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第3話 おうちなら、しゃべっていい?

何枚かの書類と、ベルナールの長い注意を挟んで、ミラはその夕方、レオンの部屋へ来ることになった。


養子支援施設の玄関で、ベルナールは古い茶色の鞄をレオンに渡した。


鞄は軽かった。子ども一人が今日から暮らす荷物だと思うと、軽すぎるくらいだった。レオンは片手で受け取り、思わず持ち上げ直した。


「荷物、これだけですか」


ベルナールの目が、静かにレオンへ向いた。


「五歳の子どもが持って出られるものは、多くありません」


「あ、いや、軽くて助かるとか、そういう意味じゃなくて」


「そう聞こえました」


レオンは鞄の取っ手を両手で持ち直した。今のは完全に言い方を間違えた。最近、そればかりだ。


ミラは玄関の横に立っていた。古いが清潔なワンピースに、薄い外套を羽織っている。金髪はきちんと櫛で整えられ、青い目は落ち着いていた。初めて会った時と同じように、大人の話を邪魔しない顔をしている。


ベルナールは膝を少しかがめ、ミラの外套の襟を直した。


「ミラ。困ったことがあれば、我慢する前に言いなさい」


「はい」


「言いにくければ、紙に書いてもいい」


「はい」


「レオンさんが分からない顔をしていたら、もう一度言いなさい。この人は悪い人ではありませんが、分かっていない時があります」


レオンは横で口を開きかけたが、ベルナールに見られて閉じた。反論できるほど、自信はなかった。


ミラはレオンを見上げた。


「分かっていない時があるんですか」


「たまにだ」


ベルナールが穏やかに言った。


「たまにではありません」


「ベルナールさん、出発前に信用を削るのはやめませんか」


「必要な分だけです」


レオンが困った顔をすると、ミラは小さく首を傾げた。笑ったわけではない。ただ、少しだけ表情が動いた。


ベルナールは立ち上がり、今度はレオンへ向き直った。


「レオンさん。ミラは、手のかからない子ではありません」


「はい」


「それだけは、忘れないでください」


レオンは、すぐに返事をしなかった。


分かった顔をするには、まだ中身が足りない。けれど、軽く受け流してはいけない言葉だとは分かった。


「……覚えます」


ベルナールは少しだけ目を細めた。


「そうしてください」


ミラは自分の鞄へ手を伸ばした。


「持てます」


「いい。俺が持つ」


「自分の荷物です」


「俺の手が空いてる。工場でも物を運んでるから、これは得意な方だ」


「車の少しを作る人ですね」


「覚えてたのか」


「はい。車の全部ではありません」


「そこは強く言わなくていい」


ベルナールが、ほんの少しだけ息を吐いた。笑ったのか、呆れたのかは分からない。


レオンは帽子をかぶり直し、ミラと一緒に施設の門を出た。


町の空は夕方の色になりかけていた。戦争で焼けた古い壁の跡が、ところどころ新しい煉瓦で塞がれている。通りには仕事帰りの男たちと、買い物袋を下げた女たちがいて、馬車の車輪が石畳をこすっていた。


