1.血の繋がらない家族
わ〜、寒っ。
私─アレクシス・ベネット・トライヤンはそう思いながら、ベランダに出る。
今日の昼頃にこの村を出るから、少しでも見ておこうと思ったんだけど……。
まさか、ここまで寒いとは……。
私は身体を震わせる。
昨日の雪が積もって、あたり一面真っ白。朝だから、特に寒く感じる。
部屋に戻ろうかな……。
そう思った時
「アレク、おはよ。」
頭上から声が降ってきたかと思うと、目の前に
スタッ
と小さな音を立てて、幼馴染のフルトがおそらく屋根から下りてくる。
「おはよう、フルト。
……どうしたの?」
いつになく真剣な顔をしているフルトに、私は尋ねる。
「その…、フリッシュ様から…、訊いたことを確かめたくて……。」
フリッシュ『様』?
ってことはフリッシュ、フルトに身分のことを話したのかな?
「その、今まで……」
「!?」
私は私に深々と礼をしたフルトを見て、驚き戸惑う。
「たくさんのご無礼を働き、すみませんでした。
知らなかったとはいえ、許されることではありません。
ですから…」
……、何…それ……。
「…つまり、フルトは私が王家の血筋─母がトライヤン王国国王の叔母であることを聞いたってこと?」
「そうです。」
だからって、こんなに態度を変える必要はないじゃない…。
「わたしは…私は、アレクシス・ベネット!
確かに私の血には、トライヤン王国の王家の血が流れている。
だけど、この村で生まれ育ち、師匠ウベルに拾われ、貴方と家族のように…いや、家族として一緒に育ったことは揺るぎない真実でしょ?!
だから、だか、ら……」
声が震える。
目から、雫が溢れる。
「そんなふうに、距離を置こうとしないで……、今まで通りに、接し、て……」
だから、知られたくなかったんだ。王家の者だって。
今までの関係が壊れてほしくなかったから……。
「ごめん、ごめん、アレク。
これからもずっと、いつも通りに接するから、泣かないで。」
フルトの口調が、いつも通りのものに戻る。
安心すると同時に、また涙が流れてくる。
これ以上はフルトを困らせてしまう。
どうにかして泣き止まないと…
「!?」
そう思っていた時、フルトが私をそっと抱きしめてくれた。
私は最初驚いたが、次第に体をフルトに預けるようにする。
暖かい……。
その温もりで私は再び安心し、気づけば寝落ちてしまっていた─。




