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拾われたのは俺の方だった  作者: Aramaki_mai
第二章 家の人になる日々
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19/23

第19話 小さな配り物

挿絵(By みてみん)

十二月の市立初等校は、朝から少し浮き立っていた。


窓には、白い紙を切った小さな飾りが貼られている。細い紙を輪にしたもの、星のように折ったもの、途中で形が崩れて花に見えるもの。どれも立派な飾りではなかったが、冬の弱い光を受けると、教室の中がいつもより明るく見えた。


教室の隅には、紙包みがいくつか置かれている。


ジュールは席に座る前から、それを見ていた。見るというより、もう半分向かっていた。


「先生、それ菓子?」


「座ってから聞きましょう」


ルノー先生は名簿を机に置き、いつもの声で言った。


ジュールは椅子に腰を下ろしたが、体の向きは紙包みの方へ残っている。


「座ったら菓子?」


「座ったら話が聞けます」


「菓子の話?」


「話を聞く前に菓子へ走らないでください」


何人かの子どもが笑った。ルシアンは机の上を先に空け、何かが置かれる場所を作っている。マノンは隣の席で、ミラの方へ少し身を寄せた。


「今日は何かもらえるって」


「うん」


「菓子だったらすぐ食べる?」


ミラは教室の隅の紙包みを見た。それから、窓に貼られた白い飾りを見た。


「食べていいものか、聞きます」


「先生に?」


「うん。返すものなら、食べたら困る」


マノンは目を丸くした。


「食べたら返せないよ」


「だから、先に聞きます」


マノンは不思議そうな顔をしたが、嫌な顔ではなかった。ミラが大事そうに言うので、それ以上は笑わなかった。


ルノー先生は黒板の前に立ち、子どもたちを見渡した。


「今日は、年内最後の授業です。明日からしばらく冬休みに入ります」


冬休み、という言葉で、教室のあちこちから小さな声が上がった。ジュールは明らかにうれしそうな顔をし、ルシアンは机の上に置いた両手を見下ろし、マノンは「お休み」と小さく繰り返した。


ミラは、すぐには声を出さなかった。


鞄の取っ手に触れようとして、今は席に座っていることを思い出したように、手を膝の上へ戻す。顔は静かだった。けれど、ルノー先生はそれを見落とさなかった。


「冬休みの間、学校は閉まります。次に来る日は、この紙に書いてあります。家の人に渡してください」


先生は机の上から小さな予定の紙を取った。ミラにはまだ全部は読めない。けれど、それが学校へ戻る日を知らせる紙だということは分かった。


ジュールが手を上げる。


「先生、休みの間、ぼくの席は誰か座る?」


「座りません」


「じゃあ、椅子も休み?」


「椅子はここにあります」


「椅子は家に帰らないの?」


「帰りません」


教室がまた少し笑った。


ミラは、そのやり取りを聞いていた。ジュールは菓子や椅子のことで騒いでいるだけだ。けれど、その騒がしさのおかげで、ミラは一人で質問しなくて済んだ。


ルノー先生は、予定の紙を一人ずつ配った。


ミラの番になると、先生は机の上に紙を置き、短く言った。


「これは家の人に見せる紙です。なくさないでください」


「家の人に見せます」


ミラは両手で紙を受け取った。


「休みが終わったら、またこの席に座りますか」


「はい。ミラさんの席は、そのままです」


「見えなくても?」


「見えなくても、あります」


ルノー先生の声は、いつも通りだった。やわらかく言い直したわけではない。けれど、必要なところをまっすぐ置く声だった。


ミラは予定の紙を見下ろした。


「先生も、戻ってきますか」


「戻ってきます」


「みんなも?」


「来る日になったら、来ます。風邪を引かなければ」


ジュールがすぐに言った。


「ぼくは引かない」


「そう言う人ほど、外で上着を脱ぎます」


「先生、見てた?」


「見ています」


ジュールは首をすくめた。教室の空気が軽くなる。ミラは予定の紙を折らないように、鞄の内側へ入れた。


その後で、ルノー先生は窓辺の紙飾りを一つずつ外した。細い紙を折って作った、小さな白い星のような飾りだ。角は揃っていない。糊の跡も少し見える。けれど、子どもの手には十分特別なものに見えた。


