爆弾投下
翌日、リュートはキノコ採りに向かっていた。
目的のキノコは王国の北部にあるエルフの小国だった場所、つまりニーネの実家でもあるシルファード家の治める土地にある。
そのため、案内を頼んだニーネとエルフの暮らしを見てみたいと言っていたレイが同行している。
さっきから口数が少ないニーネのことが少し気になるが、途中まで旅路は順調だった。
(そういえばニーネは昨日突然叫び声を上げていたって執事のベイルが言っていたっけ。)
そんなことを一瞬思い出したが大して気を止めていなかった。どうせ虫でも出たんだろうと思っていた。
しかし、残り2時間ほどで目的地に着くというタイミングで馬車の中で爆弾が投下される。
「あ、あのリュート!」
ニーネが意を決したように口を開く。
「なんだ?」
「こ、この本どうしたの?」
ニーネは一冊の本を取り出す。『エルフ大全集』だ。
この本のことは黙っておこうと思っていたニーネだったが、気になってこの本のことを調べてみると今では入手困難なはずの本だと分かった。
その上ちょっと本のことを調べるために借りていただけのつもりが間違って外出用のマジックバックに入れて持ってきてしまったという偶然も重なってしまい、この本について聞かずにはいられなかったのだ。
「ああ、それな。キノコの爺さんに貸してもらったんだ。」
リュートは本を開いていないのでどういう内容の本かまだ知らない。
「へえ、『エルフ大全集』か、面白そうね。ちょっと見せて。」
そう言ってレイがニーネの手からその本をとると、開いた。開いてしまった。
「最低!」
レイの顔が赤くなり、リュートを睨む。
「え、なんで睨まれてるんだ?レイも興味ありそうな本じゃないか?」
「え、もしかしてリュートは私のことそういう風に思っていたの?」
「そりゃそうだろ、だから今日ついてきてるんじゃないのか?」
「そんなわけないじゃない!」
2人は会話が噛み合っていないことに気づかない。
一方ニーネは、
(この本をどうやって手に入れたかは解決したわね。それにしてもリュートがそういうことにこんなに大胆だったなんて…あっ!奴隷なのに手を出されてない私はもしかして魅力が足りてないのかしら。服装をこの本みたいにセクシーにすればもしかしたら…)
という感じでこちらも勘違いしていた。
「って何私バカなこと考えてるのよ!セクシーなメイド服なんて着ないわよ!」
途中から思っていることを口に出してしまったニーネのせいで状況は悪化する。
「あんたもしかしてニーネちゃんにもこんな格好をさせようとしてるの?」
その言葉でようやくリュートが状況に気づいたときには、お腹に強烈なボディーブローを喰らっていた。
10分ほどボディーブローを受け続けた後、やっと話す余裕が生まれたリュートが釈明し、ニーネも状況を説明したことで事態は収束に向かう。
「ごめんねリュート、やりすぎたわ。」
「俺の方こそ軽率だった。今回の件はキノコジジイと俺のせいだよ。」
キノコジジイを許す気はないらしい。
「いや、さすがに今回は私が悪いし、キノコ採りを全力でサポートするわ。他にも何かあれば言って。」
「わかった、ありがとう。」
リュートはレイの助けを借りることにした。
一方、ニーネはほっとため息をついていた。
(私に魅力がないってわけじゃないのね。ふふん、当然よね…って何喜んでるのよ私!)
表情がコロコロ変わるニーネを見て、レイとリュートは思わず笑う。
「な、何笑ってんのよあんた達!」
リュート達に気づき焦って怒り出すニーネであった。




