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不思議な髪色の彼女のレースと、しがない僕の試合  作者: タマツ 左衛門之介久


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3/5

再会は1年半後に

彼女の将来、彼女の横に居るのは僕じゃない。

まだ見ぬ別の誰かだと決まってる。


夢の時間の旅人は、終着点を決められぬまま、その旅路を終えてしまった。

彼女の姿を見る事も無く、彼女の持つ不思議な髪色も見れぬまま。

別れの挨拶を交わす事なく、、、旅路の終焉であった。


彼女の隣に立つのは、僕じゃない。

だけど僕は終わらせたく無い、終わらせる気なんて更々無い!

だけど、


だけど僕は何も持っていない。

何か特技を持っているのか、誰にも負けない何かを持っているのか?

胸を張って言える事って何がある?


僕は、ただのつまらない、出来損ない。

だけど、


彼女の隣に立つのは僕では無い。

だけど、


『さよなら』なんて言えなかった。

だけど、

後悔なんて、、、後悔しか無かった。


 僕は勝ち試合のピッチに立っていた。


 試合が終わったのか?

 試合終了のホイッスルと共に、その場に座り込んでしまう選手が多かった。

 とにかく蒸し暑く、悪いピッチコンディション、味方も相手チームも、体力的な限界が近かったのかも知れない。

 それぐらい、厳しいゲームだった。


 だけど、僕はまだまだ動けるのに、これからじゃんか!

 まだまだボールを追い、ボールを蹴りたいのに!

 試合が終わっちゃった。

 僕が初めての勝利の試合の瞬間は、そんな事を思った。



 集まってくれた観客に挨拶して、相手選手と握手を交わし、僕達はベンチへと戻った。

 勝利となったがチームメイトは疲労からか、その足取りは重かった。

 そんな中で、一人だけ元気な自分がなんだか恥ずかしかった。それと皆んなに申し訳無く感じていた。


 そのままベンチで帰り支度をしていると、僕に声が掛かった。

「最後のあれは、ヤバかった。」

「ああ、良くやった、良くぞ追い付いてくれたよ」

 ん、なんか褒められてる?なんかしたっけ?

 それよりも、疲労感を隠しもしない皆んなの顔を見ると、何故だか申し訳無い気持ちがあった。

 最後の途中出場だったとは言え、僕は皆んなとは一緒に戦えて無かった。


 皆はあのコンディションの中で戦い、勝利を勝ち取った。

 スコアの1−0なんて関係ない。見事な勝利だ!

 だけど僕は少し出ただけ。

 チームメイトの皆程疲れてもいないし、苦しくも無かった。

 その状態に届かなかった。

 僕だけがサボっていたかの様。

 僕がこの勝利に貢献した事なんて、1ミリも無かった。


「あそこでコーナーだったらヤバかったかも」

「ああ、それ言える」

 もしかして、終了間際となった僕の最後のワンプレー?

 僕は肩をたたかれた。


「あそこで蹴り込まれていたら、ホント、マズかったかも」

 そう、サッカーなんてそんな事も有る。

 どんなに優位に試合を進めても、ワンプレーで決まってしまう事も。

 実際、ボール支配率(自軍のチームと相手チームとのボールを持っている時間の差)が高くても、負ける時は負けてしまう。

 ボール支配率が70%以上だったとしても、得点を挙げれず、たった1点を取られてしまえば負けだ。


「ナイスプレー!助かったよ」

 確かにあの場面、あの時間帯、もしもコーナーキックでの再開だったら、プレーが途切れるまでゲームは続いていただろう。

「あれが今日の勝因だったな。」

「ああ、延長なんて無いからPKにでもなってたら」

「延長があったとしても、もう動けなかったかも」

「ああ、ナイスだった」

 僕は皆に肩をたたかれた。


 何だか、なんだか、、、今になって試合に勝った実感が湧いて来た。

 勝利となったピッチに、試合終了の瞬間に立てた事の実感が湧き上がって来た!

 僕は大声で叫びたくなった。

 走り出したくなった。

 体が震え出しそうになった。

 涙が、こぼれそうになった。

 これが勝利、チームの皆んなで勝ち取った勝利、サッカーの試合での勝利なんだ!

 あー!あの笛の音をもっとしっかりと聞いておくべきだった!

