3.独りになったスパイ
これはなんの音だろう……?
馬の蹄と音と……、ガチャガチャという金属のあたり合う音が、重々しく、いくつもしている。
「おかあさん、おとうさん、なんの音だろ?」
当時8歳だった私は、窓に駆け寄りながら言った。
「軍隊か?」
「え? でも、お父…トライヤン王国の王は民に危害を加えないって約束してるってきいたわよ? それはないんじゃないかしら。」
父と母も近くにやってくる。すると
「アレク!!」
父が私を抱き、後ろへバックし、そのまま尻餅をつく。
それと同時に、窓のガラスが割れ、矢が入ってきて、そのまま床に突き刺さる。
「アレク、アルフェ、大丈夫?!」
母が私と父に言う。
「あぁ、危なかったけどな。」
そう言いながら、父は私を抱き、母に渡す。
「イオリ、アレクを頼む。守ってやってくれ。」
父は険しい顔でそう言う。
「え? でも……」
「俺は大丈夫だ!!」
戸惑う母に、父はそう叫ぶ。
「わかっ、た。死なないでね。」
「もちろん。」
そういう会話をしながらも、父と母は悲しそうだった。まるで…
「アレク。」
父が私の名前を呼びながら、目線を合わせるためにしゃがむ。
「アレク。元気でな。」
「? アレクは元気だよ?」
父は私の返答を聞いて、クスリと笑いながら、頭を撫でてくれる。
─これが私の記憶に残る、最期の父の姿だった。
父が撫で終わると、母は私を抱いて、一番奥の隅に隠れる。
その時母は、私の耳を塞いでいた。
だから、当時の私は、なぜ母が泣いているのか、わからなかった。
「おかあさん?」
ドン
この音は、耳を塞がれていた私にも聞こえた。
誰かがドアを蹴破ったのだろう。
「あなたたちは誰?! トライヤン王国の軍?」
母が謎の人物に話しかけ、母の意識はそちらに向いたため、塞がれていた耳に当てられている手が緩む。
「そうだな……。間違いではないが、少し違う。
私共は、ヴィラフォ様の配下なので。」
誰だろう? 男の人の声……?
「ヴィラフォ…って、まさかヴィラフォ公爵!?
でもあの人は、犯した罪によって今回の戦には参加しなかったはずよ。
それに、今回の戦はトライヤンとバルンの間で、民には危害を加えないという契約がある。なんでこんなことをするの?!」
「だから何だ?
私共は、ヴィラフォ様に忠誠を誓った身。ヴィラフォ様が命令されれば、私共はそれに従うだけ。
それ以上に何が必要なんだ?」
「!? あなたたち、言われたままにしか行動できない何で、恥ずか……。」
そこまで言うと、母は力なく、私の方に寄りかかってくる。
「ごめん…ね……。アレク……」
「!?おかあさん…、おかあさん!! ねぇ、どうしたの?!」
何度呼んでも、母は目を閉じたままで、少しずつ弱く、浅く呼吸がなっていく……。
「全く。女は口答えせず、大人しく死ねばいいのに。
そう思わないか?」
知らない男が、独りになった私に話しかけてくる。
そして、血の付着した剣を私に向けてくる。
─だが、その手はすぐに下がった。
ドサッ
そして、その男は床に倒れる。
「大丈夫かい? お嬢ちゃん?」
誰だろう…? この人は……、悪い人……? それとも……
「もう、大丈夫だよ。」
混乱し、恐怖を感じ、震えている私に、その人は優しく笑いかける。
今倒れた男の冷たい笑みと比べものにならないくらい優しく─。
いつの間にか、私の目からは、ボロボロと涙が流れていた。
私を助けてくれた人は、私を抱きしめてくれる。
あぁ、なんて、なんて暖かいのだろう……。
そのまま私は、その人の胸の中で、声を上げて泣いた─。
「─…レク、アレク?」
私はハッと我に返る。
過去について語っている場合ではなかった!!
「大丈夫? 走りながらぼ~っとしてたけど……。」
フリッシュ王子が心配そうに私の顔を覗き込む。
「ん? アレク、体調が悪いのか? やっぱり避難場所で休んどくか?」
セイブル王子も心配そうに言う。
「いえ、大丈夫です。」
私はもう、独りじゃないから─。
どうも、こんにちは。
今回、どこまでネタバレするか、8歳のアレクのセリフにどこまで漢字を入れるか、実はかなり悩んだあぷりこっとです。
さて、今回のストーリーでアレクの両親が出てきました! 今までのいくつかの伏線の回収もできた回だったのでは、ないでしょうか? この事件の終わりが近いって、感じがしてきますね!
そして、さりげなくアレクの母が何かポロリと言ってましたね。どういう意味かは…、今後を楽しみにしていただければ、幸いです。
え~、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また次回お会いしましょう。
バイバ~イ!




