乱闘
それから――
一ヶ月後。
ワァァァァァァァァァァッ!!!
焔蜂国家ネクトフラム。
城下町に設けられた闘技場は――
凄まじい熱気に包まれていた。
観客席を埋め尽くす、
大勢の観客。
通路には――
ずらりと並んだ屋台。
肉を焼く匂い。
甘い蜜菓子。
酒。
見たこともない異国の料理。
「こっち焼けたぞー!」
「蜜酒二つ!!」
「おい!!予選終わっちまうぞ!!」
そこにはもう――
かつてヴェスピナが思いつきで口にした、
『祭りしようぜ!』
などという規模の面影はなかった。
周辺諸国からも、
大勢の魔物達が集まっている。
そして――
闘技場の中央。
ドゴォォォン!!!
「ぐあっ!!」
一匹の選手が、
地面を転がった。
その身体には――
防具。
そして胸元には、
赤く輝く《焔晶》。
当初。
ヴェスピナは武器に焔晶を取り付け、
殴り合うつもりだった。
しかし――
実際に採用されたのは防具。
攻撃を受ける。
衝撃が加わる。
焔晶が振動する。
そして――
熱が生まれる。
殴られれば殴られるほど――
熱くなる。
ただし。
当然――
限界はある。
「うぉぉぉぉぉ!!!」
ドゴォン!!!
拳が防具へ直撃する。
その瞬間――
パキッ。
「…………あ」
パァン!!
胸元の焔晶が――
粉々に砕け散った。
「一名脱落!!!」
ワァァァァァァァ!!!
砕けた選手は――
即座に退場。
三人一組。
三人全員の焔晶が砕けた時点で――
そのチームは予選敗退となる。
そして。
最後まで生き残った――
五チーム。
その者達だけが、
本戦へ進むことができる。
長い予選を終え――
闘技場には、
五つのチームが残っていた。
まず――
ヴェスピナ。
ヴェスタス。
ヴェスヴィ。
「っしゃあ!!」
「当然だ」
「結構楽しいな、これ」
スズメバチ三兄弟。
ネクトフラムからも、
多くの兵士達が参加していた。
しかし――
決勝まで残った者は。
この三匹を除いて――
一人もいなかった。
そして。
彼女達を取り囲む――
残る四組。
海の彼方から来たのであろう――
海の魔物達。
硬い外殻を持つ――
アリの魔物達。
鋭い爪と鱗に覆われた――
爬虫類の魔物達。
そして――
「…………」
ヴェスピナが目を細めた。
最後の一組。
三人。
背丈も。
顔立ちも。
纏う雰囲気さえも――
まるで同じ。
三つ子と見紛うほど、
そっくりな魔物達。
「…………なんだ、あいつら」
ヴェスタスも、
静かに三人を見つめていた。
一ヶ月前。
『三人一組』
『武器あり』
『魔力あり』
『いっぱい殴る』
『いっぱい熱出る』
『国あったかい』
『優勝したらなんかやる』
たった七行から始まった――
ネクトフラム初の喧嘩祭り。
その本戦が――
今、始まろうとしていた。




