特別科のための楽園
「驚くことが多すぎて理解が追いつかないわ。」
目の前に現れたミスリルのエレベーターに驚きの表情を見せながらレイはみんなの気持ちを口にする。
「まあ、1つずつ説明していくから安心しな。
まず、さっきの動く壁だが、100階層で登録した人間の体を認識して開くようになっている。特別科の者には全員登録してもらう。」
「私たちも壁動かせるようになるんだね。」
アイカは少し嬉しそうだ。
「次はこのミスリルのエレベーターについてだ。魔王軍の幹部の1人が溜め込んでいたミスリルの武器や防具を持ち帰った初代校長は、そのミスリルをほぼ全部このエレベーターを作るのに使ったらしいぞ。
売れば1000億ダーツほどになるというのに...」
「せ、せせ千億?」
アイカは目を丸くする。
「うちのおじいちゃんって相当大胆な人だったのね...」
レイは会ったことのない祖父に少し呆れていた。ユキヒロとレイの家系は勇者の家系であり、初代校長はレイの祖父、18代校長はレイの父である。
「そうだな、次に召喚された勇者である18代校長は初代校長が残した国からの莫大な借金を返すのに苦労したらしいからな。3500億ダーツは返済したらしい。」
「お父さん...大変だったのね...」
「そうだな、召喚された瞬間に5000億ダーツの借金なんて可哀想だよな。」
「え?残りの1500億ダーツは?」
「聞いてなかったのか?ユキヒロに引き継がれてるらしいぞ。最低300億ダーツは返さなきゃ次召喚された勇者は奴隷にされるらしい。」
「あのバカ兄!そんな状況でよく札束風呂なんて作れたわね...」
「札束風呂?まあ、話を戻そう。学園ダンジョンは初代校長がダンジョンコアを手に入れて作ったダンジョンで、攻略可能なのは99階層までだ。
100階層は特別科のために作られた階層で...これについては見てもらったが早いだろうから、エレベーターに乗ろうか。」
ライリがそう言ってエレベーターの扉に手をかざすと扉が開いた。40人くらいは乗れる広さがある。
100階層まで結構な距離があるだろうに、あっという間に到着した。
エレベーターから降りると、小さめの部屋に出た。タッチパネルと機械が置いてある。
ライリはタッチパネルを慣れた手つきで操作し、リュート達に機械に手をかざすように言った。
「これで登録は完了だ。これで次から自分たちだけでここにこれるぞ。」
次に小部屋の外に案内される。
「わあ!植物園みたい!」
「すごい!綺麗ですわね!」
「まあ…王城にもこんな素敵な場所はないです。」
レイ、聖女のセイラ、メリルが感嘆の声を上げる。リュートとアイカも目を丸くしている。
外は屋外になっていて、多様な植物が生い茂っていた。奥に行くと王都中の景色が見渡せる。なんと端の方にはプールも付いていた。
置かれているテーブルを囲んで数人の生徒が談笑しており、ゴーレムが生徒達に飲み物や軽食を運んでいる。
『週に1回特別科のホームルームがここで行われる。』『雨が降ると結界が発動して外は見えなくなるけど、また違った雰囲気が楽しめる。』などの説明を受けた後、リュート達は端の方のテーブルを囲んで座らせられた。
しばらくすると見覚えのあるエルフの美女がリュート達の方にやってきた。
「ライリ、ここまでの案内ありがとう。特別科は全学年私が担任だ。」
「校長先生自らですか?」
リュートは驚いて尋ねる。
「そうだ、とは言っても、週に1回のホームルーム以外特別科は自由だ。他のどの学科の授業を受けてもいいし、一日中談笑していても、学校に来なくてもいい。
リュートは国王陛下から貴族科でマナーを学ぶようにと言われてるらしいが、安心しろ、学校として強制することはない。まあ責任も取らないがな。」
「すごい、特別科というには厳しいのだと思ってました。」
アイカがそう漏らすと、校長は釘をさす。
「特別科は自由だが、居続けるのは大変だぞ。条件は『1年間のうちに学外で十分な活躍をすること』。十分でないと判断されると容赦なく落とされるからな。」
「学外での活躍…」
不安そうに呟いたのはメリルだ。
冒険者として活躍するリュート達や強力な治癒魔法で病気や怪我を直せるセイラとは違ってメリルはまだ学外で自分の能力をどう生かすべきかがわかっていない。
「まあ、ここにいるのはふさわしい能力を持った者だけだから、これから自分がどうやったら活躍していけるか考えていくといいさ。それじゃ、私は失礼するよ。」
校長は最後にそう言って去って行った。




