学園ダンジョン
「それじゃ昨日はあのエルフの子と2人で屋敷に泊まったってこと?まさか変なことしてないでしょうね?」
学園に行く馬車の中、レイはリュートを問い詰める。馬車にいるのは同じ特別科のメリル、アイカを含めた4人。
「よせよ、俺は無理矢理そんなことをしたりしないし、お酒だって15歳までは飲めないからそんなこと起こり得ないよ。」
昨日スライムを使って少し”お仕置き”をしようかという考えが一瞬頭を過ぎったのは内緒の話である。
それはともかく、無理矢理じゃなければやるとも取れるリュートのこの発言に、焦りをみせたアイカとメリルが同時に反応する。
「私も明日からお屋敷に住んじゃダメ?」
「わ、私も婚約者なので一緒に住んではダメですか?お父様の許可は貰っています。」
アイカはそのうち屋敷に住む予定だったし、メリルは将来的に一緒に住むのはほぼ確定なので、勿論リュートは受け入れた。
メリル王女もう許可を得てるって一緒に住む気満々じゃんかというツッコミは心の中にしまっておく。
「ま、2人がいるなら安心ね。もうすぐ集合場所に着きそうよ。」
リュート達は馬車から降りると集合場所の洞窟の入り口へ向かう。
洞窟の奥は頂角が小さい円錐のような不自然な形の山になっていた。認識阻害の魔法がかけられているのか、特に上の方は近づかないと見えないようになっているため、以前遠くから見たときは気づかなかった。
学園ダンジョン、全99階層に及ぶといわれており、学園の名物でもあるダンジョンである。魔法科と貴族科の生徒は卒業までに60階層到達を義務付けられている。
学園には13歳から19歳までが通い、全部で6学年あるため、普通は1学年で10階層上に上がることを目指す。
「まさか初日からダンジョン攻略をするの?」
アイカが不安そうに言う。
「安心しろ、攻略するのは一階層だけだ。」
そう言いながらビキニアーマーに身を包んだ少女、リュートの姉ライリが洞窟の中から出てきた。
16歳になり身長も165cmほどに伸びたが、相変わらず担いでいる2メートルほどの大剣は体に不釣り合いである。
「あれ、1人足りないな。まあ、まだ集合時間じゃないからいいんだけど…お!きたか?」
銀に装飾されたゴーレムに引かれた馬車がこちらにやってきた。中から騎士科の生徒であろう護衛2人とともに金髪碧眼の女の子が降りてくる。
「騎士科のやつらはお引き取り願おうか。」
ライリがそう言うが、2人はなかなか帰ろうとしない。
ピリついた空気になったところで、金髪碧眼の女の子が口を開いた。
「お二人の護衛としての責務を果たそうとする気概は素晴らしいですが、学園のルールには従うべきですよ。騎士科の授業も始まるでしょ?どうかご自分のことを優先してください。」
「しかし、聖女様…」
「特別科にも頼もしい仲間がいます。私のことはどうかご心配なさらずに。」
護衛の2人はしぶしぶ帰って行った。1人は帰り際にリュートを睨んで、「聖女様に何かあったら許さないからな。」とボソッと呟いていた。
2人が去った後、聖女が口を開く。
「リュート様。さっき何か失礼なことを言われたでしょ?ごめんなさいね。あの2人は過保護だけど悪い子じゃないんですよ。私、セイラと申します。セリオニア教会で聖女と呼ばれておりますが、セイラとお呼びください。」
リュート達も自己紹介し終えたところで、早速ダンジョンに入る。ダンジョンの構造は渦巻き状になっており、中央に上へと上がる階段がある。
1階層は1本道である上に、普通のゴブリンとスライムしかいないのでサクサク攻略できた。リュートはスライムをテイムしながら進む。
15分くらいで上へと上がる階段にたどり着いたが、ライリはその横にある小部屋に入り、北側の壁に手をついた。
壁が赤く光り、数秒して緑へと変わる。ゴゴゴという音を立てて、壁の一部が上に上がる。その奥にあったのは同じような小部屋だった。
中に入り、今度は西側に手をつくと、さっき上がった壁が下がった後、西側の壁が上がっていき、目の前にミスリルで作られた大きな魔導エレベーターが現れた。
「特別科だけが使える100階層直通エレベーターだ。」