 僕は脚が震えながらも、タオルで顔を拭くふりをして、なんとか誤魔化した。



 高校生活最期の年は、とにかくサッカー漬けの日々を送った。

 そうでもしないと、僕がサッカー部で生き残る事が出来ないのも事実だった。


 だけど上手く成りたい、強く速く、そしてレギュラーとなり試合に勝ちたかった。

 チームメイトは僕を押し上げてくれるかの様に、色々と世話をやいてくれた。

 控え選手であれど戦力には変わらずとの、顧問の先生からの指導があったがこそかも知れなかったけど、とても仲良くしてくれた。


 チームの皆と切磋琢磨して、虎視眈々とレギュラーの座を、、、までは、まだまだ全然。

 僕はレギュラーになれなくても、せめて皆の戦力の一部になるだけの力を付けなければと、グランドを駆けた。

 いや、先ずはレギュラーが目標だけど。


 そしてボールを追い、グランドを駆けている時は、彼女の事を忘れられる時間でもあった。

 それに気付いた時は驚いたが、逆に彼女を想う時間、瞬間は、僕の意識の中で彼女に占める割合が大きく広がり、自宅の自分の部屋の外で、彼女の事を想うのは危険かも知れない?と思ってしまう事もあった。



 ああ、彼女が見たい、あの不思議な色をした髪色が見たい!

 彼女は今、何をしているのだらう?

 彼女を想えば気持ちは高鳴り、僕の意識は逡巡するのは変わらない。


 『勘違いするな』

 僕の中から別の意識が現れる。

 『お前と彼女にどういった関係性を持つと言える』

 『お前では資格が無い』

 『お前は、何を持っている』

 彼女の隣には、僕では無い別の誰かがいるのだろう。

 彼女の事を放っておく者など居ない。

 それは学校中で、今や世間でもそうかも知れない。


 彼女の隣に立つのは、僕じゃない。





 高校生活でのサッカーは充実したモノになったと言える。

(正式なレギュラーは勝ち取れなかったけど。)

 サッカーの初心者で出来損ないの僕としては上出来だっただろう。

 勝ち試合の試合終了の瞬間にピッチに立つ事も出来たし、何より転校先で、新たな仲間を得られた事がデカかった。


 僕は、桜の花が開く前に高校を卒業した。





 僕は大学へと進学した。

 進学先を決めたのは元の県を所在地に持つ大学だ。

 受験勉強なんてろくすっぽしなかったから、何とか行ける場所を探した。

 両親も僕が大学へと進み、この土地を選ぶ事に賛同してくれた。

 だから、元の地域に近ければどこでも良かった、

 その中でも、新設の学部が出来たこの学校は競争率も低く、なんとか合格した。

 それでも多分、滑り込みだったのだろう。


 僕はこの春から下宿生活が始まる。

 もう、浮かれている。

 何が起こるのか?!何が待ってる?!ひとり暮らしって憧れだった。

 それで学費と下宿代、ゴメンナサイお願いします。

 自分の行動に戒めを持てば、難無く元居た町へと向う事だって出来る。

 彼女の暮らす町へと行ける、あの場所へ帰れる!





「おぉ~、正雄久し振り!何だか逞しくなって、お前背が伸びたんじゃないか?」

「何だよ、久し振りに会った親戚みたいな事を言うなぁ」

 身体も毎日部活で鍛えられ、それなりに大きくなったと思う。


「うん、178cmちょい。あの時(高校2年の夏)から2〜3cmぐらい伸びたかな」

「なんだよ2センチかよ、あんまり変わって無いじゃんか。」

「放っとけ」


 僕は大学への進学で、この地域に戻って来た。

 当時の同じクラスだった一部のヤツ、元サッカー部、同級生を中心に第二グランドを使っていたハンドボール部と陸上部にも声か掛かり、『第二グランド帰還会』という昼食会を開いてもらった。


 第二グランドを一緒使っていた部活、陸上部。

 だから彼女が来るのではないかと期待した。

 僕が部活で第二グランドを使っていたのは、実質1年半しか無かったけど、サッカー部、ハンドボール部、陸上部の新入生は1年を通して毎日しごかれ、グランドを駆け、部活は違えど似た苦しみを分かち合った連帯感を持っていた。


