受験生狩り
「ひ、ひいいい!バケモノ!」
階段から悲鳴が響く。
リュートはスライムに、「巨大化して階段を塞ぎながら降りていき、登ってこようとする受験生から球を奪え」と命令していた。そのため、登ってくる受験生達は次々にスライムに蹂躙されていく。
「そういえば2年くらい前に王都で、『Cランク冒険者を簡単に倒せるほどの超巨大スライムをテイムしている【テイマー】がいる。』っておかしな噂が流れたことがあったな。どうせデマだと思ってたんだが、あれ本当だったんじゃな。」
異様な光景を見てしばらく唖然としていたドワーフの試験官がそう言った。外の階段の様子は魔導カメラに映っていて屋上からモニターで確認できる。
「しかし、これじゃあ3人残らねえんじゃねえか?残り2人分再試験しなきゃいけないとなると仕事が増えちまう。」
「それは困りますね…」
リュートがそう答えたときだった。
「…よいしょ」
という小さな声が聞こえたかと思うと、頭上から小さな女の子が降ってきた。
「ん」
真っ白な髪と真っ赤な目を持つ美しいその女の子は、球を試験官に手渡す。
「「!!!!」」
リュートと試験官は驚いた顔をする。
「お前さん、どこから登ってきた?」
試験官が尋ねると、
「壁」
その子は表情を変えることなくそう答える。
「そう簡単に登れるような壁じゃないはずだが?まさか、空でも飛んだのか?」
実際、騎士校舎の高さは20メートルほどもあり、足を引っ掛ける場所もほとんどないので、空でも飛ばない限り校舎の壁を登って屋上にくることはほぼ不可能だ。
しかし女の子はその質問に対し、首を横に振る。
そして手を前にかざすと指から糸を出した。勢いよく飛び出た糸は20メートルほど先にある柵にくるくると巻きついた。
「「おおお!」」
おそらくこの場にレイかユキヒロがいたならば「スパ○ダーマン?」と言ったであろう光景にリュートと試験官は驚きの声を上げる。
「糸で登ってきたのか!すげーな!俺はリュートよろしくな。」
リュートが自己紹介する。握手しようと手を出すと、
「ん、階段は強いスライムがいて、歯が立たなかったから…私、スーナ」
と言って手を握りかえして来た。
「階段にいる受験生はいなくなったが、グラウンドにはまだ球を持った受験生が残っているみたいだぞ!どうするんだ?」
モニターで受験生達の様子を確認していたドワーフの試験官は楽しそうな顔で聞いてくる。
リュートはニヤリと笑って
「そのようですね。狩りの時間です。」
と答えた。
その瞬間、1体に纏まっていたスライムが、5000体ほどにばらけた。
以前森や平原で魔物を狩っていたときのように複数体でグループを作ってグラウンド中に広がっていく。
以前と違うのはスライムの数が増えたこと、そして狩る対象が魔物ではなく受験生であるということだ。もちろん目的は討伐ではなく球を奪うことなのであまりダメージは与えないようにさせている。
あちこちで受験生の悲鳴が聞こえる。紐のように変形したスライムに絡みつかれたり、【パラライズ】で動きを封じられたり、【スリープ】で眠らされたりして受験生はどんどん捕まっていく。
球を持っている受験生が減るとより多くのスライムが1人に集中するので、実力ある者もどんどん捕らえられていった。
そんなスライム地獄を切り抜けて階段を駆け上がってきた犬耳の少女がいた。
「はあはあ、やったよ。師匠...」
少女は試験官に球を手渡すとそう言ってそのままバタッと倒れた。
驚くことに、その少女が手に持っていたのは鍬であった。




