73話 俺、心理も読まれていたようです。
「戦闘中にも言いましたが、夜様は視覚に頼りすぎです」
「う……」
心当たりがある。
絶対にミーシャさんを見失うまいと視線を齧り付け、その結果それを利用され、魔法で幻を作り出されてしまった。
「夜様は目が良いです。単純な視力もそうですが、何よりも反射神経や相手の動きを見る目が。そういう観察眼の鋭さは、私よりもよほどあると思いますよ」
「流石にそれは──」
「いえいえ、私は冗談は言っても嘘はほとんど言いませんから♪ ともかく、夜様の一つ一つのスキルは非常に高いレベルの物をお持ちです。ただ、そのスキルをうまく使いこなせていないように見えます」
「…………それは、具体的にどのような?」
長い歴史を持つ天霧の技を使っている為、技に大きな欠損は無いだろう。
事実、ミーシャさんもそう言っている。
そんなミーシャさんは、技の使い方が上手くないと言っていた。
少し考えたがよく分からなかった俺は、すぐに聞き返す。
「【災禍の竜】事件の時、夜様から【感覚拡張】という気配察知の感度を上げる技があり、戦闘前にこれを使って不意打ちを避ける……と言っていましたよね?」
「はい、今回も最初に使っていました……まあ最初から【空気砲】で吹き飛ばされるとは思いませんでしたが」
「あれは大人気なかったかもしれませんね……まあ反省など一ミリもしていませんが♪」
「鬼ですね」
「何をおっしゃいますか、夜様も下手に遠慮されるより良いでしょう?」
その通りだ。
「と、話が脱線しましたね。使い方が上手くないと言いましたが、用は技がそのままで率直なのです。正統派、率直と言えば聞こえは良いですが、悪く言えば単純で、型以外の動きが出来ていない」
確かにそうだ。
俺は技をより鋭く、強くするように鍛錬はしてきたが、その技を改造した事は無かった。
だが──
「改造して……良いんでしょうか? 俺の使う技は長年の歴史を経て今の形になりました。その長い年月の中で、最適な形になったんだと思います。そんな技を──」
「ええ、どんな技でも、自分に合うように変えて大丈夫です」
ミーシャさんは言い切った。
「『長い年月を経た技を自分の好みに変える』。これにはなかなか勇気がいると思います。ですが基礎の体さばき、技の形を覚えている夜様なら問題ありません。それを後世に伝える事も、また基礎に戻って、無限に新たな形を生み出す事もできるのですから♪」
「……!」
『技を変える』のではなく、『自分好みに技を派生させる』のか。
(新たに技の型を覚えるより、遥かに早く技の種類に厚みをもたせる事が出来そうだな……)
「また話が脱線してしまいました……ともかく、夜様は目で追う時は目だけ、気配を察知する時は気配察知だけと、極端なのです。それが有効に働くのは本当に限られた瞬間だけです。基本的にはあらゆる観点、感覚から情報を得た方が、より多くの情報を得る事ができますよ♪」
「なるほど……本当に、色々ありがとうございます!」
今回の模擬戦、本当に色々な事を学ぶ事ができた。
……それは良いのだが──
「……ところでミーシャさん」
「なんでしょうか?」
「何故に膝枕?」
そう。どうやら俺は爆発で数分気を失っていたらしく、目覚めた時からずっとミーシャさんは俺に膝枕をし続けている。
突っ込むタイミングを失い、かれこれ数分このままだ。
……正直柔らかくて気持ち良かったが、これを口に出す訳にもいかない。
「年増ババアの膝枕は嫌でしたか? これでもそれなりに若く見えるつもりなのですが……」
それなりどころではなく、ミーシャさんは恐ろしく見た目が若い。
10代と言われても信じるレベルだ。
「別にそんな事は。むしろありがとうございます」
「ふふふ、どういたしまして♪」
その後俺から頼み込み、何回か模擬戦をしてお互いの部屋に戻った。
技の派生って夢ありますよね





