5.だれか
ここはどこだろう。
真っ暗で、何も見えない。
「…ク、アレク。」
誰かが私の名を呼ぶ。
どこだろうと、キョロキョロ辺りを見回す。
後ろを見ると、女性が立っていた。
闇の中でも、はっきりと見えた。
あの人は…!
「母さん!!」
私は母の元へ走る。
後少しのところで、母の横にもう一人現れる。
「父さん!!」
「……せいだ。」
父がボソッと言う。
私は思わず、足を止める。
「父さん、今、何て?」
そして、何と言ったのか尋ねる。
「お前の所為だ!!」
「!?」
声を荒らげた父に、私は驚く。
私の…所為…?
「お前の所為で、俺とイオリ…お前の母さんも死んだんだ!!」
「私達は、貴女を守って死んだのよ。」
「え?」
「だから、お前か殺したんだ!!」
「アレクがいなければ…産まなければ、私達は……」
父と母は、私を責めるように睨む。
「お前を、産まなきゃよかった。」
「お前がいなければよかったんだ。」
私は、心臓をグサリと刺されたような、そんな心地がして、力なく膝をつく。
「ごめん…ごめんなさい……。
私、あの頃は何も、出来なくて、何も、わからなくて……。
ごめんなさい……。」
こんなの言い訳だ。
涙を流せば許されるわけない。
そんな言葉がどこかから聞こえてくるような気がした。
でも、涙は溢れる。
「アレク。」
今度は後ろから名を呼ばれる。
「フル…ト? フルトはわかってくれる…?」
「お前は、トライヤンの王族なんだよな。」
「え?」
いつも優しい笑みを向けてくれるフルトが、私を睨む。
「だからお前は、殺されなかったんだな。」
「!? 違う!
私は師匠に救われてここに……。」
「僕の村にもアレクがいれば、違ってたのかもな。」
「そんなことない、私は何の力もない。
父さんも母さんも守れなかった、私には……。」
「お前はそうやって嘘をつく。
王家の血筋だと今まで言わなかったのもそうだろ?」
「違う、違う、違う……!」
もうやめて。
なにも、なにも、聞きたくない……。
「アレク。」
今度は右から、呼ばれる。
「師匠……。」
私はすがる思いで師匠を見上げる。
「私は、生まれてくるべきではなかったんですか…?」
否定してほしい、そう思った。
だが
「……そうだな。」
「!?」
私の期待は裏切られた。
「せっかく助けたのに、任務を完遂できない役立たずだとは、思わなかったよ。
あの時、見捨てておくべきだった。」
そん…な……。
親に恨まれ、幼馴染に誤解され、最も信頼していた人に見捨てられた……もう、嫌だ。
「アレク。」
師匠がもう一度口を開く。
「イヤだ! 聞きたくない!!」
私は耳を両手で塞ぐ。
もう何も、聞きたくない。顔を上げたくもない─。
だれか、私を…




