鍛えし者
「ごめんね、ダインは昔【テイマー】の幼馴染が冒険者になって死んじゃったこともあっていつもこんな感じなの。
ただ、私も何人か見てきたから言うけど、【テイマー】が冒険者になってもろくなことないわよ...」
さっき男を制止しようとしていた魔術師の女はそう言うと、悲しそうな顔になった。
働き口の少ない不遇職の【テイマー】は冒険者になることもあるのだが、困窮して難しいクエストに手を出して死ぬということも多いらしい。
「確かにそういう話は聞いたことある、しかし」
ライリはそういうとリュートの肩に手をやる。
「うちのリュートはただの【テイマー】じゃないんだぜ!よかったら少し手合わせしてみないか?」
「おい!ねーちゃん!勝手なこと言うなよ!」
「いいだろう。だが、もし実力が足りないことがわかったら、できれば冒険者は諦めてほしい。それとなるべく怪我させないようにするつもりだが、従魔の無事は保証できないぞ。」
ダインはリュートの肩に乗っているスライムを見ながら言った。
最近は、【スライム軽量化】というスキルを覚えたため、【スライム合体】で1匹に合体させ、【スライム拡大縮小】で小さくして頭や肩に乗っけていることが多い。
これまでだと、小さくしても質量は保存されるため重すぎて持ち上げることすら難しかった。
「いや、まだ手合わせするって言ってな…」
「よっしゃ、乗った!」
リュートが言い切る前にライリが答える。
「おい、ねーちゃん勝手にいうなよ」
「いいだろ?私にもリュートの実力見せてくれよ」
結局、この調子で強引に説得されたため、リュート達は登録を終えてギルドの裏にある訓練場へと向かった。
訓練場は冒険者の昇給試験なども行われる場所であり、平時は冒険者なら誰でも利用可能になっている。
さっきの騒ぎを聞きつけた冒険者達が「勇者パーティーのライリの弟の【テイマー】と、Cランク冒険者のダインが戦う。」という話を広めたため、訓練場には多くの人が集まっていた。
「いくらあの勇者パーティーの一員の弟だとしても、【テイマー】だろ。さすがにワンパンじゃねえか。」
「そうだな、ダインってCランクの中でも優秀だっていうしな。職業も【剣豪】の上位職の【斧戦士】だろ?」
野次馬がそんなことを話してるのが耳に入った。
(なるほど、Cランクなのか。なら手加減は無用だな。)
そう思ってダインを【鑑定】してみる。
名前 ダイン
年齢 32
性別 男
役職 【斧戦士】
レベル 42
HP 900/900
MP 800/800
筋力 810
魔力 200
防御力 450
素早さ 450
スキル
【身体強化 Lv5】・・・一時的に身体能力を大幅に強くする。
パッシブスキル
【斧術 Lv4】・・・斧の扱いが上手くなる
【剣術 Lv2】
【状態異常耐性 Lv2】・・・状態異常にかかりにくい
【健康 Lv2】・・・病気にかかりにくい
称号
【鍛えし者】・・・10年以上ほぼ毎日筋トレを行い、高タンパクの食事を続けてきた証
(そう言えば父さんも同じ称号持ってたな。それはともかく、【状態異常耐性 Lv2】は厄介だな。)
リュートはスライムを体長5メートルくらいに巨大化させ、200匹分は分裂させて【スライム武器化】で剣を作った。
周りから驚きの声が上がる。
「なるほど、確かに普通の【テイマー】とは違うようだな。こりゃ楽しみだ。」
ダインは当初の目的を忘れて楽しそうに言う。優しいところはあるが、結構戦闘狂だ。
「それでは、はじめ!」
審判役のライリがそう言うと、ダインが巨大スライムに向かって斧を振り上げる。重そうな一撃が放たれたが、あれから増えて今や2500匹ほどになっているスライムに対してはあまり効かない。
ダインは一瞬驚いた顔を見せるがすぐに2撃目を放とうとするが、スライムは一瞬の隙をついて【スライム体当たり】を行う。
大柄で体重が重い上に【身体強化 Lv5】がかかっているダインはあまり飛ばされずに踏ん張った。しかし、衝撃で動けずにいるダインにスライムが巻きついた。
リュートの頭に、【スライム繊維溶解】を使ってダインの服と防具の皮の部分を溶かすというアイデアが一瞬浮かんだが、慌ててかき消す。
おっさんの裸なんて見たくない。
なので剣でそのまま斬りかかろうとすると、ダインは、スライムに巻きつかれながらも斧で迎撃してきた。
リュートは剣でそれを受け止める。
重い斧に剣が破壊されるかと思ったが、剣は受け止めた部分が厚くなるように変形し、衝撃を受け止めた。
リュートはそのまま懐に潜り込んだ、スライムに巻きつかれた状態で巨大な斧では迎撃は間に合わない。
リュートが首元に剣を突きつけると、
「参った。俺の負けだ。」
とダインが言い、勝負が決した。
驚きの声と歓声が上がる。新人のそれも【テイマー】がCランク冒険者をあっさり倒してしまったのだから、無理もない。
こうして王都で、『Cランク冒険者を簡単に倒せるほどの超巨大スライムをテイムしている【テイマー】がいる。』という噂がしばらく出回ることとなった。




