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白馬の王子と黒馬(こくば)の王子  作者: あぷりこっと
麻薬編 第三章 ~村を蝕むヤナイ~
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5.酒(?)

「にしても、いきなりだったな…。」

 セイブルが頭を拭きながら言う。拭いているのは、私を含め皆同じだ。

 セイブルが言った『きた』というのは、雨のこと。

 さっきザ〜っと振り始めちゃって。

 だから今、近くにあった宿に泊まっている。

 この雨のせいで、空き部屋は一つしかなかったらしい。

 男が多いので少々心配ではあるが、まあ、大丈夫だろう。

 だって

「デカいですね、この部屋……。」

 そう、ペデットの言う通り、この部屋はビックリするほど大きい。

 その分高いから、残っていたそうだ。

 これなら、ある程度男性陣と離れて寝れるだろう。

「ねぇ、セイブル様。

 アタシたちが調べに来たのって、この町…なんですよね…?」

「あぁ、そのはずだが?」

 そう、ここはバルン王国の隣国である(トライヤン王国の反対側に位置する)サルクス王国の近くの沿岸部─カスタルである。

「この町、変ですよ。」

 テナーの一言で、空気がピリピリし始める。

「人々の目が死んでるってこと、ですよね?」

 ラリネが言う。

「うん。」

「あまり、長居しない方が良さそうだな。」

 バリトがそう言う。

 その他の人も、感じていると思う。私もそうだ。

 雨で歩いている人はあまりいなかったから、断言は出来ないけど、賑わっているように見えて、そうでない感じ…?

 笑っているように見えて、目は死んでいるような感じ。

 圧すら感じて、油断したら殺られそうとつい思ってしまう感じ…?

コンコン

「失礼します。

 お食事をお持ちしました。」

 一人の女性が、ノックして部屋のドアを開ける。

 あぁ、もうそんな時間か。

 その女性は、一つ一つ丁寧にテーブルの上に夕飯を置いていく。

「魚料理が多いな。ここで捕れたやつか?」

「はい、左様でございます。

 今朝捕れた新鮮なものを調理しております。」

 うん、めっちゃ美味そう。楽しみだな〜。

「「「「「「「「いただきます。」」」」」」」」

 私達は各々、食事を口に運ぶ。

「あ、美味しい。」

「本当だ、美味しいね。」

「城ほどではないがな。」

「セイブル様、比べるものではありませんよ……。」

「でも本当、とても美味しいです。」

「アレク様の護衛をする前よりはマシですよ。

 あの頃は何が入っているかさえ、わからなかったから。」

「あぁ、あの時は死を覚悟してたな…。」

 ラリネとバリトが、遠い目をする。

「どんな食事だったんですか?」

「当番でやってたから、当たりハズレがあったんだ。

 ハズレの人で、良ければカエルが入っていた。」

「!? 良い方ではカエル……。悪い方だと…?」

「う〜ん。

 食事中に言うべきではないもの、かな?」

 本当にどんな食事を……。

クラッ

 不意に、一瞬視界が歪むのを感じる。頭がフワフワするような気がする。

 お酒…かな…?

 私は手元のコップを見る。

 まだ一口しか飲んでいない。強いお酒ってことかな…?

 皆は……それらしい反応はしていない。

 私だけお酒を間違えて入れられちゃったのかな…?

 とりあえず、もう飲まない方がいいかも。

「そういえばアレクはフルトといつ会ったの?」

「え?」

 私はフリッシュにいきなり話題を振られる。

「え、え〜っと……。

 確か私が8歳の時かな。

 私が師匠に拾われる前から、フルトは師匠の家に住んでたみたい。

 いつも師匠と一緒にいる私を見て、嫉妬したみたいで、最初は全く話してくれなくて…」

 ……ってあれ?

 じゃぁ、私はいつからフルトと話し始めたんだっけ?

【…復習したいと、思わないのか…?】

ズキンッ

「っ…」

 いきなり、頭が割れるような痛みを感じる。

「!? アレク!?」

「お嬢さん、大丈夫ですか!?」

 視界が歪んで、はっきり見えないけど、皆が心配していることはわかる。

【アレク……】

ズキンッ

「っ……」

 女性の声が、頭に響く。

 誰の声……だっけ? 懐かしい声だ。

「アレク様、大丈夫ですか!?」

「おい、アレク!!」

 体に力が入らなくなり、その場に倒れたのがわかる。

「アレク、しっかりしろ、アレク!!」

 セイブル王子の声が聞こえる。

 あれ? おかしいな。

 この部屋は暖炉があってさっきまで暖かかったのに、急に寒くなってきた。体が、冷えてきた。

「ペデット様、テナー様。手伝ってください。」

「はい、わかりました。」

「わかったわ。」

 薄れゆく意識の中、とても心配そうに私を見るセイブル王子が見える。

「セイブル…王子……。」

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