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痕跡

月明かりが真上から照らす中。


王城の地下、石造りの独房にひとつの影が差し込んだ。


イレアである。


昼間、祭りの屋台から連行された山岳種の七面鳥が収容されていた場所だ。


独房の中には、すでにその姿はなく、

散らばった餌だけが残されていた。


餌の乾燥具合から見て、失踪からすでに数時間は経過している。


イレアは感情を表さない。

ただ静かに視線を落とし、石床を観察する。


四本指の深い足跡。


七面鳥のものだ。


足跡は独房の奥から廊下へ続いている。

暴れた形跡はない。


脱走というより――

明確な目的地を目指した足跡だった。


イレアは足跡を追い、地下通路を抜ける。


やがてそれは広場の大門へと続いていた。


城壁を越え、彼女は足を止める。


そこから先の地面には、さらに多くの痕跡があった。


七面鳥の足跡。


一羽ではない。


十。

いや、それ以上。


群れだ。


城門の外から仲間が現れ、例の七面鳥を呼び寄せた。

そう考えるのが自然だった。


イレアは迷わない。


その足跡を辿り、外へ出る。


街道を離れ、森を抜け、次第に標高が上がっていく。


七面鳥の足跡は、はっきりと山の方向へ続いていた。


夜風が強くなる。

岩肌が露出し、足場は険しくなる。


やがて――


視界が開けた。


山岳地帯の盆地。


その中央に、異様なものが立っていた。


巨大な柱。

張り巡らされた綱。

風に揺れる色鮮やかな布。


巨大なテント。


静まり返った山中に、場違いなほどの大きさだった。


そして地面には――

無数の七面鳥の足跡。


群れは、確かにここへ来ている。


イレアは岩陰に身を潜めた。


表情は変わらない。

ただ任務として、その奇妙な施設を観察する。


王城の独房から消えた一羽の七面鳥。


その足跡の終点は――


山中に隠された巨大なサーカスだった。

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