不満
そして――
本戦。
予選とは異なり、
選手達の防具に焔晶は取り付けられていない。
勝敗を決めるのは――
舞台の両端。
それぞれの陣地に設置された、
中規模の《焔晶》。
三人でこれを守りながら――
相手の焔晶を破壊する。
それだけ。
どれだけ傷を負おうと。
どれだけ吹き飛ばされようと。
背後の焔晶さえ残っていれば――
負けではない。
そして。
記念すべき第一試合。
舞台の片側へ現れたのは――
ウェラ。
ドルフ。
オルク。
海の彼方からやって来た、
海洋性の魔物達。
対するは――
ベレッタ=バレル。
レミントン=マスカ。
ルガー=ピスティ。
強靭な外骨格を持ち――
銃火器の扱いに長けた、
アリの魔物達。
「両チーム――構え!!」
海の魔物達が散開する。
アリ達も――
それぞれの銃を構えた。
「第一試合――」
静寂。
「始めッ!!」
――キィィィィィン。
「…………!」
開始と同時。
甲高い音が――
闘技場を貫いた。
「なんだこれ!!うるせぇ!」
観客席のヴェスピナが、
思わず耳を塞ぐ。
しかし――
魚達が狙ったのは、
アリではない。
ビリビリビリ……!
「おい、見ろ!!」
アリ達の背後。
守るべき焔晶が――
小刻みに震えていた。
「なるほど」
ヴェスタスが目を細める。
「直接、焔晶を振動させているのか」
焔晶は――
振動によって熱を生む。
そして。
許容量を超えれば――
砕ける。
「選手を倒す必要すらないんだ…」
ヴェスヴィが笑う。
「考えたな、あいつら」
「…………」
ヴェスピナだけが――
不満そうだった。
「殴れよ」
「そういう競技ではない」
「喧嘩祭りだぞ!?」
「お前が勝手にそう呼んでいるだけだ」
「遠くからピーピーやってねぇで殴れよ!!」
「黙って見ていろ」
舞台では――
銃声が響いた。
ダァン!!
音の波が途切れる。
ウェラが身を翻した。
その横を――
弾丸が抜けていく。
だが。
次の瞬間。
別方向から――
ダァン!!
「っ!」
ドルフの足元が弾けた。
「…………」
ヴェスタスの目が細くなる。
一発目。
魚達の攻撃を止める。
二発目。
退路を限定する。
そして――
三発目。
ダァン!!
逃げた先へ、
既に弾丸が飛んでいる。
「…………違う」
ヴェスタスが呟いた。
「なんだよ兄貴?」
「三人で撃っているのではない」
ベレッタが前へ。
レミントンが側面へ。
ルガーが後方から――
二人を援護する。
一匹が動けば。
残る二匹が――
その動きを補う。
誰かが指示を出している様子はない。
だが――
三人の動きには、
一切の迷いがなかった。
「三人で――一つの戦いをしている」
「…………」
ヴェスピナが、
僅かに目を細めた。
キィィィィン!!
再び――
強烈な音。
アリ陣営の焔晶が激しく震える。
だが。
「ベレッタ!!」
「分かってる!!」
巨大な装甲に取り付けられた巨大な狙撃銃
ダァン!!
遠距離からの一発。
対象の陣形が崩れる。
「ルガー!」
「はいはい!」
素早く退路を塞ぐ
さらに…
ダァン!!
二発。
追い込む。
そして――
「レミントン!!」
「わかっています」
背後から散弾銃を向けられる
そして
巨大な狙撃銃の銃口が向いた先は――
敵ではない。
その背後。
守るべき焔晶。
「――終わり」
ダァン!!
一発の弾丸が――
一直線に舞台を駆け抜けた。
パキッ。
「…………!」
焔晶に亀裂が走る。
そして――
パァン!!!
粉々に砕け散った。
「勝負あり!!!」
ワァァァァァァァァァァッ!!!
闘技場が――
歓声に包まれる。
勝者。
ベレッタ=バレル。
レミントン=マスカ。
ルガー=ピスティ。
アリの魔物チーム。
「…………見事だ」
ヴェスタスが静かに呟く。
「個々の判断が速い」
「互いの役割も理解している」
「誰か一人が突出するのではなく――」
「三人全員で、相手を追い込んだ」
その顔には――
明らかな関心が浮かんでいた。
「…………」
一方。
ヴェスピナは腕を組んでいた。
「…………気に入らねぇ」
「何がだ?」
「一発も殴ってねぇ」
「そこか」
「喧嘩祭りだぞ!?」
ヴェスヴィが肩をすくめる。
「別にルール違反してないからいいだろ」
「よくねぇ!!」
「何が不満なんだよ」
ヴェスピナは――
舞台のアリ達を指差した。
「次ウチらと当たったら――」
ニッ。
「銃撃つ暇なくなるくらい、
近くで殴ってやる!!」
「お前は少し戦術というものを学べ」
「うるせぇ筋肉!!」
「あんたがソレ言うんだ…」




