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7.特定


 で、とうとう文化祭前日。

 この学校では文化祭の3日前からちゃんとした授業は午前のみだ。

 午後は全て文化祭の準備に当てられる。


 我が演劇部では幸いにも前々から準備していたおかげで、他の部よりも少し早く帰ることが出来るようになっていた。


 たぶん、今日もすぐに帰れるだろう。

 そう思いつつ、上靴を出そうとすると後ろから声がかかった。


「よっ、主演女優!」


 ……元くんだ。

 元くんは近づいてきて靴箱の中のあたしの靴を人差し指と中指で2度弾く。


「……今日も入ってたか?」

「何がよ?」

「カミソリ次郎」

「駄菓子みたいな言い方やめてよ笑うから。……たぶん、入ってると思う」


 朝も帰りも。あれから日によっては二度入っている手紙や、剃刀。

 ……以前、元くんがぶちギレたときの手紙。あの内容は結局次の日話題にすら出なかったし出さなかった。でも、結局あとで言った気もする。もっとことが大きくなってから。


「そうかい」


 そう言いながら元くんは鞄からビニール袋を取り出す……それを見て気付いた。

 指先に絆創膏が張ってある。その周りにも切り傷のようなものが見え隠れしていた。


「……どうしたのそれ?」

「は? ……ああ」


 元くんはへらへらと笑いながら絆創膏だらけの指をプラプラと振り回す。


「いや、最近大道具係の手伝いばっかしてたからな! 気がついたら木材で手ぇ切ったりして。んーでも一生懸命仕事して傷がつくのって気持ち良いよな。満足感があるっていうか頑張った証っていうかそういう」