レオンはいつもの調子で歩き出し、すぐに足を止めた。


ミラが少し後ろにいた。


遅れているわけではない。小さな足で、きちんとついてきている。ただ、レオンの歩幅とは違う。


「遠かったら言えよ」


「遠いです」


「早いな。もう言うのか」


「言えって言いました」


「確かに」


レオンは歩く速さを落とした。ミラはそれを見てから、また隣に並んだ。並ぶといっても、レオンの肘より低いところに金髪がある。横を見るたびに、その小ささが目に入った。


しばらく歩いて、ミラが言った。


「レオンさんの家には、ほかに誰がいますか」


「誰もいない」


「大人も?」


「俺がいる」


ミラは少し考えた。


「レオンさんは、大人なんですか」


「十八だぞ。立派な大人だ」


「ベルナールさんは、分かっていない時があると言いました」


「あの人は厳しいんだ」


「デュラン工場長さんも、早まるかもしれないと言ったんですよね」


「それも聞いてたのか」


「聞こえました」


レオンは頭をかいた。味方がいない気がしてきた。


「まあ、書類では大人だ」


「書類では」


「今の言い方、少し刺さるな」


「刺すつもりはありません」


「ベルナールさんに似てるぞ」


ミラは返事をしなかった。けれど、少しだけ口元を結び直した。


公営労働者アパートは、工場から少し離れた通りの奥にあった。四角い建物が中庭を囲み、共同廊下には洗濯物が干されている。窓からは煮込みの匂いや石鹸の匂いが混ざって流れ、どこかの部屋で赤ん坊が泣いていた。


中庭に入った瞬間、二階の廊下から声が飛んだ。


「レオン、その子は誰だい」


水桶を持った女が、手すりから身を乗り出している。レオンは鞄を持ち直した。


「俺の養子だ」


中庭の空気が、一瞬止まった。


それから、洗濯場にいた女が眉を上げた。


「合法なのかい、それ」


「合法だ」


「あんたがそう言うと、余計に怪しいね」


「俺が言わなくても合法だ」


別の窓から、片腕の男が顔を出した。工場の別棟で働いている男だ。


「工場で子どもまで組み立てるようになったのか」


「んなわけあるか」


「じゃあ、どこでそんな立派なのを拾った」


「拾ってねえ。手続きした」


中庭の端で縄跳びを持っていた女の子が、ミラをじっと見ていた。レオンより少し先に口を開く。


「拾ってきたの?」


「拾ってねえ。手続きしたって言っただろ」


洗濯場の女が笑った。


「じゃあ、あんたが拾われたのね」


中庭に笑いが広がった。


いつものレオンなら、もっと軽く返せた。何か気の利いたことを言って、窓の連中を黙らせた気になったはずだ。けれど、その日はうまく言葉が出なかった。


自分がこの国に残るために、ミラを連れてきた。


それは役所へ出す書類の話で、ここにいる住民たちは知らない。知らないから、いつも通りにからかってくる。そのことが少しだけ胸に引っかかった。


レオンが黙ったせいか、洗濯場の女はミラへ顔を向けた。


「お嬢ちゃん、寒くないかい」


「大丈夫です」


「レオンの部屋は三階だよ。あいつの部屋、片づいてないだろうけど、困ったら廊下で叫びな」


「片づいてる」


「床が見えるだけで片づいてるって言う男だよ」


ミラはレオンを見上げた。


「床は見えるんですか」


「見える。ちゃんと見える」


「それは、片づいているんですか」


「味方が増えないな」


縄跳びの女の子が近づいてきた。髪を二つに結び、膝に小さな擦り傷がある。


「私はマノン。五つ。あなたも五つ?」


「はい。ミラです」


「じゃあ同じ。あっちはルル。二つだから、まだ何でも触る」


マノンが指差した先で、小さな子がこちらへよちよち歩いてきた。頬が丸く、手には木の匙を握っている。その後ろから、茶色い犬が尻尾を振りながらついてきた。


「犬はトト」


トトはミラの靴の匂いを嗅ぎ、次に鞄の方へ鼻を寄せた。ミラは少し身を引いたが、逃げなかった。


「こんにちは」


ミラが犬に言うと、トトは返事の代わりに鼻を鳴らした。


ルルがミラの外套の裾をつまもうとする。ミラは鞄を少し避け、膝をかがめた。


「これは食べません」


ルルは意味が分からないまま、うれしそうに笑った。


レオンはその様子を見て、しっかりしている、と言いかけた。言いかけて、飲み込んだ。今日はその言葉を口にするたびに、誰かに刺される日だった。


マノンがミラの顔をのぞき込む。


「明日もいる?」


ミラはすぐには答えなかった。


レオンを見て、建物を見て、それからマノンへ向き直る。


「いると思います」


「思います?」


「まだ、来たところなので」


「ふうん。じゃあ、明日いたら遊ぼう」


「はい」


ミラの返事は丁寧だった。けれど、施設で見た時より、ほんの少し声がやわらかかった。


レオンは階段へ向かった。


「行くぞ。三階だ」


「はい」


階段は狭く、木の板がところどころ軋んだ。共同廊下には夕飯の匂いが流れている。扉の隙間から裸電球の光がこぼれ、どこかの部屋で夫婦喧嘩の声がして、すぐに子どもの笑い声にかき消された。


