を、交差させる。
腰に添える。
構え。
それを見て――
ヴェスピナが叫ぶ。
「頼むから巻き込むんじゃねぇぞ!!」
理解している。
何が来るのか。
完全に。
イレアは、淡々と答えた。
「ご安心を」
次の瞬間。
空気が、変わる。
禍々しい紫色の魔力が――溢れ出した。
体の周囲に。
ポコポコと。
泡のように、浮かび上がる。
それは。
次第に――形を変えていく。
細く。
鋭く。
無数に。
イレアが、呟く。
「掃除の時間です……」
一拍。
静寂。
そして――
「武装顕現」
魔力が、弾けた。
「……スティングスウォーム」