「……ねえ」


 あたしは口を開いた。もしかして、それってさ……


「……ああ、入ってるな」


 元くんは何も言わず、ビニール袋を開いてその上であたしの靴をひっくり返した。

 ……やっぱり4本の刃。


「あー少し待ってろー、さっきもちょうど大道具のを手伝ってきたんだよ、そこで出たゴミがあるからさ。今一緒に捨ててき……」

「待って」


 あたしは元くんの袖を掴んだ。


「おいおい、何だ? あんまり学校で引っ付くなって、恥ずかしいでしょうが!」

「ねえ、その袋、見せて」

「…………。」


 元くんは少し考え、やがてため息をついた。


「……どうしてもか?」

「どうしても」

「俺が嫌って言っても?」


 ――さすがに。


「嫌って言っても!」

「……わかった」


 ――あたしだって、ひかないときはある。


 彼はつっけんどんに袋をこちらへ差し出した。

 ……彼のこういうところが好きだ。

 普段ふざけてる時は屁理屈ばっかり捏ねてるのに、真面目な時は驚くほど潔い。

 あたしは袋を覗き込むと、剃刀の刃を数えた。


 1、2、3、4……5本。明らかにさっきより1本増えている。


「…………。」

「ははっ、空港の薬物検査員みたいな目してんな」

「黙って」


 そして、あたしのところには今日は何も手紙のようなものはなかったはずなのに、そこには思い切りぐしゃぐしゃに丸められた紙切れがあった。


 この間の手紙で元くんの靴箱にも手紙が入っている様子なのは知っている。

 そしてそれには、やはりあたしの時と同じ、赤い文字が書かれているのが解った。


「……で」

「はい」


 少しジト目で睨むと、さすがに気まずそうな顔をした。

 ……うん、これがうちの犬だったなら尻尾を巻いているに違いない。そんな元くんに、あたしは呆れながら呟く。


「何か言うこ……」

「悪かった」

「早い」


 とん、と腹筋の辺りをツッコミがてら軽く叩いた。元くんは苦笑する。


「……もったいつけろって?」

「そういうことじゃなくて」

「うん、悪い。心配させたくなかった」

「その絆創膏もコレかな?」

「ああそうですとも」


 本当に潔い。バレちゃあしょうがないと腹をくくったみたいだ。


「……時々入ってんだよ、カミソリ次郎。俺の靴にもさ」


 元くんは袋の中で刃に紛れて見え隠れしているものを指差した。

 ……よく見ると漫画キャラの顔だ。


「……そんでもって何故か一緒にキャラモノの絆創膏が入ってる。可愛らしい絆創膏入れとくぐらいならこんなもん入れるなよと」

「まあ紙一重らしいから、そういう感情って」


 好きの反対は無関心。……嫌いの反対も、無関心。つまりはそういうことだ。

 どちらであれ、向こうは元くんに関心を向けている。

 そして多分あたしの方にも――多少は。変なものに絡まれちゃったものだなと思いつつ、あたしは袋を突き返した。元くんは苦笑いしながら受け取る。


「だろうねえ。これ、あれだよな。……俺にターゲットきてるよな?」

「どういう意味で?」

「よくあるらしき、谷川先輩奪取計画じゃなくて、俺奪取計画だってこと」


 ああ、そう。……よーおモテになるようで?


「犯人は犬飼くん大好き派閥と」

「俺もモテますからねえ?」

「それ彼女の前でいう台詞?」

「危機感持ってほしいなと」

「ないように見える?」


 ふっ、と笑いながら元くんはいう。


「勿論。死ぬほどないな、あんた慣れすぎてんだよ、嫉妬の目線に」


 それはちょっと違う。まあそれも今から思えば、なんだけど。

 ……「知らなかった」、という方が正しいのだ。


「……嫉妬ね。手紙、見て良い?」

「ああ、気をつけろよ」


 だって元くんと知り合ってからあたしは、ようやくそれに近い感情をおぼえた。いかにそれまで友達の延長線上だっただろう、とにかく元くんに対する感情の抱き方は何かが違う。スッとハマるというか。パズルが噛み合うというか……

 紙切れを取り出し、開き、しわを伸ばす。



  ――別れないなら、始末してやる。

  ――どうせ最後のお祭りだもの。ぱーっとやらないと。



 短い文面だった。こっちの靴箱に入っているものもそうだけど、長いときもあれば短いときもあるそれ。


 最後のお祭り……最後の文化祭。



「……やっぱこの人、3年生だ」

「あ、やっぱ薄々わかるか!  そうそう、多分そっちの同級生だろ」

「いつからきてるの?」

「夏ぐらいからだ。こんなのが来たのは」

「夏ぐらいから?」


 頭の中に何かが引っかかる。

 ……そうだ。何か、その時期に疑問に思ったことがあったはずだ。

 なんだったっけ。


「なんか反応みたいなのは返した?」

「誰に?」

「相手に」

「めんどくせぇじゃん」


 元くんは吐き捨てるように言う。


「相手にできっか、無視だ無視! と、最初は思ったんだが……」

「思ったんだが?」

「お前まで狙われてるって知った時は、なんていうかね……頭来たっていうか爆発したっていうか……まあ、あれだけだ」

「あれだけ?」

「靴箱で騒いだろ」



  ――「……顔みせろよ、卑怯者!!」



 ああ、あれか。


「誰がやった、って。多分そんくらいで。あとはそうだな……探そうとした」

「探そうと?」

「俺の靴箱だったり、あんたの靴箱だったり、とにかく暇があるときは張り込んだ。隠れ鬼ってか、最早いたちごっこだな。怪しいと思った3年を追っかけ回したり、一時期は落合なんかも怪しいかなと探ってみたり」

