3.出発
同じ家に住んでいたはずなのに、僕はアレクと話したことがなかった。
アレクと出会って半年近く経った頃、アレクと話してみたいと思った。
だから、訊いてみた。
「お前の親を殺したあの国を、憎いと思わないか?」
「う〜ん……。」
アレクは、少し考えた。
数秒の沈黙の後、アレクはふわっと笑った。
「そりゃ、思ったことはあるよ。」
『思った』…?
過去形、なのか…?
どうして、そんな風に笑えるんだ…?
「…復習したいと、思わないのか…?」
「? ふくしゅー? ふくしゅーってな〜に?」
あ、まだわからないか。
「仕返しのことだよ。」
「仕返し…か〜。ごめん、思ったことないや。」
「!? 何でなんだ?」
僕は毎日のように、あの国が憎いと、復讐したいと、思っているのに…。
なんで、そう思えるんだ?
知りたいと思った。
「わたしがふくしゅーしたとして、だれか幸せになるの?」
「え?」
「わたしが トライヤンの人にふくしゅーしても、パパもママもかえってこない。
むしろ、ふくしゅーを くりかえすだけてしょ?
だから、しない。」
アレクはそう、まっすぐそう言った。
「そっか、そっか〜。」
僕は思わず笑った。
なんて、単純な理由なんだ。
……でも、確かにそうだな。
ほんと、年下の女の子に何を言わせてんだよ、僕は。
「フルトは? ふくしゅーしたいって思うの?」
「僕は思ってたんだけど、さっき変わっちゃった。」
「? そうなんだ。」
今ではわかる。
あの時がアレクを家族と認めた瞬間なんだと。
そのアレクが、男を7人も連れていたのを見た時は、正直焦った。
今ではアレクを、──と思っているから…。
「師匠〜、フルト〜。」
次の日、私たちは師匠の家を訪ねた。
「あれ? アレク、どうしたんだ?」
師匠ではなく、フルトが出てくる。
少し気まずそうな顔をフルトはするが、私は気にせず訪問の理由を話す。
「これからこの村を出るから、挨拶に来たんだ。」
「え!? これから!?
師匠、アレクが」
それを言い終える前に、師匠がひょこっとフルトの後ろから顔を出す。
「もう、出るんか?」
「はい。
今回私達が来たのは、この国の国王─ラフォン陛下に頼まれたからなんで。」
「そうか……。気をつけるんだよ。」
「はい!」
私は、満面の笑みを師匠に向ける。
「アレク、終わったら帰ってくるのか?」
「そうだね。
帰りにここら辺を通るから、その時にまた泊まりにくるよ。
ね?」
「あぁ。その予定だ。」
尋ねた私に、セイブルが答えてくれる。
「だから、また近いうちに会えるよ!」
今度はフルトに、満面の笑みを向ける。
「皆さん、アレクを、どうかよろしくお願いします。」
師匠が深々と頭を下げる。フルトも下げる。
それに代表して応えたのは、フリッシュだった。
「はい、必ず。」




