2.忘れられない過去
僕はアレクと別れた後、いつもの道を通って師匠の家に帰っていた。
まさか、泣かれるとは思わなかったな……。
…家族、か。ちょっと複雑だな。
アレクが師匠の家に住み始めたのは、僕が11歳でアレクが8歳のときだった。
あの日は、地獄のような日だった。
僕らの住むバルン王国と隣国のトライヤン王国は、当時戦争をしていた。
一般市民は巻き込まない、そういう条約の元で行われた戦争だったが、それを知らなかった敵国の公爵は、僕らの住む村の人々を、無差別に殺していった。
ボクは師匠の家にある、秘密の部屋に隠れ、師匠が帰ってくるのを待っていた。
その部屋にいても、聞こえてくる人々の悲鳴は、今でもたまに夢に見る。
師匠が帰ってきたときには、村は静まり返っていた。
地には多くの人が倒れ、真っ赤に染まっていた。
家々は荒らされ、焼けた痕があるものもあった。
僕はその残酷な悲劇をこの目で見たわけではなかったけど、恐怖を感じるには十分過ぎた。
師匠の抱く、目を腫らした女の子に気づきながら、僕はあの過去を思い出し、そのまま気を失った。
それは今から12年前。僕が9歳の時─。
僕は今住んでいる村の隣の村に住んでいた。
ある日、僕の住んでいた村のこどもが、親に何も言わずに国境を越えた。そして、盗みを働いた。
それが気づかれない、あるいは盗んだものが一般人だったら、あの貴族のものではなかったら、あんな悲惨な事件は怒らなかっただろう。
でも、起こってしまった。
その子供の盗みはバレてしまった。しかも盗んだのが…、その町を直轄領としているヴィラフォ公爵の私物だったのだ。
怒り狂ったヴィラフォは、僕の村にやって来た。軍を連れて─。
「私はこの村の村長をしている者です。
ヴィラフォ様、どうなされたのですか?」
「お前たちの不祥事を、償ってもらいに来たのだ。……その生命をもってな!」
ズバッ
この事件は、尊重の首が飛んで始まった。
兵たちは村人たちを斬り、家々に火をつけた。
逃げる者、足がすくんで動けなくなる者、悲鳴を上げる者、許しを請う者─。
僕以外の村人は、全滅した。
僕は師匠に助けられ、今こうして生きている。忘れられない、あの日と
「君の大切な人を、この村を助けられなくて、すまなかった。」
師匠の言葉とその表情を胸に─。