 当時のサッカー部の連中は半分以上集まってくれていた。

「見たよ、結果。万年一回戦ボーイはもう返上だね」

 僕が引っ越した後の新チームの初の公式戦となる、秋の大会、全国高校サッカー選手権の地区予選で初勝利を挙げた。

「ああ、夏の試合は二つ勝った。次に勝っていたらベストフォーだったのに。」

 高校時代の最後の公式戦となるのは、夏のインターハイ。

「ベストフォーだぜ、お前がいたら行けてたのになぁ。」

 そう、去年の夏のインターハイでの地方大会では、1回戦目を勝ち上がり、2回戦目を突破した。


「オレが居たら、足手まといだったと思う。上手い後輩も入って来たって聞いたから」

 元チームメイトとは、頻繁では無かったけれど、連絡を取り合っていた。

「お前のお手柄だよ。」

 僕は、彼女に関する情報をコイツから聞きたかったけど、サッカー部の話しや日常会話に留まっていた。


 彼女の事を面と向って聞ける程の理由も無ければ勇気も無かった。

 なにより、僕では無い別の誰かが、既に彼女の隣に立ってしまっている事を聞きたく無かった。

 知りたく無かった。


「お前が作ったチームと言っても過言は無いぜ。」

「オレが居たら、やっぱりひとつも勝てなかったかもよ」

 そんな風に言ってくれるなんて、嬉しかった。

 だけど、一回戦ボーイが常連だと思われていたこのチームで、この皆んなで、彼女の前で!試合に勝ちたかった。

 だから、羨ましく、悔しかった。


「今でも思い出すぜ、突然勝ちたいだなんて言い出したから。」

 あの夏休みの練習再開の日。

「ああ、お前変に真っ直ぐでさ、」

「そうそう、あの時、何か動き出した!と思った。その気にさせられたのは確かだ。」

「ああ、お前のお陰だ。高校のサッカー生活でヤル気が続いたのはお前のお陰だよ。」

「実際、勝ったしな」

「ああ、ホント」

「そんなに褒めるなよ」

 嬉しかった。仲間っていいなぁ。


「あっ、山田!何だよ、変に色気付きやがって」

 同じクラスだったハンドボール部の坊主頭が髪を伸ばしていた。

 陸上部の投てき競技者は、上半身を中心に体が一回り大きくなったような感じだ。

 真っ黒く日焼けしていたハンド部の女子達も、すっかり女っぽさを醸し出していた。

 皆を久し振りに見たから?見たことも無い服装だからか?

 皆それなりに、見た目が変わっていた。

 高校を卒業したのはつい先日だけど、僕は皆んなの姿を見るのは1年半振り。

 皆は大人っぽくなり、見た目だけではなく、内面だって成長しているのだろう。


 僕はどうだ?

 何が変わったなんて言えないし、説明出来ない。

 いや、自分は何も変われて無い。

 だけど、彼女を想う気持ちが大きくなっていた。

 それは変わった。大きく変わっていた。

 いや、僕の気持ちの中で、彼女の事を占めす範囲が大きく広がっていた。

 1年半、たったの1年半、長く、短く、変わらない、大きな変化、、、それは皆にも、僕にもあった、そして無かった。


 彼女はこの席には居なかった。

「地元に残ったのは少ないよ。」

 『誰』と具体的に示されてはいないけど、それは僕に対して彼女に向けられた言葉に感じた。

 彼女は聡明だった。東京の大学にでも進んだのだろう。


 そうだよ。

 彼女が僕がこの町に帰る事を待っていてくれるなんて、関係無かった。

 別れの挨拶もしなかったし、この町に戻る約束なんてしていなかった。

 それに、、、彼女が僕を待つ理由は無い、、、。

 僕の心は沈んだ。

 だけどこの場に集まってくれた皆には知られない様に努めた。



「そう言えばさ、お前たちって付き合ってたのかよ?」

「お前たちって?」

「佐原に決まってるだろ。」

 僕と彼女が下校を共にしたのは、実質3ヶ月ぐらい。

 その間、誰かに彼女との関係を聞かれた事は無かった。

 

「いや、付き合ってなんてなかったよ。ただ、帰り道が一緒だっただけ、、、」ただ、それだけのこと。

 僕の返事は尻窄みになってしまった。

 何か後悔、後悔しか無い。

 もっと、もっと何かが出来なかったのか、もっと何かを伝えられなかったのか。

 時間は戻せない、戻らない。


 そう、当時の僕は奇跡の中を過ごしていただけ。

 それは夢と同じ。夢はいつか覚めてしまう。

 そもそも僕は、彼女の横に並べる様な者では無かった。

 今なら?いや、今でもそれは変わらないだろう。僕は特に何かを持っている訳でも無い。

 それよりも、あの時近付けたと思った距離は無くなってしまったのだろう。


「なんだ、知ってたの?」

 別に秘密にはしてなかったけど、自慢話しとしても、していなかった。

「当たり前じゃんか、皆んな知ってたぞ!」

 意外だった。

 茶化された事も無かった。

「何だよ、皆んなって誰だよ」

「そんなの決まってるだろ、全校生徒だよ!」

 確かに彼女は皆に好かれ、注目のまとだった。

「全校生徒だなんて」だけどそれ、大袈裟過ぎるだろ!