レオンは自分の部屋の前で鍵を出した。


鍵穴に差し込む前に、少しだけためらった。


朝、工場へ行く時は何も考えなかった部屋だ。帰って寝て、飯を食って、また出ていくだけの場所だった。そこへ、今日からミラが入る。


鍵を回すと、扉が重く開いた。


部屋は狭かった。


寝台が一つ。薄い毛布が一枚。小さな机と椅子が一つ。壁際には簡易台所があり、黒ずんだ鍋が置かれている。棚には皿が二枚あったが、一枚は縁が欠けていた。窓の外には工場の煙突が見え、夕方の煙がゆっくり上がっている。


レオンは鞄を机の横に置いた。


「ここだ」


ミラは入口に立ったまま、部屋の中を見回した。


寝台を見る。椅子を見る。机を見る。鍋を見る。窓を見る。最後に、床を見る。


「ここ、ほんとにおうち?」


レオンは、部屋が狭いと言われたのだと思った。


「広くはないけど、屋根はある。雨も入らない。冬は少し寒いけど、毛布を増やせば何とかなる」


「椅子は一つです」


「俺が一人だったからな」


「寝るところも一つです」


「そこは、今から考える」


ミラはレオンを見た。


「今から?」


「今日から二人になったんだから、今日から考えるしかないだろ」


「ベルナールさんは、準備が大事だと言っていました」


「ベルナールさんは正しいことを言うな」


「レオンさんは、聞いていなかったんですか」


「聞いてた。聞いてたけど、部屋が勝手に広がるわけじゃない」


レオンは言ってから、まずいと思った。ミラの顔は変わっていない。責めているわけでも、泣きそうなわけでもない。だからこそ、何を考えているのか分かりにくかった。


レオンは頭をかき、急いで言い足した。


「いや、違う。お前の場所は作る。今はまだ何もないけど、作る。椅子も、寝るところも、荷物を置く場所も。床が見えるだけの部屋からは、少し出世する」


「床は見えています」


「そこは褒めるところだ」


「褒めるところなんですか」


「今だけはな」


ミラは部屋の中へ一歩入った。靴音が小さく鳴る。鞄の横にしゃがみ、取っ手に触れてから、また立ち上がった。


「煙突は、毎日あれくらい煙を出すんですか」


「だいたいな。朝はもっと出る」


「朝の音は大きいですか」


「工場の警笛は大きい。慣れる」


「机でごはんも食べるんですか」


「食べる」


ミラは壁際の鍋を見た。


「あの鍋、黒いです」


「使ってるからな」


「洗っても黒いですか」


「そこそこ洗ってる」


「そこそこ」


「今のは忘れろ」


ミラは忘れた様子もなく、黒い鍋を見ていた。


レオンは腕を組みかけて、やめた。思っていたよりしゃべる。施設では必要なことだけを丁寧に言う子に見えた。中庭でも大人しく返事をしていた。けれど、この部屋に入ってから、ミラの言葉は少しずつ増えている。


