鍵
螺旋階段を、小さな影が駆け上がる。
ネクトリアだ。
息を切らしながら、部屋を一つずつ調べていく。
「鍵が……どこかにあるはず……!」
焦りが、声に滲む。
「食材ママ……待ってて!」
扉を開ける。
違う。
また開ける。
違う。
何度も、何度も繰り返す。
だが――
次の扉は、重かった。
硬い鉄の扉。
ネクトリアの力では、簡単には開かない。
「……っ!」
体重をかける。
ゆっくりと。
ギギギ……と音を立てながら、扉が開いていく。
そして――
その中にいたのは。
見慣れた女性。
拘束されている。
「イ……イレア!?」
「ネクトリアお嬢様……申し訳ありません……」
弱々しい声。
だが、生きている。
「待って!!今、解くから!!」
ネクトリアは、必死に拘束を解いていく。
幸い。
致命的な外傷はなかった。
首への一撃のみ。
「ヴェスピナ様は……ご一緒ではないのですか?」
イレアが問う。
「お姉ちゃんは、イレアを探しに行ったっきり……」
ネクトリアの声に、不安が混じる。
「では……恐らく」
イレアの表情が、引き締まる。
「最下層の闘技場に向かわれたはず……」
「闘技場……?」
「この施設の最下層に、巨大な闘技場があります」
淡々とした説明。
だが、その内容は重い。
「お嬢様達の知る鳥が、そこで戦っておりました」
一瞬の間。
「恐らく……もう……」
その言葉を、ネクトリアが遮る。
「食材は生きてる!!」
強く。
はっきりと。
「お母さんが、諦めてなかったから!!」
その瞳に、迷いはない。
「お母……」
イレアは、理解する。
あの巨大な七面鳥。
それが――母親。
「恐らくヴェスピナ様は、その鳥をお助けになるかと……」
冷静に、状況を整理する。
「そして、そのまま闘技に巻き込まれている可能性が高いと思われます」
「お姉ちゃんなら大丈夫!」
ネクトリアが言い切る。
「とにかく、早く逃げよう!」
だが――
「お待ちください」
イレアが制止する。
差し出されたのは。
大きな鍵束。
「これ……!!」
「私に一撃を加えた者から、頂いておきました」
静かに言う。
「ネクトリア様は、上層へ向かってください」
「イレアは……?」
ネクトリアの問い。
その答えは――
迷いがなかった。
「私は、闘技に参加致します」
「え……?」
一瞬、思考が止まる。
「他にも、捕らえられている者が居るやもしれません」
イレアの瞳は、揺れない。
「ネクトリア様は、道中にてそれらの救出をお願いいたします」
役割分担。
明確な判断。
「私とヴェスピナ様で、時間を稼ぎます」
静かに。
だが、確固たる意志で。
ネクトリアは――
ほんの一瞬、迷う。
そして。
「……わかった」
頷いた。