先生はそれを一人ずつに配っていく。


ミラは両手で受け取った。


「先生、これは持って帰るものですか」


「はい。家に持って帰ってください。ミラさんに配ったものです」


「学校のものではないんですか」


「今は、ミラさんのものです」


ミラは紙飾りを見下ろした。


自分のもの。


その言葉は、まだ少し扱いが難しい。学校で配られたものなら、学校のものに見える。先生が作ったものなら、先生のものに見える。けれど、渡された。持って帰っていいと言われた。


ミラは紙飾りの角を折らないよう、机の上にそっと置いた。


次に、小さな菓子が配られた。


薄い紙に包まれた、砂糖のついた硬い菓子だ。大きくはない。子どもの手の中に隠れるくらいのものだったが、ジュールの顔は、さっきまでの冬休みよりずっと明るくなった。


「先生、これは食べるやつ?」


「家に持って帰ってから食べてください」


「今は?」


「今は授業中です」


「授業が終わったら?」


「道で食べながら歩かないでください」


ジュールは少し考えた。


「じゃあ、家の前?」


「家の人に聞いてください」


「家の人は、たぶん食べていいって言う」


「たぶんで菓子を開けないでください」


マノンが笑い、ルシアンの口元も動いた。


ミラは菓子の包みを受け取ると、紙飾りの横に置いた。予定の紙、紙飾り、菓子。今日は、机の上に小さいものが三つも増えた。


「ミラ、食べないの?」


マノンが聞いた。


「家で聞きます」


「誰に?」


「レオンさんに」


マノンはその名前を聞くと、少し笑った。


「ミラのレオン、今日も来る?」


「来ます」


ミラはすぐ答えた。


自分でその早さに気づいて、いったん口を閉じる。けれど、言い直しはしなかった。


ルノー先生はそのやり取りを聞いていたが、何も言わなかった。ただ、ミラが紙飾りを鞄に入れる時、角が折れないように厚紙を一枚渡した。


「これに挟むと、少し持ちやすいです」


「これは、返すものですか」


「はい。休み明けに返してください」


ミラは真面目に頷いた。


「厚紙は返す。飾りは家に持って帰る。菓子は、聞いてから食べる」


「その通りです」


ジュールが横から言った。


「先生、菓子も返さない?」


「返さなくていいです」


「食べたあとでも?」


「食べたあとに返されても困ります」


「だよね」


先生は目を細めた。


「今、確認しなくても分かることを確認しましたね」


「菓子のことは大事だから」


「大事なことほど、袋を開けずに持って帰ってください」


その言葉で、ジュールはようやく菓子を鞄にしまった。


ルシアンが自分の鞄をのぞき込み、小さく言った。


「ぼくの菓子、帰るまで残ってるかな」


「鞄が勝手に食べることはありません」


ルノー先生が答えると、ジュールが真面目な顔で自分の鞄を見た。


「でも、ぼくの鞄は信用できない」


「信用できないのは、鞄ではありません」


教室がまた笑った。ミラは自分の鞄を見下ろした。中に入れたものは、まだそこにある。予定の紙も、紙飾りも、菓子も、厚紙も。鞄が勝手に食べないなら、帰るまでは残る。


授業が終わる頃、教室の空気はいつもより落ち着かなかった。子どもたちは鞄を開けたり閉めたり、予定の紙を見せ合ったり、菓子の包みがちゃんと入っているか確かめたりしている。


ミラは紙飾りを厚紙に挟み、予定の紙を鞄の内側へ入れ、菓子をその上に置いた。順番を決めると、少し安心した。


門の前には、迎えの大人たちが集まり始めていた。


冬の夕方は早い。空はまだ明るいのに、通りの端にはもう冷たい色が落ちている。パン屋の前から焼けた匂いが流れ、馬車の車輪が石畳をこする音がした。


レオンは門の横に立っていた。


工場の水場で手を洗ってきたらしく、指先はいつもよりきれいだった。とはいえ、爪の間には黒い油が少し残っている。袖口にも、洗って落ちなかった跡があった。本人はかなりきれいにしたつもりらしく、胸を張っている。


