屋敷への帰還
セイラを家まで送り届け、約1週間ぶりにアイカと一緒に屋敷に戻ると、メリルが出迎えてくれた。
「お帰りなさい。本当は私もリュートさんのご両親にご挨拶に行きたかったんですが…」
さすがに他国の王女様を村に連れていくわけにはいかなかった。
「3大大会の時に来るらしいぞ。そういえば俺もメリルのご両親にまだ会っていないな。」
「そうなんですね、今から緊張してきました。リュート様が私の両親に会うのは急がなくても良いと言われておりますので、次ソリリスに用事があるタイミングでいいかと思います。」
「そうか、ソリリスの王様ってどんな方なんだ?」
リュートは、白いひげを長く伸ばした強い眼力を持つランザーク国王を思い出しながら尋ねる。
「ランザーク国王のようなカリスマ性はありませんが、優しい方ですよ。」
ランザーク国王に謁見したときの緊張感を思い出していたため、少し安心するリュートだった。
「リュート。」
横で黙って聞いていたアイカが声をかけてくる。
リュートは、アイカが何を言おうとしているのかを察して、メリルに向かって再び口を開いた。
「報告がある。アイカと婚約した。」
「わあ、おめでとうございます。」
途端にメリルの顔は明るくなる。
「気にしないのか?」
リュートが尋ねる。言ってからアイカのいないところで聞くべきだったなと少し後悔する。
「正直に言いますと、私とは婚約しているのにアイカさんと婚約していない状況が少し嫌でした。2人は明らかに私より前から相思相愛でしたので。」
「確かにそうだな、メリルとの婚約は国が決めたからな。」
「それにリュート様は5人くらい娶ってもおかしくないと思っております。」
「私は最近もしかしたら10人くらい娶るかもと思い始めたところ。」
「たしかに…」
そう言って2人は笑う。
この世界の結婚観は、
『優れた男はたくさんの女を養う義務がある。ただし身の丈以上に多くの女を囲ってはならない。』
というものである。これ故に、貴族のみが重婚を認められており、爵位や冒険者ランクなどに応じて、結婚できる人数には暗黙の了解がある。
そのため複数人の妻を持つ男の妻となるのは名誉なことだと言われている。
とはいえ、
「でも、10人もいると少し寂しいです。2人きりになる時間も欲しいですので。」
メリルはボソッと呟いた。
「そんな娶るつもりはないぞ。」
リュートがそう言うと、
「どうかしらね。すぐにもう1人増えそうだし。」
屋敷の奥から声が聞こえた。リュートが屋敷にいない間、メリルの護衛も兼ねて屋敷に滞在してくれていたレイだ。
レイと普段一緒に住んでおり、レイがしばらく家を出るという報告にショックを受けたユキヒロは、この件でさらにリュートへの恨みを募らせたという。
レイはニーネと2人で出てきた。
2人は長旅で疲れて帰ってくるであろうリュートとアイカのために夕食を作っていた。
「え、ちょっとあんたまだ恋人がいたの!?」
“もう1人”が自分を指していることをこの場で唯一気づいていないニーネであった。