「……けっこうしゃべるな」


ミラの手が、鍋の縁から離れた。


「だめですか」


声は小さくなかった。けれど、さっきまでの質問とは違った。


レオンはすぐに返事をしようとして、少し遅れた。何かを間違えそうな気がした。


「だめとは言ってない」


ミラは部屋の真ん中に立ったまま、レオンを見ていた。


「おうちなら、わたし、しゃべっていい?」


レオンは最初、その意味を取り損ねた。


「ん? さっきもしゃべってたろ」


「たくさんでも?」


「たくさんって、どれくらいだ」


「聞かれてないこともです」


「聞かれてないことを言うのは、俺もよくやる」


ミラは、少しだけ考える顔をした。


「それは、いいことですか」


「場合による。工場長の前では、よくないことが多い」


「ベルナールさんの前でも?」


「かなり多い」


レオンが言うと、ミラはほんの少しだけ目を伏せた。笑う一歩手前のように見えたが、すぐにまた真面目な顔に戻る。


「うるさかったら?」


「うるさかったら、うるさいって言う」


「言うの?」


「言う。でも追い出さない」


ミラは黙った。


レオンは、自分が今どこまで分かっているのか分からなかった。ミラが何を怖がっているのか、全部を知ったわけではない。施設で何があったのかも、親のことも、戦争のことも聞いていない。


ただ、今の質問に、軽く「好きにしろ」と答えてはいけないことだけは分かった。


「しゃべりすぎたら止める。寝る時間になったら寝ろって言う。飯の時に鍋へ向かって話してたら、先に食えって言う。でも、うるさいから出ていけとは言わない」


ミラはレオンの顔を見ていた。


「ほんとに?」


「ほんとだ」


「忘れませんか」


「忘れたら、お前が言え。『追い出さないって言いました』って」


「言っていいんですか」


「それも言っていい」


部屋の外で、誰かが廊下を歩く音がした。中庭からトトの吠える声が聞こえ、すぐにマノンの叱る声が続いた。


ミラは窓の方へ目を向けた。


「さっきの犬は、トトって名前でした」


「ああ」


「でも、トトって顔じゃありません」


レオンは思わずミラを見た。


「犬に顔の名前があるのか」


「あります」


「じゃあ、何って顔だ」


「パンです」


「犬がパンって顔なのか」


「はい。焼きすぎたパンです」


レオンは中庭の方を思い出した。茶色い毛の犬が、確かに丸く焼けたパンみたいに見えなくもない。


「じゃあ、俺はレオンって顔か?」


ミラはレオンをじっと見た。


あまりに真剣に見られたので、レオンは少し背筋を伸ばした。


「少し違います」


「そこは合ってるって言えよ」


「レオンさんは、油の顔です」


「人の顔を汚れで決めるな」


「手も黒いです」


「今日は落ちなかったんだ」


「明日は落ちますか」


「明日はもっと落とす」


ミラはそこで、初めて少し笑った。


声を出して笑ったわけではない。口元がゆるみ、目の端がほんの少し下がっただけだ。それでも、レオンは見逃さなかった。施設の廊下で見た大人びた顔とは違う。


子どもの顔だった。


レオンは急に、部屋の中の足りないものが目についた。椅子が一つしかない。寝台も一つしかない。ミラの服を掛ける場所もない。子ども用の皿もない。明日の朝、工場へ行く間、ミラをどうするのかも決まっていない。


考えることが、急に山ほど出てきた。


「とりあえず、飯にするか」


「はい」


「たいしたものはないぞ」


「パンはありますか」


「ある」


「スープはありますか」


「ある」


「じゃあ、ごはんです」


「そう言ってもらえると助かる」


レオンは簡易台所で鍋を火にかけた。残っていた野菜と豆を水でのばし、硬くなりかけたパンを切る。ミラは椅子に座り、足を揃えて待っていた。


レオンは木箱を引っぱり出し、自分はそこへ腰を下ろした。


「レオンさんは椅子に座らないんですか」


「今日はお前が座れ」


「明日は?」


「明日も、たぶんお前だ」


「レオンさんは、ずっと箱ですか」


「椅子をもう一つ探す」


ミラは少し安心したように、机の端へ手を置いた。


レオンはパンを皿に乗せ、ミラの前へ置いた。ミラはすぐには食べず、部屋をもう一度見回した。寝台、机、椅子、黒い鍋、窓の外の煙突。ひとつずつ、名前をつけるように目で確かめている。