「落合くんはないでしょ」

「ああ、なかった」


 ゼロ、と指を丸くしながら元くんは言った。


「探れば探るほど黒よりも、むしろ白っぽかったあいつ。何も出やしない」

「あと彼1年だし」

「文章は女性くさいしなこれ。いや、文体なんて意識一つでコロッと変わるんだが……とにかく、怪しいのは幾らかいるんだが、確たる証拠がない」


 だから捕まえられなくてさあ。

 そういう元くんには少し、ヘトヘトな様子が見て取れた。


「全く――最初はほっといたらなくなると思ったんだけどなぁ」

「一過性じゃなかったわけだ」

「そう」


 さすがにロッカー前でずっとうだうだしているわけにもいかない。混んできた。昇降口に移動しながら元くんは言う。


「段々イタズラも激化してくるし、書いてる文言も3回に2回は物騒だ。……嫌がらせってより脅しとか恐喝のレベルだろこれ」

「あたしと別れろって?」

「ああ、文面は回りくどいけど……ほらたまにあるだろ? 国語の読解問題。『この文を通して筆者は何を伝えたいのか、25字以内で答えよ』! あれに『別れてくださいお願いします、でないと呪うよベイベ!』って書きたいくらいにはなんか、アレなノリだ」

「……アレなノリなのはわかったけど、文字数埋めるのにベイベはどうかと思う」


 すれ違う。何人もの同級生が追い越していく。階段を昇るごとに1年生が消え、元くんと同じ2年生が消えて……まるで濾されるように3年生が身の回りに残っていく。

 当たり前だ、だって最上階に教室があるのはあたしたち、3年生の学年だけで……。


「まあともかくだ」


 わざわざ教室前まで送り届けてくれているらしい元くんは、コホンと咳払いした。


「最近じゃ俺の家まで消印無しの手紙が届いてる。ありゃ家に直接来てるみたいだな。どこから住所漏れたんだかね」

「……元くんの家族とかは知ってる?」

「誰も言ってねぇよ? 気付いたのは俺だけ。……朝のポスト確認はいつも俺の担当だから、充分もみ消し可能だ」

「じゃあ……」


 思わず立ち止まり、口ごもる。先が見えた気がしたからだ。……だって普段ならこの子、階段でさらりと別れる。「いつでも絡めるだろ」とでも言うような感じに。

 だから3年生の教室前まで来ることなんてほとんどない。ここまで来ていることがまずおかしいのだ。


 ……元くんはきっと、次の瞬間。こう言うに違いない。


「兄貴とかはお前のこと気に入ってるみたいだから『遊びに来い』って煩いだろうけどね、ユキ先輩。……暫くは俺んちにくるのは避けといた方が良いだろうな。これ以上面倒なことになったら大変だ」


 ……やっぱり。

 あたしは思わず小さく息をついた。


「お? ご不満でも?」

「……一応は彼女だよ、あたし?」


 嫌だと言えたら、どんなにマシか。


「不満に決まってるじゃん?」


 それでもあたしはグッと言葉を飲み込んでしまう。

 不満だと軽口を叩く。そこまでならできる。でもそれ以上は……なぜかできない。

 かつて言われたその言葉が頭によぎる。



  ――「誰とでも馴染む、間をつめられる。あんたは意識的にも無意識的にも寂しがりで、かつ我が強いほうでもない。そいつの望む人間になっちまうんだな」


  ――「相手が一番好みそうな相手を知る。無意識に真似る。そうして全部知り尽くして……相手の好みの人間にパーフェクトに化けたとき」



 ……望む人間に、化けてしまう。

 そうして全部を真似てしまったら、あたしは。



  ――「あんたは満足してしまう」



 元くんを、もう好きじゃなくなるのだろうか?

 こんなに違いを感じているのに? 今までのその場しのぎの恋と、何かが違う……そう思うのに。


「……行けないんだ」

「行けない」

「元くん家、暫く」

「うん」

「遊びにも」


 元くんはさも当然というノリで言った。


「来んな」


 ……あの、人相の悪い笑顔で。


「…………。」

「…………。」


 うん。なんか、その雰囲気ぶち壊しな顔でちょっと頭が冷静になってきたわ。悲しみとかうやむやになったというか消し飛んだ。

 ……安心させようとしてますかそれ? 逆に不気味なんですけど?


