1.意外
「フリッシュ、セイブル!」
私─アレクシス・ベネット・トライヤンは一つの店を見ながら、王子二人の名を呼んだ。
「あそこ、有名な甘味処じゃない?」
「あ、アタシも知ってます。
でも、行ったことないんてすよ〜。」
「テナー、行ったことないのですか?
私はあるよ?」
「え、ペデット、行ったことがあるの?!」
ペデットが行ったことあって、テナーが行ったことない…、少し意外だ。
「早く行くぞ。」
「え?」
誰も行こうと言っていないのに、セイブルはスタスタと甘味処へ向かう。
「あ〜、セイブル、ワクワクしてるね。久しぶりに見たよ。」
「え? ワクワク?」
あの、セイブルが?
いつも通り無愛想な顔してるのに…?
「セイブル、実は甘党なんだよ。」
「え〜!? 意外……。」
って、いつの間にか中に入ろうとしてるし。
「ちょっと待ってよ、セイブル!」
「そういえば昨日、お二人に何を話していたんですか?」
「「!?」」
美味しく甘味を頬張っていた時、テナーがそう言った。
「え、嘘、起きてたの…?」
「一瞬だけ、ですけどね。」
どうやら、ふっと起きた後、睡魔に負けすぐに眠ったらしい。
その時に、私とフリッシュ、ラリネがいないのに気づき、不思議に思ったそうだ。
「め、目が覚めたから、星を見てたんだよ。ねっ」
「う、うん。そうそう、とても綺麗だったよ。」
必死でそう答える私達を、ラリネはニコニコしながら見ている。
な、なんか昨夜もこんな会話をした気がする……。
「星……ってことは外に出ていたんですか?」
ヒルナが少し食い気味で言う。
「え、うん、そうだよ?」
「絶対、寒かったですよね?!
お嬢さんは病み上がりなんですから、安静にしていないと駄目ですよね?」
うわ〜〜、面倒なことになった〜〜。
「すまない、今度はこれをくれないか?」
「かしこまりました。」
ふいにセイブルの声と店員さんの声が耳に入ってくる。
セイブルのところに目をやる……って、嘘!?
セイブルの目の前に皿が山積みになっている。
軽く10皿はあるだろう。
ここ、案外ボリュームあるよ?!
「お待たせしました〜。」
店員さんが注文されたものを持ってくる。
それをセイブルがあっという間に平らげて…
「ちょっといいか? 今度はこれとこれ、あとこれも。」
「かしこまりました。」
さ、さらに追加!?
「す、すごいね…。」
「でしょ?」
いつもの何倍食べてるんだろう…。
「好きなものは別腹、とか言うけど、セイブルの別腹はいくつあるんだろうね〜。」
ほんと、不思議だ…。
それに
「とても、幸せそうですね。」
「だよね〜。なかなか見れないよ、セイブルのあの顔は。」
いつも通り無愛想に見えるけど、端々から幸せが溢れ出ている。
ちょっとかわいいかも。