ミラは教室から出て、レオンを見つけると歩いていった。


「今日は、手がきれいです」


「勝った」


「何に?」


「工場の水場に」


「全部は勝っていません」


ミラが爪の間を見ると、レオンは指を少し丸めた。


「細かいところで負けた」


「手は、難しいです」


「お前が言うと先生みたいだな」


ルノー先生が後ろから出てきた。


「手が難しいのは事実です。レオンさん、冬休みの予定の紙を渡しています。家で確認してください」


「はい。俺が読む紙ですね」


「あなたが読む紙です」


「読んだら、冬休みが少し短くなったりしますか」


「しません」


「大人の休みは増えませんか」


「しません」


「予定は厳しいですね」


「守れば、そこまで怖くありません」


「守らないと?」


「困ります」


「先生の困りますは、役所より近いですね」


「近いうちに困ります」


レオンは素直に頷いた。ミラはその横で、鞄を両手で持っている。


先生はミラへ視線を落とした。


「紙飾りは家に持って帰ってください。厚紙は休み明けに返してください」


「はい」


「菓子は、家の人に聞いてから」


「はい」


レオンが少し眉を上げた。


「俺が菓子の門番ですか」


「食べる時間を決める人です」


「急に責任が甘い匂いになりましたね」


「責任は甘くありません」


「菓子なのに」


「菓子でもです」


ルノー先生は短くそう言い、次の保護者へ向かった。


レオンはミラの鞄を見た。


「学校で配られたのか」


「はい。返すものと、家に置いていいものがあります」


「難しいな」


「厚紙は返します。紙飾りは返しません。菓子は、聞いてから食べます。予定の紙は、レオンさんが読みます」


「俺の仕事だけ急に重い」


「読めますか」


「読める。字とは仲がいい日もある」


ミラは口元をゆるめた。


帰り道、レオンは歩幅を落とした。最初の頃ほど意識しなくても、ミラの足に合わせられるようになっている。通りの石畳は冷え、薄い風が外套の裾を揺らした。


ミラは鞄を胸の前に抱えて歩いている。


「冬休みの日は、学校へ行きません」


「そうだな」


「でも、席はあります」


「先生が言ったなら、ある」


「見えなくても」


「見えないものは全部怪しいわけじゃない」


ミラは少し考えた。


「レオンさんの給金も、見えない時があります」


「それは別の意味で怪しい」


「財布にありません」


「財布はな、入ったものを長く留めるのが下手なんだ」


「練習しますか」


「財布が?」


「はい」


「俺より難しい相手だぞ」


ミラはほんの少し笑った。


その顔を見て、レオンは思い出したように外套の内ポケットを押さえた。中に小さな紙包みがある。工場の昼休みに手に入れたものだった。


昼休み、工場の休憩所でロイが古い木箱を片づけていると、中から短くなった鉛筆と、小さな菓子が出てきた。菓子はロイの妹が余らせたものだと言い、鉛筆は誰のものか分からないが、まだ少し書けると言った。


レオンはそれを見て、すぐに言った。


「それ、俺が勝つ」


「何にだよ」


「休憩所掃除」


「勝つって言いながら掃除を引き受けるのか」


「最終的に菓子が来るなら、勝ちに近い」


「近いだけで掃除が残ってるぞ」


「細かい負けは気にしない」


ロイは呆れながらも、鉛筆と菓子を紙に包んで渡した。


「ミラ用か」


「配り物だ」


「一人に?」


「一人なら、間違えない」


「お前は一人分でも間違えるから、包みを落とすなよ」


それからずっと、レオンは内ポケットを時々押さえていた。油がつかないように、作業着ではなく外套の胸に入れ直した。工場でそこまで気を使うと、ロイにまた笑われたが、今日は落としていない。


公営労働者アパートの中庭へ入ると、テレーズが洗濯場で水桶を片づけていた。エリーズは籠を抱え、マノンのほどけた髪ひもを直している。ルルは木の匙を持ったまま、トトの後ろを歩いていた。トトは匙に興味がない顔で尻尾だけ振っている。