「ねえ、草刈君って今フリーぃ?」

 ハンドボール部女子だった。

 第二グランドを共有していたハンドボール部は、ハンドの一面コートを左右半分づつ、男子と女子が別れて練習していた。

 ハンド部の女子の僕が持っていた印象は、手足が細くて真っ黒く日焼けしていて、失礼ながら少年にも見えてしまっていた。

 皆が短髪にしていたから、そう思ってしまっていたのかも。


 久し振りに見た元ハンド部女子達からは、少年に見間違えるかの印象は全く消えていた。

 それよりも、皆凄く女の子らしくて可愛らしい。

 僕が知らなかっただけ?

 何があった?何が起こったの?と聞きたくなってしまう位に。


 実は3年生の時、2回告白された事が有った。同級生と後輩から。

「付き合って下さい。」

 呼び出された相手からは、ストレートな告白だった。

 僕が告白された?!


 驚きと嬉しさ、だけど同時に彼女のあの不思議な髪色が、僕の目の前で揺れた。


「ありがとう、、、でも、ゴメン」

 僕の中では彼女の姿が舞っている。

 あの、不思議な髪色が舞っている。

 鼻に小ジワを寄せて、僕の顔を見て来る可愛い顔、、、

 トラウマ、こう言う事を指すのだろうか。

 僕は彼女の事を忘れる事が出来なかった。



「今だから言えるけど、私、草刈君の事狙っていたのよ。」

 僕に声を掛けて来た元ハンド部女子からも、少年っぽさは消えていた。

 だけど、そんなの初耳だよ。

「草刈君って意外とモテたのよ。」

 意外ってなんだよ。

「何で今になって言うんだよ、もっと前に言ってくれよ」

「だって、」

 ああ、もしも当時の僕が誰かに告られていたらどうしたのだろう。

 彼女の事は好きだった。全面的に好きだった。

 だけど彼女の相手になるのは僕では無い、違う誰かだとも分かっていた。

 その中で、僕が誰かに告白されていたら、、、僕は、どうしたのだろう。


「今はどうなの?」

 そして今、聞かれれば確かにフリーだ。付き合っている相手は居ない。

 あっ、『今はどうなの?』僕は頭の中で繰り返した。


 何だか色々な意味合いを想ってしまった。

 今の僕は誰とも付き合って居ない。

 あの時の僕と今の僕では、、、変わっていない、彼女の事を引きずっている、、、今、元ハンドの女子に聞かれ、それを改めて知ってしまった。

 だけど僕がモテてたなんて、やっぱり意外だった。



「そうだ、お前少し大きくなったみたいだけど、」

 サッカー部の元チームメイトが僕の肩に腕を回して来て、割り込んで来てくれた。返事が出来ない僕に助け舟を出してくれた。

「皆んな成長したんだよ、だけどさ、もっと凄いのが居るぞ!」

「えっ、誰が?凄いってどんな?」

 身長が一気に伸びたヤツ?それとも見た目とか髪型、服装が派手に大きく変わったヤツ?

「もうすぐ来るさ。」

 誰だ?どいつの事だ?

 当時のチームのキーパーはまだ来ていない。あいつは元々体がデカかったからなぁ。それかハンド部の誰か?

 誰がどうなったんだ?



 皆が席に揃ったタイミングで、どうやらひとり、遅れ気味に到着した。

 さっき聞いた『もっと凄い』のか、何だよ女子かよ、、、

「ぁ、」

 その姿を見た途端、呼吸が止まった。

 僕の全ては停止してしまった。


 かろうじて活動を続けている目と、少しだけ働きが残っている脳内が思考を走らせる。

 スポーツキャップを目深に被り、背が高い。

 グラビアモデルを彷彿させるボディ。誰?

 だけどスポーツキャップの下から続く長い髪は、、、忘れる筈は無い、忘れる事が出来なかった、あの不思議な髪色が見える!僕が惹かれてしまった髪色が!まさか!ウソだっ!

 僕は息を吐き出した。


 そして遅れて現れた者は、スポーツキャップを極当たり前に脱いだ。

 帽子の下から現れた顔の後で、あの髪の毛が扇の様に広がり、まるでスローモーションのままに僕の目映った、、、あの髪色!


「ようやく、会えた、、、」

 遅れて来た者は囁くかの様にそんな一声を発した。

 だけどその声は、やけにこの部屋に響いた。

 そんな挨拶とも取れぬ声と共に、僕と目が合えば口角を上げ、鼻に小ジワを寄せた。


 僕は慌てて両腕で顔を隠し、机にうつ伏せた。

 全身が震え出した。

 ガタガタ、ガタガタ、何で震えている!何がそうさせる?