「この部屋、覚えます」


「覚えるほど広くないぞ」


「戻る場所は、覚えます」


レオンの手が、スープの皿を置く途中で少し止まった。


ミラは何でもないことのように言った。核心を話したつもりはないのかもしれない。あるいは、核心にならない形にして言ったのかもしれない。


レオンは、皿を机へ置いた。


「じゃあ、ちゃんと覚えろ」


ミラが顔を上げた。


「ここは、戻る場所ですか」


「今日からな」


ミラは返事をしなかった。


ただ、椅子に座ったまま、足を少しだけ引いた。床につかない足先が、机の下で揃う。膝の上の手が、さっきより少しだけゆるんだ。


食事が終わる頃には、外はすっかり暗くなっていた。廊下の裸電球が薄い光を落とし、窓には工場の煙突の影だけが見える。共同廊下では、誰かが水桶を運ぶ音がした。


寝る段になって、問題は予定通り出てきた。


寝台は一つしかない。


レオンは毛布を広げ、ミラの鞄を机の下へ寄せた。


「今日はお前が寝台。俺は床でいい」


ミラは寝台の端に手を置いたまま、振り返った。


「床は、おうちの人が寝るところですか」


「今日からそうなった」


「寒くないですか」


「外よりましだ」


ミラは寝台に上がり、毛布の端を両手で握った。靴を脱いだ足が、小さく揃っている。レオンは床に古い外套を敷き、壁にもたれて座った。


部屋が静かになると、かえっていろいろな音が聞こえた。隣の部屋の椅子を引く音。遠くの馬車。共同廊下で誰かが咳をする声。工場の方からは、夜番の機械の低い音がかすかに届いている。


ミラは寝台の上から、まだ部屋を見ていた。


「明日も、しゃべっていい?」


レオンは外套を肩にかけた。


「明日は朝が早いから、少しだけな」


「少しって、どれくらいですか」


「工場の警笛が鳴るまで」


「警笛はいつ鳴りますか」


「かなり早い」


「鳴ったら?」


「起きる」


「起きたら?」


「顔を洗う」


「洗ったら?」


「……寝るぞ、ミラ」


ミラは毛布を少し引き上げた。


「はい。レオンさん」


返事のあと、すぐに眠ったわけではなかった。ミラはしばらく天井を見ていた。時々、窓の方へ目を動かし、机の下の鞄を確かめる。ここにあるものを、ひとつずつ頭の中にしまっているようだった。


レオンも眠れなかった。


今日の朝まで、この部屋は一人分で足りていた。椅子も一つでよかったし、寝台も一つでよかった。黒い鍋も、欠けた皿も、床が見えているだけの片づけも、それで済んでいた。


けれど今は、寝台の端で毛布を握っている子がいる。


レオンはその小さな背中を見ながら、自分が養子を迎えたというより、一人暮らしの部屋に小さな嵐を入れたのだと思った。


その嵐は、まだ静かにしている。


けれど明日の朝、警笛が鳴れば、きっとまた質問を始める。


レオンは床の上で目を閉じた。


椅子をもう一つ探すこと。毛布を増やすこと。ミラを昼間どこに預けるか考えること。明日の朝までに何とかするには多すぎることが、頭の中で順番を待っていた。


それでも、最後に浮かんだのは、役所の名簿ではなかった。


寝台の上から聞こえた、小さな声だった。


「おうちなら、わたし、しゃべっていい?」


レオンは目を閉じたまま、もう一度だけ答えた。


「いいよ」


ミラが眠っていたのか、聞いていたのかは分からない。


ただ、毛布を握る手が、少しだけゆるんだ。


読んでくださり、ありがとうございます。全十話程度を予定しています。

レオンとミラの生活が少しずつ変わっていく様子を、気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。

よろしければ、最後までお付き合いください。

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