「……残念だなー」

「用もないのに来るからなあユキ先輩ー」

「いや、昨日もねー? 行こうと思ったんだよー?」

「昨日?」


 元くんの表情が少し変わった。若干心配そうな表情だ。

 ああ、うん。……そうだね。


「……何かあったのか?」


 あたしは少し嬉しくなった。現金なものだ。――そう、彼だって、こちらを心配してないわけがない。


「いや、メールが来てね」

「メール?」

「『ユキちゃん最近こないー!』」

「……」


 やたらあたしにだけは愛想がいい元くんのお兄さん。

 その口真似だのを一時期ふざけてやっていたときがあったのだけど……そのときの低音ボイスでそっくりそのまま、「駄々っ子」のような口調を作ると元くんが目をむいた。


「『お兄ちゃん、超さみしーのぉ! 泣く、今すぐ泣くわ! 佐田クンからもらった魔法幼女枕に縋り付き!! さめざめと泣く俺! あはっ、キモいから罵って!!』」

「……」

「とかいうちょっとよく分からないメールがお兄さんから来たんだけど」

「あの、兄貴……貴様……何してるの……?」


 ……うん、わかる。あたしもあの黙々と小道具作ってたイメージと乖離しすぎてて最初あれだった。

 ああ、実はそういう性格なのあなた……?

 みたいな感じに遠い目になった。絶対あの人、気を許すとはっちゃけるタイプだ。


「いや、うん……自己申告通りにキモいから無視してどうぞ。そして佐田はいつの間に何わけの分からんグッズを進呈してくれてんの?」

「あの2人、出会いは元くん家だけど、その後イベントかなんかで偶然遭遇して、超仲良くなったんだって」


 ……元くんはゆっくりと頭を抱えた。


「あのー……確かに、両方オタクとギークの中間だけど何が何を引き寄せてんだ……? というかあいつ何でそんなわけわからんテンションなの、人の彼女に!?」

「弟にはクールなの笑えるよねー」

「いや笑えるよねーと言いますか、ドン引きだよねーと言いますか……! そりゃ、あいつもあいつで弟に嫉妬してますから、俺に塩なのは百歩譲って分かるよ!? 分かるけどなんなのそれ、俺はあいつにとって何のどういう枠なの!? 何すか、窓口? お仲間ご紹介窓口!?」


 佐田といいユキ先輩といい、人付き合いとしてはほぼ仲介(ちゅうかい)役なのにいつの間にか訳の分からんことになってるわ! 彼女にキモい絡み方されてるわ!

 ほぼ何も知らなくて寂しいんですけど! 逆に俺が嫉妬しそうなんすけど!?


 ……と、多少混乱しながらどうにか元くんは現状を絞り出した。


 まあそうだね、とあたしは息をつく。

 人間関係なんてままならないものばっかりだ。


「ともかく行かない方が良いんだね?」

「ああ。それと、メールといえば俺のメールアドレスの方も誰から聞いたのか先方は把握済みだ。この間怪文書が届いた。アドレス漏れてる」

「え」

「アドレス変えるつもりだけどな、今回ばかりは誰にも教えないぞ。もちろんお前にも漏らさない。これでどこ経由か特定する」

「えっ……でも、それじゃ……」


 さすがに寂しいよ、と言おうとすると元くんはため息をつきながら返してくる。


「だってお前アドレス知ったら絶対送ってくるだろ? メールのやり取りまで漏れてたら何がきっかけで奴をヒートアップさせるかわかんねぇよ。とにかくこれ以上あんたを傷つけたくない。……これだけは解ってくれ。奴のターゲットは俺なんだ。あんたはただ巻き込まれてるだけ」

