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 おなかが空いていたようで、リチャードは出されたごはんをぺろりと平らげた。

 なんだかんだでにぎやかな食卓だ。ママがこの調子だし、パパもそれに乗る。レンが茶々を入れたり、リンがツッコんだり。

 だからいつの間にかリチャードもすっかりなごんでいた。

 よかった。ずっと緊張していたのが伝わっていたから。


「お母上」

 誰のことっ!? ってなった。

「わ、わたし?」

 ママが自分を指さした。

「はい、お母上。たいへんおいしゅうございました」

 こういうところは、やっぱり王子さまなんだなってリンは思った。

 いやでも、令和の日本ではないな。


「やあねぇ、ママでいいわよぉ。お母上なんてりっぱなお母さんじゃないものー」

「そ、そうですか。ではママ殿」

「う、うん。いっか、それで。パパもパパでいいからね」

「はい、パパ殿」

 パパがもじもじした。なぜ、テレる。


「着替え、ないわよね?」

 さあ、ふろに入ろうとなって、ママが言った。

「……持っていません」

 体ひとつで来たものね。あのベルばら風の衣装を着続けるわけにもいくまい。

 なにより暑いし。


「レン。なにか貸してあげなさいよ」

「おう。Tシャツと短パンはいいけど、パンツはいやだぜ」

「やっぱりー?」

 あははとママが笑う。


「では、とっておきのパパの買い置きを貸してあげるねー」

 買い置きはとっておきなのか。

「チェックのトランクスだろ? 今日は仕方がないけど、かわいそうだぜ」

 レンのパンツは黒いパンツだ。ボクサーパンツというヤツだ。今どきの若者はトランクスなんてはかならしい。

「なにを言うか。風通しが良くて快適なんだぞ」

 パパが反論する。

「おっさんが履くもんだよ(笑)」

 パパは「ひどいなー」なんて言っているが。

 そもそもリチャードはどんなパンツを履いているんだろう?


「じゃあ明日服買ってきなよ。ほかにも着替えいるでしょ? レン一緒に行ってあげて」

「おう、わかった」

「レンは予定があるのでは?」

 リチャードは申し訳なさそうに聞いた。

「べつにいいよ。カラオケはいつでも行けるから」

「そうか、申し訳ない」

「いいって。気にすんなよ」

「せっかくモテるのに」

 ぷぷ。


 あらやだー、とママが笑った。

「レンがモテるなら、リチャードはもっとモテるわよ。カラオケ連れて行ってあげたら? 女の子たち大喜びよー?」

 レンが渋い顔をしている。

「うるさいだまれ。リチャードちょっと来い。ふろの入り方を説明するぞ」

 うまく逃げた。笑。それからふたりで洗面所へ行った。


「うんこをしたらここを押すんだ」

「ええっ!?」

「そしたらお湯が出るから」

「お、お湯―!?」

「あっ、こっちむきで座るんだぞ」

「それはわかる」

「あ、わかるんだ。トイレって万国共通なんだな」

 万国?

「でな、お湯が出てお尻を洗ってくれるんだ」

「ええっ!?」


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