一瞬
鉄格子が、再び開く。
ズル……ズル……
重い音とともに、姿を現したのは――
巨大な、蛇の魔獣。
「さあ次の試合は!!」
屋台の男が、大声で叫ぶ。
「突如現れた少女VS巨大蛇!!」
観客がざわめく。
「これは一瞬で終わってしまいそうだ!!」
「掛けるならお早めに!!」
だが――
ヴェスピナは、動かない。
ただ。
静かに、呟いた。
「あぁ……」
その目に、怒りが宿る。
「一瞬だろうな」
空気が、震えた。
次の瞬間。
ヴェスピナの手に――
漆黒の槍が、顕現する。
蛇が、口を開く。
襲いかかる。
そして――
ズシャァァ!!
終わった。
一瞬。
ただ、それだけ。
闘技場の壁。
そこに――
巨大な蛇が、叩きつけられていた。
まるで、醜い旗のように。
ヴェスピナの槍。
それが、蛇を串刺しにしている。
観客席が、ざわめいた。
「お……おい」
「今の槍……」
一人が、震える声で呟く。
「いや……ないだろ」
別の男が言う。
「こんなとこにいるわけが……」
そして――
誰かが、叫んだ。
「間違いない!!」
「焔蜂のヴェスピナだ!!!」
その瞬間。
観客席は、大混乱に陥った。
金袋を抱え、逃げ出す者。
椅子が倒れる。
悲鳴。
だが――
屋台の男は、笑っていた。
狂ったような笑顔で。
「皆さん!!落ち着いてください!!」
そして、叫ぶ。
「次の相手はなんと!!」
鉄格子が、次々と開く。
「魔獣7体VS鳥と少女!!」
「7体……!?」
観客の一人が、呟く。
「やりすぎだろ……」
別の男が言う。
だが――
誰かが、小さく笑った。
「いや……相手はヴェスピナだぞ」
「それくらいしないと」
重い音が、連続して響く。
鉄格子が、すべて開く。
闘技場へと、魔獣たちが姿を現す。
だが。
ヴェスピナは、動かない。
ただ――
倒れた食材の前に、立つ。
守るように。
そして。
再び、その手に――
漆黒の槍が、顕現した。