テレーズがレオンの胸元を見た。


「また何か隠してるね」


「俺の顔はそんなに出ますか」


「顔じゃないよ。胸を押さえすぎなんだよ」


エリーズもこちらを見た。


「買ったの?」


「勝った」


「何に?」


「休憩所掃除に」


エリーズは少し間を置いた。


「それ、勝ったって言うの?」


「菓子と鉛筆が来た」


「掃除は?」


「俺に来た」


「負けてるじゃない」


「見方を変えれば勝ちだ」


「見方を変えすぎると、ただの雑用よ」


テレーズが笑った。


「ミラ、あいつは自分の掃除と引き換えに何か持ってきたらしいよ。危ないものだったら、すぐ見せるんだよ」


ミラはレオンを見上げた。


「危ないものですか」


「菓子と鉛筆だ。菓子は少し危ないかもしれない」


「なぜですか」


「食べたらなくなる」


「菓子は、そういうものです」


「お前もだいぶ正確になったな」


エリーズが横から言った。


「先生の影響ね」


「俺の影響も少しあるだろ」


「変な言い方の方ならあるわ」


「それも影響だ」


「胸を張らない」


中庭に小さな笑いが起きた。ミラは鞄を持ち直し、レオンの外套の胸元をもう一度見た。見えないものがある。けれど、今日はそれが、すぐになくなるものには見えなかった。


三階の部屋へ戻ると、窓の外には工場の煙突が見えた。夕方の煙は白というより灰色で、冬の空へ細く上がっている。


部屋は狭い。寝台、小さな机、椅子、黒い鍋、棚、壁際の簡易台所。何度見ても、立派にはならない。けれど、ミラは鞄を机の横に置くと、紙飾りを厚紙からそっと外した。


「折れませんでした」


「帰り道には勝ったな」


「紙に?」


「紙じゃなくて、帰り道に」


ミラはそれを考え、丁寧には頷かなかった。まだ分からないことは、分かった顔でしまわない。以前より、分からないまま待てるようになっている。


夕飯は、硬いパンと薄い豆のスープだった。


黒い鍋は相変わらず黒く、豆は多くない。けれど、湯気だけはしっかり立っていた。レオンはパンを二つに割り、ミラの皿の横に置いた。


ミラは食べる前に、鞄から予定の紙を出した。


「これは、レオンさんが読む紙です」


「飯の前に予定か」


「先生が、家で確認してくださいと言いました」


「先生の言葉は、飯より先に来るな」


「読みますか」


「読む」


レオンは手を拭き、紙を広げた。字は細かいが、役所の書類ほど嫌な顔はしていない。冬休みの始まる日と、次に学校へ行く日、持ってくるものが短く書かれている。


「休みが終わったら、いつもの時間に学校へ行く。持ち物は、鞄、スモック、名前布、厚紙を返す。菓子の包みは返さなくていい」


「菓子の包みも?」


「そこは書いてない。俺が足した」


「足していいんですか」


「今のは読んだんじゃなくて、俺の意見だ」


「紙と意見は違います」


「先生がもう一人いる」


ミラは口元をゆるめた。


食事を終えると、レオンは外套の内ポケットから小さな紙包みを出した。机の上に置く。学校の紙飾りの横だ。


ミラはそれを見た。


「これは、学校のものですか」


「家のものだ」


「家も、配るんですか」


「今日は配る。配り物の日だからな」


「一人でも?」


「一人なら、ちゃんと届く」


ミラは紙包みを両手で受け取った。包みは薄く、角が少し曲がっている。きれいな紙ではない。何か別のものを包んだ残りのような紙だ。それでも、折り目はちゃんとしていた。油の跡もない。


「これは、返しますか」


「返したら、俺の配り物が失敗する」


「失敗しますか」


「かなりする」


ミラは紙包みを開けた。


中には、小さな菓子が一つと、短い鉛筆が一本入っていた。鉛筆は新しくない。何度も削られて短くなり、端には誰かが噛んだような跡が少しある。けれど、芯はまだ残っている。


「これは、書けますか」


「ロイは、まだいけるって言ってた」


「ロイさんの鉛筆ですか」


「ロイの箱にあった鉛筆だ。そこから先は、鉛筆の過去が複雑になる」


「過去」


「まあ、今はお前のだ」


ミラは鉛筆を指先で持った。


「学校へ持っていきますか」


「持っていってもいい。家に置いてもいい」


「どちらですか」


「お前が決める」


ミラは、すぐには答えなかった。


学校でもらった紙飾り。返す厚紙。家で渡された鉛筆。食べたらなくなる菓子。机の上に並ぶものは小さいのに、一つずつ扱い方が違う。


「決めていいんですか」


「配られたものだからな」


「レオンさんが勝ったものです」


「勝ったものを配った」


「掃除も来ました」


「それは俺の分だ」


「掃除は、配りませんか」


「配ったら、ロイに返される」


「返すものですか」


「たぶん、誰も受け取らない」


ミラは鉛筆を見て、それから小さな菓子を見た。


「菓子は、食べます」


「今か」


「はい。聞きました」


「俺に?」


「はい」


「門番として許可する」


「門番は、食べませんか」


「門番にも少し税があると助かる」


ミラは菓子を見下ろした。少し考えてから、小さく割ろうとしたが、硬くてうまく割れない。レオンが手を出しかけると、ミラは一度止め、自分で紙の上に置いて、両手で押した。菓子は小さく音を立てて二つに割れた。


