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笑。パパもママもくすくす笑っている。
やがてバタンとふろのドアが閉まった。そしてザーッとシャワーの音がし始めた。
「あれ? 一緒に入ってる?」
ふろの中から、なにやら話声もする。
「なんでー?」
3人で顔を見合わせて、首を傾げた。
牧野林家の夏はシャワーのみである。暑いから。時短節約でもある。
1時間弱でふたりは、ふろから出てきた。ならんでエアコンの冷風を浴びている。
レンと同じTシャツ短パンなのに、リチャードが着るとカッコいい。少々くたびれたTシャツさえも、そういうおしゃれに見えてしまう不思議。
モデルみたい。
たぶん、制服もめっちゃ似合うはず。見てみたい。そのうちお兄の制服を着せてみよう。リンは思う。
それからレンがリチャードの頭を拭いてやる。
「あらあら、ずいぶん至れり尽くせりね」
「だって、自分でふろに入ったことがないっていうんだもんよ」
「あら、そうなの?」
「すみません」
リチャードが消え入りそうな声で言った。
「お城では洗ってくれる人がいるんだって」
「そうなの? さすが王子さまね。もしかして服も着せてもらうのかしら?」
リチャードはこっくりとうなずいた。
マジかー。そうなのかー。
「うちじゃあ、そういう人はいないから、自分でやってもらうわよ」
リチャードはまた、うなずいた。
「だいじょうぶ。ちゃんと教えた。シャンプーもコンディショナーもボディソープも教えたから、もうひとりで入れる。な?」
リチャードは三度うなずいた。今度は力強く!
「ぼでぃそーぷが、冷たくてびっくりしました」
夏の間は、スーパークールだからね。
そしてレンがドライヤーのスイッチを入れて温風をリチャードにかけ始めた。
「わあっ!」
またまたリチャードがびっくりした。
「か、風? 熱い風が!」
「ああ、ドライヤーだよ。こうやって」
レンは風をリチャードの頭に向けた。
「髪を乾かすんだ」
「な、なるほど。でも髪ならぼく乾かせます」
「ん?」
「魔法で」
「まほーで」
「はい」
リチャードは自分の頭に手のひらを向けて、なんか一言言った。たぶん呪文みたいなもの。聞きなれないことばだったから、向こうの世界のことばなんだろう。
ふわっと一瞬風が吹いて、髪が乾いた。一瞬で乾いた。
「お!?」
次にレンに向けて呪文を唱えた。またふわっと一瞬風が吹いてレンの髪も乾いた。
「おお! すげー! しかもサラサラだ!」
レンが頭を振っている。魔法のおかげか、つやつやになった髪はシャンプーのコマーシャルみたいだ。
「戦闘用の大きな魔法は下手なのですが、こういう小さな魔法はできるんです」
「せ、戦闘用? 戦闘があるの?」
「魔物はよく出るので」
へえー、まもの。
ちょっと遠い目になった。まあ、ドラゴンがいるんだから魔物もいるか。
「まあ、それはいいや」
レンがぶった切る。いいのか。冷蔵庫からコーラを出してくる。コップに注いで「はい」とリチャードに渡した。
「風呂上りはコーラだろう」
「こーら」
「こういう飲み物なかったか?」
「飲み物? 黒いけど」
毒ではないよ?
「飲んでみ?」
レンはぐいっとコーラを飲む。
それを見てリチャードも口を付けた。
ひゃっとかぴゃっとか、王子らしからぬ声が出た。
「ぴ、ぴりっとする!」
「スカッとさわやかだろ」
「ふ、不思議な味がする」
戸惑いつつもリチャードはくぴくぴと飲んだ。ときどきペンちゃんがコップに首を突っ込んでぺろりと舐める。
「……うっ」
リチャードが口に手を当てた。げっぷを呑み込んだらしい。さすが王子。げっぷはしない。
リチャードはふろ上がりでも、ミントの香りのさわやか王子さまだった。