「…………。」

「何にせよ、あいつこの文面だと文化祭で何かやらかすつもりだ。気をつけろ。俺が見てられんのは開演の準備段階までだ」

「あいつって、見当ついてるの?」

「……確証はまだない。言ったろ、尻尾を掴ませてくれないんだよ。ただそいつらしき背格好の何者かが何度か、この辺で靴箱開いてこそこそしてんのは見かけた。遠目だったから本当にそいつだったかどうかも怪しいし、追っかけたら姿を消したんだけど」


 ……そうなんだ。

 確かに3年という時点で落合くんのセンは消えた。あと、元くんも言っていたが女の子っぽい文章だ。

 更にターゲットがどちらかというと元くんという時点で、男子というのは考えづらい……いやありえないとまでは思わないけど確率は少ない。


「大体、絞れちゃいるよ。そっちもそうだろ?」

「……まあね」


 あたし同様、一応見当はついてるけど、明言するほどじゃないのか。

 元くんは言う。


「ほら、そっちの学年って……他と違って1クラス多いだろ。そのせいでユキ先輩のクラス、他の3年と場所が外れてねぇか? 他のクラスと靴箱の場所全然違うよな?」


 確かに。


「それが、わざわざ来てこそこそしてんだ、しかも掃除の時間じゃない、昼休み。何かありそうなもんだと思わない方がおかしいだろ。でも決定的な顔を見てない」


 なるほど。


「髪型も似たような奴ならいくらでもいる。……そいつだと判断する証拠にはあまりならない」

「うん」

「それで俺は試してみることにした。いつも通りだよ、()()()()みようと思ったんだ。インパクトのでかいことやっとけば、紙に書くネタがそれぐらいしかなくなると思った。……確かマジックテープの時はその辺にいたし、覚えてるよな?」


 ……頷く。それはもう異質だった。


「その日、ちょうど紙にその話が書いてあった。まるでその日の夕刊みたいに、ダイレクトにな。確信したよ……こいつは演劇部員、もしくは有志だって」


 あった。それはあたしの方にも確かにあったよ。


「演劇部なら分かるだろ。手紙を受け取って『何故私のところに?』……それで終わっちゃいけねえんだよ。確かに嫌悪感はあるさ。でもあえて相手の立場に立つ。嫌がらせする理由に思いをはせて、次の対策を打つ」

「うん」

「どうしてこんな手紙を書きだしたのか。なんでこんなことすんのか……多分こいつは自己主張したいんだよ。『ここにいるよ』、『この心に気付いて』そう言いたい。だから情報を出す」


 そうか、元くんはあれでカマかけてたんだ……


「そんで持って一応調べてみた。何度かほのめかしてるからこの手紙の主が3年生だってことはわかる。演劇部有志に立候補した奴は3年生には数えるほどしか居ない。当たり前だよな? 受験生だ。変わり者だとかよっぽど勉強嫌いなやつしかエントリーしねえだろ」


 まあ、元くんのお兄さんとかね。


「それで、俺や先輩と普段、そこそこ絡みがあるのをピックアップしようとすると……」

「いないよね?」


 あたしはすぐに言った。


「ああ、いない。……そもそも、津田先輩の知り合いだったり、後輩に頼まれて入った枠が多かったんだ」


 元くんは淡々と言う。


「そして……お前と同じクラスに、演劇部員はお前しか居ないんだよ、津田先輩、別クラスだろ?」

「うん」

「で、やっぱりあの辺で靴箱を使う人間は居なかった。これがどういうことかわかるか?」


 ……うん。


「……元くんが、見かけた人。あたしの靴箱前で何かしてた人。ここの靴箱に用事があるとして、何かあたしの靴箱にものを入れるぐらいしか思い当たらない。そういうことだよね?」


 そして多分その人は、「両方」と接点がある人間。

 ……よく話題に、出る人間。



 ……つまり。



「やっぱさ――ひとりしかいないんだよ、容疑者は」


 ――元くんが呟いた瞬間、予鈴が鳴った。

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