即答
「アピス様」
「…………」
執務室。
書類に目を通していたアピスが、
ゆっくりと顔を上げる。
そこには――
ヴェスピナ。
ヴェスタス。
ヴェスヴィ。
スズメバチが横一列に揃って立っていた。
「…………」
アピスは扇を置いた。
「何ですか、お揃いで……」
嫌な予感しかしない。
「姉貴!!」
ヴェスピナが、
勢いよく机へ身を乗り出す。
「面白いこと考えたぞ!!」
「却下します」
「早ぇよ!!!」
「聞くだけ聞いてくれって!!!」
「嫌ですわ」
「なんでだよ!!」
「あなた方三匹が揃って持ってくる“面白いこと”に、
良い思い出がありませんの」
「今回はマジですげぇから!!」
「…………」
アピスは三匹を見る。
ヴェスピナ。
目が輝いている。
ヴェスタス。
妙に真剣。
ヴェスヴィ。
何故かちょっと楽しそう。
「…………はぁ」
深いため息。
「聞くだけですわよ」
「よっしゃ!!」
ヴェスピナが一枚の紙を取り出した。
「これ見てくれよ!!」
バンッ!!
机の上へ叩きつける。
『三人一組』
『武器あり』
『魔力あり』
『いっぱい殴る』
『いっぱい熱出る』
『国あったかい』
『優勝したらなんかやる』
「…………」
アピスは紙を見た。
「…………」
もう一度見た。
「…………」
ヴェスピナを見る。
「どうだ!?」
「却下です」
「そんなー!!!」
即答だった。
「なぜ国家行事の企画書が七行で終わっていますの!?」
「分かりやすいだろ!?」
「最後の一行すら決まっていませんわ!!」
「そこはこれから考える!!」
「考えてから持ってきなさい!!」
「姉貴ぃぃぃ!!」
「…………」
その様子を見ていたヴェスヴィが、
頭を掻いた。
「なぁ、アピス」
「なんですの」
「これさ」
ヴェスヴィが企画書を指差す。
「周辺諸国にも声かけたらどうよ?」
「…………」
アピスの扇が止まった。
「ここいらを牛耳ってたアタシら三匹と戦って――」
「勝ったら賞金」
「…………」
「ついでに出店も出す」
「…………」
「外国から客呼んで、飯とか土産とか売れば儲かるじゃん」
「…………」
「訓練兵達も参加させりゃ、実戦形式の訓練にもなるし」
「…………」
「焔晶に魔力ぶつけまくるんだから、越冬用の熱も作れる」
「…………」
部屋が――
静かになった。
アピスは、
ゆっくりと企画書へ視線を戻した。
『三人一組』
『武器あり』
『魔力あり』
『いっぱい殴る』
『いっぱい熱出る』
『国あったかい』
『優勝したらなんかやる』
「…………」
扇が――
パチン。
閉じられた。
「ヴェスピナ」
「ん?」
「すぐに屋台の用意を始めなさい」
「屋台かよ!!!」
「ヴェスヴィ」
「ん?」
「周辺諸国への招待状を」
「おう」
「ヴェスタス」
「なんだ」
「競技規則と安全基準を作成なさい」
「承知した」
「姉貴!?」
アピスは立ち上がった。
「賞金を用意します」
「商人にも声を掛けます」
「宿泊施設の確保も必要ですわね」
「観戦席も増設しましょう」
「国外からの入場料は――」
「ちょっと待て!!!」
ヴェスピナが机を叩いた。
「さっき却下したじゃねぇか!!」
「気が変わりました」
「早すぎんだろ!!」
「祭りをしたいのでしょう?」
「したいけどよ!!」
「ならば問題ありませんわ」
アピスは――
にっこりと微笑んだ。
「盛大に稼ぎましょう」
「目的変わってんじゃねぇか!!!」




