9.決意
「……ボク、も、……ボクも、母上が亡くなったとき、怒りを、悲しみをどこに向けたらいいか、わからなかったんだ。
結局ボクは、それらの感情を自分に向けた。
どうして母上を守れなかったんだって、何度も責めた。
気づいたら、刃物を持っていた。
誰もボクを止めに来なかったら、ボクはここにはいなかっただろうね。」
フリッシュは笑顔で言うが、端々から悲しみが滲み出ている。
「目が覚めたら、体中包帯だらけになって、ベッドに寝てた。
背中を集中して刺してたから助かった、って治療師に言われたよ。無意識に、母の刺されたところを傷つけてたんだね。」
まだ幼かったから手は届きづらく、あまり深くなかったみたい、とフリッシュは笑って言う。
全く笑えないよ…。
「目が覚めた後、小さなセイブルに怒られちゃって。しかも、泣きながら。」
「え?」
小さい頃のセイブルも想像しにくいのに、それにプラスして泣いてた…?
ますますイメージできない……。
「『兄上がしぬんじゃないかって、こわかった……。兄上までいなくならないで…!』って。
泣きながらそう言うセイブルを見てたら、なんだか自分が馬鹿らしくなってきちゃって。
それでやっと、自分でも誰かの役に立てるのかなって、消える必要はないのかなって、思えたんだ。」
誰かの、役に…
「あ、ボクは覚えてないけど、自傷しすぎた所為で、床が真っ赤に染まってたらしいよ。
全く落ちないから、床ごと変えたって。」
「その情報はいらない。」
「あはは…、だけどね、全く自分を責めなくなったわけじゃないよ?
たまに夢に見るくらい。あの時と同じ夢を見て、今度こそ守らなきゃって思うのに、体が全く言うことを聞かない…やっぱり、自分を責めてしまうよ。」
「……、忘れたいと…思わない…?」
「う〜ん、そうだな…。」
アレクの質問に、フリッシュは少し悩む。
そして、
「思わない、かな?」
と答える。
「どうして?」
「……、人は死んだら、もうその人は誰かの記憶の中でしか生きられないと思うんだ。
だから、忘れたくない。」
「そっか…。」
誰かの、記憶…。
「それに、ボクを死んでまで守ってくれた母上を忘れるとか、不義理にも程があると思わない?」
「確かに、そうだね。」
いくら辛くても、忘れるのは違う。
「でしょ。
アレクが夢の中でどんなことを言われたかはボクはわからない、けど、これだけは言える。2回目だけどね。」
「?」
「アレクのお陰で本当に助かってる。アレクがいてくれて、本当によかった。
ありがとう。」
「!?」
そして、フリッシュは心からの満面の笑みを私に向ける。
その白い肌が、その白銀の髪が、月明かりに照らされ、キラキラと煌く。
慣れてない人は卒倒してしまうだろう。
「こ、こっちこそ、ありがとう、慰めてくれて。
私も、フリッシュに会えて良かった。」
私もフリッシュに笑みを返す。
「な〜に、イチャイチャしてるんですか? お2人さん。」
「「!?」」
そういって、私達の雰囲気を見事に壊したのは、ラリネだった。
「ラ、ラリネ、起きてたの?!」
「えぇ、お2人の声で。」
「「!?」」
も、もしかして、他の人も…。
「自分は職業柄、耳がいいんです。他の方は起きてませんよ。」
「そ、そっか……。」
私達はホッと息をつく。
「で、何してたんです?」
「え〜っと、星を見てたんだ。ね、アレク。」
「え、えぇ、そうなの。」
私はフリッシュに話を合わせる。
「ふ〜ん。そういう風には見えなかったけど、ま、いっか。
冬は星が一番キレイに見える季節ですしね。」
そう言いながら、ラリネは星に目を向ける。
「知ってます? 星や、それらを繋いだ形には名前がつけてあるんてすよ。」
「あ、ボクも聞いたことあるよ。」
「え? そうなの? 全部同じじゃない?」
「そんなことありませんよ。
例えばですね…」
「お嬢さん、本っ当に大丈夫ですか?」
次の日─。
ヒルナがとてもとても心配そうに訊いてくる。
「大丈夫だって。」
「本当が? まだ顔色が」
「バリト、気の所為だから。」
私達はこれからヤナイ調査として、この町を調べている。
シンカという男を探すためだ。
「しんどくなったら言うんだよ。」
「は〜い。」
私は負けない。
絶対にヤナイの拡大を食い止めてやる!
どうも、皆さんお久しぶりです。
勝手にあとがきを章末にあとがきを書くことにしたあぷりこっとです。
ホントに勝手でごめんなさい……。
毎回内容を考えるのに苦労してましたもので……。
今回の章は、主に麻薬─ヤナイのことについて、でした。
過去について悩み、苦しむ主人公たち…。
描き始めたときには、こんなに彼女たちが苦しむことになるとは……。
ほんと、なにがあるかわかりませんね。(いや、お前が描いてるんだろ!)
9話では、アレクとフリッシュがいい感じの雰囲気に…。
今後、どうなるんでしょうね〜。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また次の章末で、お会いしましょう。
バイバ〜イ!