 僕の震えはテーブルに置かれたグラスが音を立ててしまっている。

 何で震えているんだ?

 いや、全部分かってる!


 顔や姿が変わっていても、あの髪色!

 間違える筈が無い!忘れる筈が無い!

 それに合わせてあの仕草!

 


 そのまま、僕の真向かいの席に着いた様だが。

「ねえ、何してたの?」

 次に発っせられたのは、こんな声が届いて来た。


 溢れ出してしまう涙を必死にこらえ、そのままの姿勢で僕はなんとか声を絞り出した。

「どちら様でした?」

 顔は上げられない。無理だ。

 間違い無い。顔も身体つきも大きく変わっているけど、、、、

 だけど変わっていないあの髪色、見間違える筈が無い!


 会いたかった。

 ああ、ああ、ああー

 なんで、なんで自分から会いに行かなかったのだろう。

 活動を再開したハズの僕の脳内は、ただ、ただ、グルグル、グルグルと回っているだけ。

 彼女に会いたかった、彼女の姿が見たかった、彼女のあの髪が見たかった!


 会いたかった、会いたかった、会いたかった!

 そうだった。

 会いたかった!会いたかった!会いたかった!会いたかった!会いたかった!会いたかった!

 会いたかった!会いたかった!会いたかった!会いたかった!会いたかった!会いたかった!

 何で今までそうしなかったのか!

 どうして姿を見るだけでもしなかったんだ!

 会いたかった!


 会いに行けなかった。

 そもそも僕たちは、恋人同士でもなければ、正式に付き合っていた分けでもない。

 同じクラスでもなければ、部活だって違っていた。

 友だち、女友達?それすらおこがましい。

 仲間?何の?

 ただ、帰り道の方向が同じなだけ。たったそれだけの関係だったと思う。


 だから、どの面下げて、どう言った理由が付けられる?

 彼女に会う為の明確な理由が持てて無かった。

 ノコノコで出向いて行っても、彼女が会ってくれる保証も無かった。


 理由はどうあれ、僕は彼女から離れてしまったのは事実だ。

 それは物理的な距離であったとしても、国内だったのだし、この町に来る事は出来たはずだ。

 それに、別れの挨拶すらしていなかった。

 だけど、別れの挨拶だなんで、考えても無かったし、する気も無かった。

『さよなら』なんて言えなかった。


 だけど、僕が居なくなったあの場所、すぐにでも、あの時僕が居た彼女の隣には、別の誰かが立っていたのだろう。


 彼女の事を放っておく者など、誰ひとりとして居ない。


 怖かった。

 あの時僕の居た場所に、別の誰かが立っている。

 怖くて、怖くて、怖くて。


 だけどそれも、あの時の僕は理解していた筈だ。

 彼女の隣に立つのは僕じゃない。


 あの時見えなかったが、確実に存在する僕では無い別の誰か。

 その誰かが彼女の隣に立つまでの一時いっときを僕は得ていただけだと。

 かと言い、自分の引き際は考えてなかった。

 だけどその時は確実にやって来る。だから、それまで、、、

 

 あの時の僕が決めた事だった。





 そうだ、あの時の僕は決めたんだ。だけど!


 僕は決死の想いと共に、恐る恐る顔を上げた。

 目の前に飛び込んで来たのは、、、知らない外国の人?

 僕の記憶に残る彼女とは、別人と言っていい程に違っていた。

 大人びた顔つきから始まり、身体だって少女から大人の女性に変わっている。

 人って、一年そこらでココまで変わるモノなのかと戸惑ってしまう程だけど。

 だけど間違い無い、何よりこの髪色を忘れる筈が無い!


 僕の両目からは涙が溢れてしまった。

 我慢してたのに、もう止まらない、堰を切ってしまった涙は止まらない。

 この涙は何なのだろう、彼女の隣に立てない悔しさから?純粋に再会した嬉しさから?


「久し振りに、会えたのね。」

 何とか上げた顔から見た彼女はそこに居る。

 手を伸ばせば届くだろう。


 僕の涙は止まらなかった。

 だけどそのまま、彼女の顔、彼女の髪から目が離せなかった。

 涙を拭う時間さえ惜しく感じる。

 滲んでしまった景色の中に彼女が居る。

 僕は身動きが出来ず、ただただ滲んだ姿の彼女を見ている。


 人の姿を見ているだけなのに、どうしてこうも涙が流れるのだろう。

 大人びた顔つきに変わっていた彼女。

 だけどこの髪色は、あの日のまま、初めて見た中学校の入学式の時に見た髪色と変わっていなかった。

 そして彼女が放つ輝きは、変わらず眩しいままだった。





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