片方を、レオンの方へ差し出す。


「門番の分です」


レオンは受け取りながら、少し困った顔をした。


「俺が配ったのに、戻ってきたな」


「返していません。分けました」


「そこは違うのか」


「違います」


「先生より短く刺すな」


ミラは小さい方を自分の口へ入れた。硬い菓子を急がず噛む。砂糖がほどけるにつれ、目元の力もほどけていった。


レオンも自分の分を食べた。


「甘いな」


「はい」


「掃除一回分の味だ」


「掃除は甘くないです」


「そこが問題だな」


ミラは笑った。声は大きくない。けれど、部屋の中でちゃんと聞こえる笑いだった。


その後、ミラは紙飾りを棚に置いた。前に名前の字を練習した紙の近くで、落ちないように少し奥へ寄せる。白い紙飾りは、古い棚の上でそこだけ雪のように見えた。


ミラは家の紙包みの残りを、その横へ置いた。中には短い鉛筆が一本残っている。


「学校の分です」


紙飾りを指して、ミラは言った。


次に、紙包みを指す。


「家の分です」


レオンは椅子に座り、机の端に肘をつきかけて、やめた。紙飾りを潰しそうになったからだ。


「じゃあ、そこは配り物の場所だな」


「休みの日も、置いておきます」


「落とさないようにする」


「レオンさんが?」


「俺が」


「大丈夫ですか」


「今日はまだ何も落としてない」


「今日は、まだあります」


「信用が日持ちしないな」


ミラは棚を見たまま、少し考えた。


「学校の席は、休みの日もあります」


「ああ」


「厚紙は返します」


「忘れないようにする」


「家の分は、返しません」


「返されたら、俺が掃除に負けたことになる」


ミラはレオンを見た。


「掃除には、もう負けています」


「そこは忘れてくれ」


「忘れません。菓子と鉛筆が来たから」


レオンは一拍黙った。


ミラは、嫌なこととして覚えているのではない。何と引き換えに何が来たのかを、ちゃんと見ている。学校から来たもの。家から来たもの。返すもの。置いておくもの。小さな机の上で、その違いを一つずつ分けている。


レオンは棚の紙飾りを見た。


「じゃあ、忘れない。厚紙は返す。紙飾りはここ。鉛筆もここ。学校の席は学校。家の席は……」


部屋を見回し、少し困る。


椅子は二つある。けれど、一つは机の前にあり、もう一つは窓際で少しがたついている。寝台はミラのもので、レオンはまだ床で寝ている。黒い鍋は台所にある。どれも立派なものではない。


ミラはレオンの視線を追った。


「家の席は、椅子ですか」


「椅子でもいい」


「床もあります」


「それは俺の席にされると少し悲しい」


「レオンさんは床で寝ます」


「事実を言われると、もっと悲しい」


ミラは小さく笑った。


レオンは帽子を取り、棚の横の釘にかけた。そこにかけると、紙飾りへ触れない。鉛筆も落ちない。


「家は、ここだ。椅子もある。鍋もある。床も嫌なくらいある。鍵は俺が持ってる。だから、休みの日もなくならない」


ミラはそれを聞いていた。


親のことも、施設のことも、戻される不安も言わなかった。ただ、棚の上の紙飾りと紙包みを見て、最後に小さく頷いた。


丁寧すぎる頷きではなかった。


「じゃあ、休みの日も置いておきます」


「ああ。置いておけ」


「レオンさんも、落とさないでください」


「俺もそこに置くのか」


「違います。落ちると困ります」


「俺が?」


「はい」


レオンは少し笑って、椅子の背にもたれた。


「じゃあ、落ちないようにする」


「床で壊れないでください」


「冬休み前に言うことか、それ」


「冬休み中も、席がありますから」


ミラはそう言って、短い鉛筆を紙包みに戻した。


レオンは椅子の背にもたれかけ、床で壊れないよう、座り直した。


読んでくださり、ありがとうございます。

レオンとミラの生活が少しずつ変わっていく様子を、気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。

よろしければ、最後までお付き合いください。

挿絵(By みてみん)


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